蛇身鹿に変ず 「土佐風俗と伝説」より
2023.4
今より百年程昔、佐川領(家老領)河内(かうち)の足軽に篠原助蔵と言う者があった。
ある朝未明に狩猟に行き、尾川(高知県佐川町)の山中で長者が瀧と言う瀧の下に一匹の鹿を見た。
しかし何となく鹿とも見えないので、化け物と思い、
「真の鹿で無くば姿を変へそこを立退け。さもないと打つぞ」
と銃を構えたところ、鹿はたちまち角を生やし、助蔵に喰いかかった。
このように、一発に打ち止めると、尾川の轟淵に墜ち込んだが、この轟淵と越知(おち)樽瀧の上流の囲炉裏淵と同じ流れてあったのか、血潮がここ(囲炉裏淵)まで流れた。
後、助蔵が囲炉裏淵へ来て見れば、大蛇の鱗が三枚あったので、拾ってこれを祀った。
つまり淵の主が鹿に恣を変えていたものであろう、ということであった。
篠原一家はこれを恐れ、近頃は大樽の瀧の近くへ行ったことがない、と申し伝えられている。
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