江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

上之橋

2012-08-04 | まち歩き

上之橋(かみのはし)は深川の仙台掘が隅田川と合流するところに架けられていた橋です。江戸時代から昭和59年(1984年)に清澄排水機場の建設に伴い撤去されるまで、佐賀町河岸通りに架かる橋として大きな役割を果たしました。江戸時代の深川には多くの水路が張り巡らされており、上之橋の100mほど南には中之橋が、更に南には油掘に架かる下之橋が在り、これらの橋により佐賀町は上佐賀、中佐賀、下佐賀に分けられていました。現在は水路が埋め立てられたため、上之橋同様に中之橋も下之橋も存在しませんが、ここに橋が在ったという僅かな痕跡として、上之橋がかつて存在した場所には、橋の歴史を永く留めるため、昭和五年(1930年)に関東大震災の震災復興事業により架設された最後の上之橋の親柱四本が残されています。


上之橋は、時代小説の中では、池波正太郎著「剣客」、「のっそり医者」(いずれも鬼平犯科帳(六)に収録、文藝春秋)に登場しています(作品中の表記は古地図[1]と同じ上ノ橋)。上之橋を北に渡り真っ直ぐ行くと、小名木川に架かる万年橋に至り、更に進むと竪川に架かる一ツ目橋に至ります。これら二つの橋は時代小説には頻繁に登場する橋です。上之橋とトリオを成す下之橋は、宮部みゆき著「お勢殺し」(初ものがたりに収録、新潮社)、池波正太郎著「穴」(鬼平犯科帳(十一)に登場しています。


[1] 御江戸大絵図、天保十四年(1843年) ※人文社から復刻地図が出版されています。


上之橋跡 東京都江東区清澄1-2-37

東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線 清澄白河駅から約700m 徒歩約9分


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