Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

ヤマダ電機とウォルマート : 独自ブランド戦略の違い

2004-12-23 | ◆ビジネス
「ビジネス情報備忘録」ブログで、ウォルマートが独自ブランドのデジタル家電販売で苦戦しているという話題が取り上げられている。その話を聞いて、そういえばヤマダ電機も「フロンティア」という独自ブランドのPCやDVDなどのデジタル家電販売を始めていたことを思い出した。

◆ウォルマートの問題◆
ビジネス情報備忘録では、デジタル家電を構成する部品がまだ十分に安くなっていないことがウォルマートが苦戦している原因だと分析している。部品が安くないので価格を下げることが出来ず、ウォルマートの顧客層にアピールできないというわけだ。

しかし、CNETの記事によれば、プラズマテレビでは1,000ドル、DVDプレーヤーでは50~100ドルも競合メーカーの同等製品よりも安い価格設定になっているという。

一方、ウォルマートは、高額のデジタル家電はこれまで扱っていなかったにも関わらず、独自ブランドのデジタル家電販売について一切発表を行っていないという。つまり、新しい購買層に対してのアピールは一切行われていない状況にある。価格はある程度低く設定したものの、ウォルマートの既存顧客の購買力とウォルマートの設定した価格にはまだギャップがあるということだ。

◆ヤマダ電機だと何が違うか◆
ヤマダ電機の独自ブランド販売がどの程度成功しているのか知らないのだが、ウォルマートと比較した場合、以下のような推測は出来ると思う。

ヤマダ電機の顧客層は、そもそも家電を買いに来ており、靴下や食料品を買いに来ているわけではない。そのため、あえて高額家電を取り扱い始めたことをあえて発表しなくとも集客力は十分ある。また、ヤマダ電機への来店者には、高額の家電を買いに来る顧客が多く含まれるので、購買力のミスマッチも生じない。つまり、ヤマダ電機は宣伝広告を打たなくとも、顧客セグメントがずれることはないのである。

一方、ウォルマートは顧客セグメントがずれるので、広告宣伝を行わないと顧客セグメントがずれたままという現在のような状況に陥る。しかし、独自ブランドによる低価格戦略を実現するのは、部品の外部調達による研究開発費の削減、そして店舗の集客力を利用した広告宣伝費の削減である。この2つにお金を掛けなくて済むからこそ、価格を低く抑えられるのである。

◆すると今後は◆
ビジネス情報備忘録が指摘するように、デジタル家電の部品が更に安くなるまでウォルマートの成功はお預けになるのかもしれない。もしも高付加価値商品への顧客セグメントの誘導がウォルマート全体としての課題ならば、イメージを徐々にシフトしていくという戦略もありだろうが。

一方、ヤマダ電機はウォルマートよりは良いポジションにあると考えられるが、パソコンとデジタル家電はやはりまだ違う。パソコンは価格競争の要素が大きいが、成長期にあるデジタル家電には機能と品質による差別化がまだ効く。その中で低価格に流れる顧客がどの程度であるか。ヤマダ電機の販売力、そしてデジタル家電のコモディティー化の速度が勝負を決することになるだろう。

フランス版CNNとグローバリズムへの挑戦

2004-12-22 | ◆少し文化的
フランスの考え方を世界に発信するために、フランス政府が外国向けのニュース専門チャンネルを開局する方針であるという。

「仏版CNN」開局へ、米英メディアなどに対抗 仏政府 ... Asahi.com

フランスというのは自国の文化を非常に大切にする国である。しばしば、それは極端と思われるほどにである。例えばフランスのラジオは、その40%がフランス語でなくてはならない(もしかしたら、フランス語の音楽だったかも)。また、フランスの学校でイスラム教の女性が身につけるスカーフが禁止されたという話もつい最近のことであった。

あるテクノロジーのスタンダード(イギリスで開発されたもの)についてフランス人と話をしたとき、フランス人は真似をしなくとも、更に良いものを自分達で作り出せると言っていた。一方、スペイン人は、われわれは良いほうを使わせてもらうだけだと言っていた。このフランス人の誇りがヨーロッパを面白くしているのだろう。

最近では、ロンドン証券取引所の買収を巡って欧州の取引所の合従連衡話が盛んになってきている。アメリカに対抗するためには、経済システムを一体化する必要があるが、通貨を共通化するだけではまだ第一歩を踏み出したに過ぎない(イギリスはまだ通貨も別ですけどね)。各種決済システムなども統一化しない限りは、金融市場として効率性は最適化できないのである。

しかし、なかなかうまくいかない。そこがヨーロッパの良いところだと思うのだが。ただ、フランスには、グローバリゼーションには抗っても、多様性は認めてもらいたい。

キャッシュ・バック? -銀行代理店業務の解禁

2004-12-18 | ◆ビジネス
イギリスではスーパーマーケットで買い物をする際に、銀行のデビットカードを使うことが多い。そして、決済するときに「キャッシュバック?」と質問される。何のことやら良くわからなかった当初はとりあえず「No」と答えていたが、慣れてきてから「Yes」と言ったらどうなんのかな、と思って「Yes」と言ってみた。すると「How much?」ときた。キャッシュバック。。。現金、戻る→「返金!?」それでもって「How much?」。何で買い物して言った分だけ返金されるのか良くわからなかったが、10ポンドなどと言ってみた。すると、10ポンドくれたのである。

しかし、何のことはない、デビットカードから、買い物金額に加えて更に10ポンド銀行から引き落として、それをレジで渡してくれるということであった。つまり、スーパーのレジが、ATMの現金引き出しの役割を担ってくれているということだ。夜中にATMで現金を下ろすのはちょっと怖い国である。安全面からも、買い物時に現金を引き出せるのは有難い。

