江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

豊海橋

2012-08-11 | まち歩き

日本橋の下を流れる日本橋川が隅田川に注ぐところに架けられているのが今回御紹介する豊海橋です。最初の橋が架けられたのは江戸中期の元禄十一年(1698年)。この辺りは新堀河岸と呼ばれる諸国から廻船で江戸に運ばれた酒を陸揚げする場所で、川に沿って白壁の酒蔵が並んでいました。現在の橋は昭和二年(1927年)に関東大震災からの復興事業により架けられたもので、東京都中央区の区民有形文化財に登録されています。トラス橋のように見えますが、フィーレンデール橋という梯子を横倒しにしたような一種のラーメン構造を持つ他にはあまり例の無い橋です。隅田川支流の河口部の第一橋梁は隅田川から帰港する船頭が区別しやすいように一つ一つデザインを変えてあり、この豊海橋をはじめ、萬年橋(小名木川)や柳橋(神田川)といった何れの橋も他に劣らず特徴的で美しい意匠を備えています。


隅田川に架かる永代橋は、現在は豊海橋よりも南側に在りますが、江戸期には現在地より上流の豊海橋の北に在り、従って永代橋を西に渡り、左に曲がると豊海橋という具合でした。忠臣蔵で知られる赤穂四十七士は、本所に在った吉良邸討ち入りの後、隅田川東岸を南に下り、永代橋を渡り、豊海橋を渡って泉岳寺へ引き揚げました。


時代小説の中では、豊海橋は池波正太郎著「泥鰌の和助始末」(鬼平犯科帳(七)に収録、文藝春秋)の中で登場しています。また、新装版「御宿かわせみ」(平岩弓枝著、文藝春秋)の中では、舞台となる小さな旅籠「かわせみ」は豊海橋の袂から少し外れたところに在ることになっています(※オリジナル版では、柳橋のはずれでした)。ちなみに、日本橋の袂から出発し、豊海橋を経て浅草を巡る小型水上バスの名前は「カワセミ」と言います。


豊海橋 東京都中央区新川1-19-2

東京メトロ東西線・日比谷線 茅場町駅より約750m 徒歩約10分


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