goo blog サービス終了のお知らせ 

江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

森源左衛門と言う河太郎  「ありのまま」

2025-04-13 00:24:09 | カッパ

森源左衛門と言う河太郎  「ありのまま」
                           2025.4

寛政(1789~1801)のはじめ、芸州山県郡羽生村(広島県)の庄屋の六左衛門の家に一人の武士が来た。その姿形は人に違う事なくてなまぐさかった。
その者が言った。
「我は森源左衛門と申すものにて、この川に年久しく住んでおります。近頃の洪水で、淵の中の岩に光りあるものが流れて来ました。石の間にはさまれているのを、眷属どもが大いに恐れているので、何卒、人を遣わして、この物を取り除けて下され。」
六左衛門は、大いに驚き、
「さては、汝は川童(かっぱ)なるや。
 さらば、その願い聞き入れられない。
 汝をはじめ、一類をも召しとり、村への害を除いてやろう。」と怒って言った。
この者が、こう言った。
「御怒りですが、そう言われる筋合いはございません。我等が境遇は、人間と異なりません。非義のふる
まいを禁じております故に、人を害する事は決してございません。何とぞ、その害を除いてください。」と、ひたすらに願った。
それならば、望みにまかせよう、と言って、
水練の者を淵に行かせて、様子を見させた。
すると、岩の隙間に小さな石が狭まれていたのを取って帰って来た。
その翌日、源左衛門が来て大いによろこび、
「一族の喜びは、大変なものでございます。
 どのように、感謝のお礼をしてよいか、わかりません。これは得がたきものですので、差し上げます。」
と言って、卵六ッツを置いて帰って行った。
六左衛門は、異類の者からの贈りものである、として捨てた。
その後、また 卵を三っつ持って来て、
「卵をお食べになりましたか?」と言った。
六左衛門は、本当のことを答えた。
源左衛門は、言った。
「さてさて、それは惜しい事でした。
これは、コクといふ鳥の卵でして、大変に得がたい物で御座います。このたびは、すぐにお食べください。大変に不思議な効能のある物であります。」と言った。
それで、六左衛門は、やがてそれを食べると、
「腹部が涼しくなり、精神が、はっきりしてきて、身がすこやかなる事を覚えた。」と言った。
この事をある殿様に申し上げた所、コクと言う鳥について、いろいろ調べさせた。しかし、コクについて、知っているものは、なかった。

 

「ありのまま」 広文庫より



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。