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江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

三尊佛の亀と大蛇 「安濃津昔話」

2023-01-13 17:25:44 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

三尊佛の亀と大蛇      「安濃津昔話」

                       2023.1

 享保十五年二月十二日、四天王寺から藩の役人へのこのような届出があった。
『寺の内の蓮池からはい上ってきた(甲良ぼしに出てきた)亀の甲に、三像仏の御姿が、ありありと見えております。
余りの不思議さに、捕え置いて、御指示を待っております。』との事であった。

すぐに差出させて、殿様の御覧に入れた。
それから寺へ差し戻した。
寺では、その翌日から四日間、一般人に公開した。
それで、毎日群集が押し掛けて、大賑合いであった。


 元文五年六月五日、雲出屋の安右衛門からの報告には、『町裏(大門通西側住宅地と外堀との間の道)の御堀の土手のすすきの中に、大蛇の尾や頭は見えずに、胴体が四尺ばかりの所だけ見えましたが、その太さは確かに二尺廻り以上でありました』との事であった。
 上記の蛇は証拠のない事であるが、亀の甲は四天王寺の七不思議の一つとなっているものである。

「安濃津昔話」より


「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その5 

2023-01-06 23:15:40 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その5  

                         2023.1

蝦蟇は、小間隙を潜る(小さな隙間にも隠れる事が出来る)

蝦蟇を捕えて入れた容器に、どんなにピッチリした蓋をしても、夜の間に逃げ出す、と言うことは、古来各地で伝えられている事である。しかし、著者は半信半疑でおり、蓋を堅固にしたと思っても、逃げ出す隙間のある時に逃げるのだ、と想像していた。

しかるに、その後に於いて著者の経験を綜合すると、蝦蟇の隠れ身の術などの伝説には根拠があると考えられる。

著者(岡田建文)が郷里にいた時、夏季には毎日のやうに台所の土間の流し口の辺(ほとり)に、四五寸ばかりの蝦蟇が徘徊するのが二ヶ年ぐらい続いた。
その蝦蟇の潜んでいる場所がどこであるかは、わからなかった。

しかるに、或るうっとおしい曇りの日の夕刻に、かねて土間の隅に置いてあり漬物の重石用の一尺立方の真四角な石の下からかの蝦蟇が這い出して来るのが見られた。

この石と土間との接触面には、ほとんど隙間がない。
不思議に思って、吾等夫婦は、石の下へ竃(かまど)用の火箸をさし込んで見ると、火箸だけは辛うじて入ったのであった。
そこで石を起こして見ると、裏の中央が、直径二寸除りのサカヅキ形に浅くくぼんでいた。
小さい煎餅なら三枚足らず、普通のお針用の糸捲きなら、一個がやっと入るばかりの隙間であった。

あの大きく太い腹の蝦蟇が、どうしてこの窪みへ潜り込んで、時間を過ごすのかと、大変不思議に思った。
この事を或る人に話したら、その人は是は信じられぬ事だ、窪みの大きさを見間違えたのであろう、と言い張った。

 


「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その4

2023-01-06 23:10:35 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その4

                         2023.1

敵対の動物   

蝦蟇の敵は、虫類(江戸時代までは、蛇やトカゲ、蛙も蟲類に分類された。
足の無い蛇は虫。足のある昆虫は蟲である。いずれも虫偏である。)
に於いては蛇であるが、虫類の外では、主として獣類である。
獣が蝦蟇の敵たるは、喰わんがために敵となるのでは無く、蝦蟇に挑まれて敵となるのである。

蝦蟇には毒があるので、どんな動物にも食べられない。
餌にもならない。
蝦蟇から挑戦されない場合にも、諸動物は蝦蟇を畏れて、これと闘うのである。

或る人の話に、床の下でイタチとガマとが向かい合って死んでいたのを、見たと言う。
また猫も蝦蟇と相討ちの姿勢でどこかで死んでいたのを、見たと言う。
私の少年時代に、郷里の新聞紙が、どぶ鼠の大きいものと蝦蟇との闘いを報道したことがあった。
約一時間ばかり噛み合いをしたが、最後に鼠が、蝦蟇の口へ喰附いた時、蝦蟇は頭を振って鼠を二尺許り投飛ばしたら、鼠はそれっきりに死んだ、と書いてあった。

古人の雑録に大形の蛇が蝦蟇を呑んだ記述があったが、ガマの大きくないものは蛇に負けて飲み込まれる
らしい。

蝦蟇の体は、見かけより、頑健なものである。
かって、私の母(著者の岡田蒼溟の)は、夜分に庭先で、誤って三寸(10cm)位の蝦蟇を下駄で思いっきり踏んだ時、踏み潰ぶしたと思ってかわいそうがっていた。しかし、後になって見れぱ、平気で蟲を捕食していたと言う。
普通の蛙は、人に踏まれれば、潰ぶれてしまうのだが。


