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江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

長ひげ会  「半日閑話」太田南畝

2020-01-23 19:17:46 | 江戸の人物像、世相
長髭会   長ひげ会
                    2020.1
文化十年五月のことである。
江戸の芝愛宕山にて、長髭会と言うのが開催された。
主催者は、大関大中と言う者で、秋田信濃守の侍医である。
この者は、連歌が好きで、連歌社中では、名が知られている。
子息は大関進といい、儒者である。

所々に髭のある老人を集め、それと同時に書画を見せる興業を行った。
しかし、人の気持ちは皆同じ様で、爺むさいものは、見たくない、と思ったのであろう。
一人も、見に来なかった。
興業は大失敗であった。

この日、しるしの棒に揮毫したのは、狸源十郎斗という者であった。
爺さんたちの髭を一本ずつとって、愛宕山に埋めて、その上にしるしの棒を立てた、とのことである。

西久保の光明寺の雲賓上人の話である。

以上、「半日閑話」太田南畝 166 より。

編者注:これは、ただの街の話である。江戸時代は、様々な興業、見せ物が行われたが、失敗例である。
こんなバカな事をして、と言った感じの話題である。

狐狸が鍼医を呼ぶ  「半日閑話」太田南畝 

2020-01-23 19:16:08 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣
狐狸が鍼医を呼ぶ
                    2020.1
江戸の日本橋に、一人の鍼医いた。鍼が上手であった。
盲目の人であった。

ある時、駕籠を伴って来た人がいた。
駕籠に乗っていくと、立派な家に着いた。
老婆が出てきて、病人の部屋に案内された。
数十歩の長さの廊下を通っていった。
病人がいたので、診察のため、腹をさわったところ、剛毛が生えていた。
それで、驚いて、手を放した。
触って見ると、顔は先が尖った獣であった。
それで、初めて、人でない事を知った。
しかし、治療を請われたので、腹等に鍼をさして治療した。
鍼医は、恐ろしく思い、帰してくれるよう、頼んだ。
すぐに、家に送り帰してくれた。

それから後は、怪奇なことは、起こらなかった。

狐狸の類でも、鍼が病気によく効くのを知っていて、
鍼医を招いて、病を治してもらったのだ。

寛政七年の事である。

以上、「半日閑話」太田南畝 より。

両国橋の怪異  「半日閑話」両国橋巷説、太田南畝 

2020-01-23 19:12:23 | 怪談
両国橋の怪異
                     2020.1
文化十三年八月初旬のことである。
夜更けに、本所あたりから狩衣を着て、烏帽子をかぶり、馬に乗って、空中を、江戸の方に飛んで行ったのを、両国橋の茶屋に腰掛けたものが、確かに見たという。

これまた、当時は、盛んにウワサされた。

以上、「半日閑話」両国橋巷説、太田南畝 より。

古碑を礎となし霊魂夢に入る 「新著問集」

2020-01-23 15:29:01 | 怪談
古碑を礎となし霊魂夢に入る  
                       2020.1
奥州二本松(福島県二本松市)の薬研屋(やげんや)久心と言う者が、庭をつくった。その時、同じ二本松の正念寺の山に、苔が生えて古びた石塔を見つけ、庭の踏石にした。
ちょうど、その頃より、恐しい夢を、たびたび見るようになった。

ある時、外で寝ていると、若い女が、恐ろし気な姿で出てきた。
「私が、長年住なれた場所から、何の理由があって引き離して、ここへ連れてきたのか?」と、怒った眼差しがすさまじかった。
それで、胸が騒いで、だた忙然となり、しばらくして、やっと落ち着いた。

この事が恐ろしくて、多くの人に話した。

すると、ある老人がこのように語った。
「このふみ石は、八十年以前に、畠山重次と言った人の娘が、十七八才で亡くなり、それを葬った石塔である。
このような恐ろしい夢は、その祟りであろう。
早く本のところに返したほうがよい。」と。

それで、言われたように、石塔を元に返したら、恐ろしい夢を見なくなった。

延宝年中の事であった。

以上、「新著問集」より。