木こりが、榎の大木を切り、マムシの毒気にあたったこと
樵夫(きこり)榎に上り大なる蝮を截害(さいがい:殺害)す・・・原題
2023.8
泉州谷の輪の居守山(兵庫県姫路市に居守山がある)の榎の根に洞穴(ほらあな)がある。
その穴に、蝮蝎(うわばみ)が棲んでいる、と人々は畏れて、そこへ行く事はなかった。
ある時、与惣(よそう)と言う者が、その榎の枝を切って、薪にしようと出て行こうとしった。
すると、人々が、やめさせようとした。
しかし、彼は、
「なあに、怖がることはないよ。」
と言って、木に登り、枝を切った。
すると、例の穴から蝮がのたり出て来たのを、与惣が注目して、木に上るところを待ちうけ、鎌を持ち直して、蝮の眉間の真ん中に打ち込んだ。
さすがのまむしも、ドウと落ち、そのあたりにうねりながらに倒れたが、草も木もなぎ倒された。
しかし、与惣はすこしも騒がず、欲しいだけの枝を切り落として持ち帰った。
与惣(よそう)は、友達に、これこれこうだと語った。
それで、皆々は見に行ったが、全身の毛が逆立って、恐しかった。
与惣も、やがて煩(わずらい)つき、二十日ばかり過ぎて終に死んだ。
深い毒気にあたったのであろうか?
日本随筆大成第二期第5巻「新著聞集」より
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