「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる)  その3 

2022-12-19 20:29:42 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる)   その3 

猫を溶液にする 猫を溶かす
猫を溶かす蝦蟇の妖力

石見国(島根県)大田町の南接地たる久利村に屋号を「柿の木」と言う農家がある。

或る日、主人は家人と談話中、庭前の柿の老木に隣家の方より一匹の猫が出てきて駆け上り、枝の上に立って、背を高くして下方をにらんでいた。
その様子は、敵を待つものの如くであった。

しかし、下には何物も追尾して来ないが、猫は依然として樹上で背を曲げ、四足は伸ばし得るだけ伸ばして、力み返っていた。
やがて猫の身から、灰色をした液汁が出てきて、際限なく滴下して地面へたまり、たまったのが蝋の如くに固まった。
その大きさは、大皿を伏せたようであった。
その中に猫は次第に姿勢が緩み出し、終にはグタンと力がぬけて体も目に立ちて痩せ細り、最後には樹上より地面に墜ちてしまって、動かぬこと死んだようであった。
しばらく経つと、何所からか大きい蝦蟇墓が一匹はい出して来た。

かの蝋様のものの周囲をまわりながら、土砂を掻きよせてこれを埋め、その傍にうづくまっていた。
やがて不潔な土団子のようなものが、ムクムクと生え出して来た。
その物には臭気があると見へ、四方から蒼蝿がよって来るのを、蝦蟇は巧みに一匹ずつ捉え、四五十匹にも及んでから、悠々として立去った。
後に人々は出て見るに、猫は骨と皮ばかりになっていたと言う。

猫は気の強い動物であるのに、それを気負けさす蝦蟇の精神力には驚くの外はない。
蝦蟇が猫を殺したのは便宜的な事であって、目的は蝿を捕へて喰うのにあったのである。
猫の肉脂が液状になるのは化学的作用であるが、蝦蟇は唯その一念を射出しただけで希望を遂げたのである。

このことを実際に見た者は、美濃嘉七と云う、今は故人の刄物鍛冶である。

 


「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その2 

2022-12-18 17:31:51 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その2

蝦蟇が、怪しい光を吐く  その1   

明治二十八年のこと。
会津若松の上市町の本屋の龍田屋(今は無い)の主人が、夏の或る夜に外出先から帰ると、納屋と倉庫の間の狭い路次の地面から、照明燈を差向けた用に、淡い一道の光の筋が見えた。
倉庫の白壁を照らしていたので、怪しみながら路次戸を開けて、内へ入って見た。
怪光は、地面の一点から発していたので、鍬を入れて掘って見ると、一疋の大型の蝦蟇がいた。あの怪光は、そのロから吐き出されているのであった。そして、蝦蟇は子供の悪さらしく、背中から五寸釘が串差しに剌してあった。
ところが、この時、家では八九歳の息子が高熱に悩まされて、治療されている最中であった。
病因はこの蝦蟇の一念であろうと、主人は畏れて、ただちに釘を抜いて、蝦蟇にわびを言った。
傷のところへは、蝦蟇の油を塗ってやって、庭内の安全な場所へ放った。すると、かの怪光も止み、また息子の病気も快癒したと言う。(実見者のH氏談)

蝦蟇の口中から光線を放射する、と言うようなことは、実際に見た者でないと信じられぬ事実ではある。しかし、人間や高等動物の心霊は発光体であることが、近年科学者の実験によって、確認されたことであることを思えば、この話もウソ偽りでないことは明白である。


蝦蟇が、怪しい光を吐く   その2
上記の話(蝦蟇が、怪しい光を吐く)と酷似した事実が、寛政(1789~1801年)頃に、岡山藩の牧村某(なにがし)方にもあった。
それは、或る夜、七歳の小児が夕方から熱病に罹り、昏睡中に数回ワッと泣出した。
泣き止んでは又泣出す。
何の病か一向に解らぬが、とにかく医者を迎えにやってから、便所へ行くと、土蔵の土台の所から青い火が燃えていた。
そうして、それと同時に、子供がワッと泣出した。
青い火は一旦消えたが、また燃えると、同時に子供が泣き出した。

それで、怪しんで便所から出て土蔵の際へ行って見ると、子供の戯れらしく、石を積み草を挿して墓場がまねてある。
それを取りのけて下を見ると、大きな蝦蟇が釘に貫かれたままで埋められてあった。
が、墓は死にもせず片息で苦んでいる。
すぐにその釘を抜き取り、薬をつけて放ってやったら、子供の熱が引き去り、泣くのも止った、
 と言う話がある。