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江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「こおろぎの草子」  「虫の三十六歌仙」    19~24

2025-07-20 22:29:51 | こおろぎ草子・虫の三十六歌仙

「こおろぎの草子」  「虫の三十六歌仙」    19~24

19、くも(蜘蛛)
あやしくも かかるはかなき住ひ(すまい)せば 問ひ来る風の 便りだになし
アヤシクモ カカル ハカナキ スマイ セバ トイクル カゼノ タヨリ ダニナシ

解釈:蜘蛛の巣のような、卑しく、簡単に壊れる住居に棲んでいる私には、誰も便りをくれない。
考察:あやしくも=奇しくも=奇し くも、で、クモの語句を入れています。


20、けら
下つかに 身は埋もれて 過ぎけらし いづくも宿と 定めざりけり
シモツカニ ミワ ウズモレテ スギケラシ イヅクモ ヤドト サダメザリケリ

解釈:土の中に、体を隠して、日を過ごして来ました。どこも、決まったねぐらと定めていませんでした。
考察;「過ぎけらし」の「けら」を「オケラ 螻蛄」にかけている。

21、蟻(アリであるが、シロアリであるかもしれない)
山深き 朽木の中に ありながら 峯のあらしを よそに聞くかな
ヤマフカキ クチキノ ナカニ アリナガラ ミネノ アラシオ ヨソニ キクカナ

解釈:深山の、朽木の中に巣を作ってすんでいるので、峰の嵐(山の大風)が、遠くに感じる。
考察:「ありながら」は、「在りながら」であるが、「在り=あり=アリ」とするために、仮名表記としています。
この「蟻」は、朽ち木に棲んでいることから、シロアリの可能性があります。しかし、昔の人は、蟻(蜂の仲間)とシロアリ(ゴキブリの仲間)の差異は知らなかったでしょうから、普通の蟻を、念頭に置いて、和歌を作った、と思われます。


22、けらけら(不明)
よしなくも 人のけらを請ひもせず 世に悪まる 身を悔ゆるかな
ヨシナクモ ヒトノ ケラオ コイモセズ ヨニニクマル ミオ クユルカナ
解釈:理由もなく、人から、嫌われているのを、気にもしないでいました。しかし、世間から嫌われている我が身のことを、今では後悔しています。
考察:「けら(螻蛄)=オケラ」は、前にあるので、この「けらけら」は、何であるかは、不明です。
ここに言う「けら」は、「虫けら」の「けら」でしょう」。なにか、ひとから嫌われる虫のあるものを、指しているのでしょうが、それが何であるかは、わかりません。


23、いもむし
わが住みし 芋の畑は あ(荒)れにけり ことし(今年)の夏は ひとり(一人)のみして
ワガスミシ イモノハタケワ アレニケリ コトシノ ナツワ ヒトリ ノミシテ

解釈:私の棲んでいる芋の畑は、(私が食い荒らして)荒れてしまった。今年の夏は、私は、孤独であった。
考察:この歌には、虫の名称の一部(芋=いも)しかない。作者が、思いつかなかったのでしょう。


24、みみず
浅ましや 頭も見えず 尾もしれず 土の中には 音(ね)をのみぞかし
アサマシヤ アタマモ ミエズ オモ シレズ ツチノナカニワ ネオ ノミゾカシ

解釈:浅ましいものだ、蚯蚓である私には、頭もなければ、尾もない。ただ、土の中にいて、鳴いているだけです。
考察:作者は、ミミズという言葉を、詠み込むことが出来なかったようです。蚯蚓は、鳴きません。土の中から聞こえてくるジージーという音を、蚯蚓の声であると、昔は解釈されていました。この鳴き声は、オケラ(螻蛄)の鳴き声だということです。