◇銀行法の改正と銀行代理店業務の解禁◇
さて、次期通常国会にて、銀行の代理店業務に関する銀行法が改正されて、一般企業でも銀行代理店業務を行うことが可能となる。最近は、銀行が証券会社や保険会社の窓口になるという話が多かったが、今度は、例えばスーパーマケットが銀行の窓口になるという話である。

すると上記のように、スーパーマーケットで預金の出し入れが出来たり、融資の申し込みが出来たりという話になる。この規制緩和は代理店業務を可能とすることから、単なるATMの場所貸しを超えたサービスが登場することが予想される。

12月4日の日経記事によれば、「スーパーのほか旅行会社、自動車や住宅の販売会社でローンを扱うことができる」とし、また「預金の受け入れや資金の貸し付け、為替取引のほか、両替・手形の引き受けなどに限られている代理店の業務範囲も広げる考え。現在、銀行本体で手がけている投資信託や保険商品の販売も認める方向で調整している」ということだ。

HP、ついに64ビット・チップには見切りをつけたか

2004-12-18 | ◆ビジネス
HPがIteniumの開発要員をIntelに転籍させる方針を発表した。Iteniumは、HPがIntelと共同開発を進めたきた64ビットのUNIXチップであるが、今回の動きは、UNIXチップ市場や競合他社にどのような意味を持つのだろうか? 

面白いことに、本件を報じるCNET Japanの記事は、「HP、Itanium関連プログラムに30億ドルを投入へ」と題され、あたかも更にHPがItanium戦略を強化するかに聞こえ、エンジニアの転籍とは矛盾するように見える。

◇そもそも◇
話の発端は、HPがCompaqを買収した際に、HP独自のPA-RISCチップと旧DECのアルファ・チップと二つの64ビットチップを抱えたことに遡る。64ビットチップ2つ分のR&Dを継続していては、買収効果を出すことはできない。そこで、独自チップへのこだわりを捨てて、Intelとの共同開発になるIteniumへと大きく舵を切り、PA-RISCとアルファについては、開発を打ち切ることとしたのである。

◇そして市場は◇
それまで、UNIXチップを開発する3大メーカーであるHP、IBM、SUNは、独自チップによる顧客囲い込みを行ってきた。それに対し、HPによるItenium戦略は、PCの標準化を促進したIntelによる64ビットチップへの参入を許容した。しかし、同じHPであっても、これまでのPAやアルファで動くソフトは、そのままではItaniumでは動かない。そこに付け込んで、IBMやSUNはHPの戦略を非難し、自分たちのチップへのマイグレーション・キャンペーンを展開した。

◇そして結局◇
結果的に、Iteniumが順調にシェアを伸ばしているという話は聞かれない。その最大の原因はソフトウェア不足にあると考えられる。いかにIteniumの性能が優れていようとも、そのチップで動くソフトウェアがなければ、誰も買わないのである。むしろ、チップの価値は、ソフトウェアのアベイラビリティというネットワーク効果で決まる部分の方が大きいと言えるかもしれない。

◇HPの決断◇
HPは今回の決断の中で、Itanium関連のリソースをチップ開発からItanium対応のソフトウェアやマーケティングへシフトさせるつもりであるという。つまり、HPは64ビットチップ開発に関わるノウハウは完全に諦め、チップの拡販に必要となるネットワーク効果へと軸足を移すということである。当然の動きのように見えながら、すぐにこうした行動に出なかったのは、チップ開発のノウハウを失うことへの抵抗感からであろう。

◇市場への影響◇
64ビットチップ開発のスキルをIntelへ移管することは、極端な話、HPにとってUNIXはPCと同様のコモディティ製品になるということだ。つまり自分では開発せずに、完成した部品のみ調達して、組み立てのみ行うこととなる。Intelにしてみると、Itanium開発に関して特定ベンダーからの影響力が弱まり、よりコモディティ製品として拡販しやすくなるだろう。IBMとSUNにしてみれば、いよいよUNIXチップのコモディティ化に歯止めをかけられるかの正念場になる。HPがリソースをソフトウェアベンダーの支援やマーケティングにシフトすることは、一気にItaniumの価値を高めることとなる可能性があるからだ。

UNIXの64ビット市場自体がPCサーバーに押されて伸び悩んでいる状況下、HPの決断は間違っていないのではないかと思うが、さてどういう結果が出るであろうか。

ユーティリティー・コンピューティングで更にITの仕事が減る

2004-12-17 | ◆ビジネス
Information Week誌が、ガートナーのアナリストのコメントを引用して、ユーティリティー・コンピューティングによって更にIT関連の雇用が減るだろうと予測している。

"Utility Computing Will Eliminate IT Jobs, Study Says", Information Week, Dec. 14, 2004

アウトソーシングの進展とインド・中国の躍進により、米国においてITを専攻する学生が大幅に減っているという。しかし、この記事では、ユーティリティー・コンピューティングの進展で、それが更に促進されると予測している。これは、ユーティリティー化の技術の要素として研究されている自律型のテクノロジーによって、更に人間によるシステム運用の手間が削減されることを言っているのであろう。

記事では、製造業の辿った道になぞらえて、IT業界の将来を悲観することはないとしている。確かに、製造業における単純労働が機械に置き換えられることで製造業そのものの魅力が減じたとは言えない。ITにおいても単純なプログラミングやシステム運用から開放されることは、単なる雇用の減少と見るよりは、より魅力的な仕事が増えることと見るべきだろう。