狼は、神の使い
「中陵漫録」 佐藤成裕(江戸時代後期の随筆)には、様々な、面白い話があります。
目に見えないオオカミが、神様の使いとして、田畑を荒らすイノシシを追い払ってくれた、という話です。
以下、中陵漫録 より
備中の今津と言う所の山中に、小さな社がある。木ノ山権現という。
そのあたりに神社がある。
同じく、また下神代村というのがある。
ここより十里ばかり山の奥であるが、猪が出て田畑の作物を荒し、秋の作物が一粒もとれないことがある。
これを免れんと思へば、この神社から霊符(お守り)ならびに幣帛(へいはく)を受けて来て、祈る。
すると、祈った人に一匹の狼がついて来て、猪の害を防ぐという。
その人、帰路に狼がついて来ている事を気がついていないが、その山路に何か所も渡り超えるべき川がある。すると、川中の石の上の乾きている処へ水がはねて、ぬれた跡がある。
水がはねたのが、現に見えるが、狼の姿は、全く見えないと、その人が、私に話した。
その夜、猪が出て、田畑を荒らす事はない。
狼は、毎夜走り回って猪を狩って、帰るとの事である。
私は、この村の村長の家に数日続けて宿泊した。
薬を採集に行ったのだが、その時、何度かその話の事を、聞き正した。
まったく、その通りであるとの答えであった。
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