江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

大蝦蟇が人に化けて願い出る  燕石十種

2024-02-03 23:17:39 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

大蝦蟇が人に化けて願い出る
2024.2

松平美濃守(みののかみ)下屋敷は、本所にあり、敷地内に方三町余りの沼があった。
ある年、何か理由があって、この沼を埋めるように申し付けた。
そして、近々埋め立てようとした時に、玄関に憲法小紋(けんぼうこもん)を着た一人の老人が来て、取次の侍に、
「わたくしは、この下屋敷に棲んでいる蝦蟇でございます。
このたび、わたくしの棲んでいる沼をお埋めになることを、お聞きいたしましたので、参上いたしました。
なにとぞ、沼を埋めるのを、ご中止くださるようお願い申し上げます。」
と言った。
取次の侍は、退座して、これは怪しいことだと思い、ふすまを隔てて窺い見るに、憲法(けんぼう)小紋の上下と見えたのは、蝦蟇の背中のまだらであった。
体の、大きさは、人間位であった。両眼は、鏡のようであった。
すぐに、美濃守へ報告すると、要望を聞きいれるとの言葉があった。
そして、その蝦蟇に答礼され、沼を埋める事を、中止した。
元文三年の事であった。

燕石十種   第五輯  江戸塵拾 より


雷の生け捕り (雷獣)  江戸塵拾

2024-02-03 23:15:16 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

雷の生け捕り (雷獣)
2024.2
外櫻田の永井伊賀守屋敷前に、元文四年六月雷が落ちた。
次第に雲がはれ、一匹の獣が雲に飛び上がろうとした所を、大勢の人が駆けつけて、打ち殺したそうである。
今は、この家の財物となり、土用の虫干しの日に家臣等に見せた。
その体形は、犬のようで、牙は、狼に煮て、毛の色は、うす赤であった。

燕石十種   第五輯  江戸塵拾 より