goo blog サービス終了のお知らせ 

かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 334(スイス)

2019-09-15 21:38:06 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠46(2011年12月実施)
     【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)167頁~
     参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、曽我亮子、たみ、藤本満須子、渡部慧子
      レポーター:崎尾 廣子 司会とまとめ:鹿取 未放
    

334 薄き空気と高さに馴れし体らは標高三千ではしやぎはじめぬ

       (当日意見)
★人間は高所では内省的になりにくい。これが地下なら内省的になるだろう。(慧子)
★「体ら」は複数を表し、自分だけでなく他の人たちも、という意味。(藤本) 

        (まとめ)
 ユングフラウヨッホ駅からエレベーターで上るスフィンクス展望台は3571メートルだそうだ。この歌には精神の高揚感がある。「体ら」の複数は「自分だけでなく他の人たちも、という意味」との意見があったが、複数の人ではなく〈われ〉の手も足も頭もというように体の複数の器官を指しているともとれる。私はこちらの説。だから「はしやぎはじめ」たのは〈われ〉の体感をいっているのだろう。(鹿取)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

馬場あき子の外国詠 333(スイス)

2019-09-14 18:34:27 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠45(2011年11月実施)
   【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)164頁
    参加者:K・I、N・I、泉可奈、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


333 標高三千されど異(こと)なる体感ありアッパームスタン、ユウングフラウ・ヨッホ

      (まとめ)
 アルプスの旅は2006年、ネパールの旅は2003年である。馬場が行ったジョムソンはアンダームスタンで、アッパームスタンと呼ばれるのはジョムソンから馬で更に3~4日かかるガミ村からである。また、アッパームスタンは特別な保護地域で旅行者は事前に申し込み、1日1万円程度の観光税を支払う必要がある。
 しかしジョムソンは標高2,700メートル余、アッパームスタンのガミ村は3,600メートル、こちらの方が3,454メートルのユウングフラウ・ヨッホに標高が近い。事実とは違うが標高の近さで選ばれた地名だろう。ガミ村にしろジョムソンにしろ耕作地の緑はわずかで、あとは見渡す限りの砂礫が広がる荒地である。ヨーロッパからもトレッキングに訪れる人は多いが、数はたかがしれている。それに対してユングフラウは登山鉄道やバスで行ける華やかな観光地であり、世界中から家族連れもやってくる。高度は似たようなものでもアルプスとヒマラヤでは当然気分も体感も違うのだ。(鹿取) 
  
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

馬場あき子の外国詠 332(スイス)

2019-09-13 19:27:08 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠45(2011年11月実施)
   【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)164頁
    参加者:K・I、N・I、泉可奈、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


332 ユウングフラウ・ヨッホより見るアレッチ氷河天下統一の思ひのごとし

      (まとめ)
 これは駅からエレベーターで上った展望台からの景色であろう。アレッチ氷河は全長24キロメートルに渉って続いているというから、壮大な眺めである。その眺めのすばらしさを「天下統一の思ひのごとし」と詠んだものであろう。(鹿取)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

馬場あき子の外国詠 331(スイス)

2019-09-12 22:28:53 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠45(2011年11月実施)
   【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)164頁
    参加者:K・I、N・I、泉可奈、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


331 迷路のやうな氷道ほのかなりければこの薄い酸素こそはアルプス

       (まとめ)(2016年11月改訂)
 氷道とは、329番歌(人間が考へることとつぴでもなくて氷河の胎内にゐる)でも見てきたように、「氷の宮殿」と呼ばれる氷河をくりぬいたトンネルのことだろう。3454メートルといえば富士山よりも高いから当然空気は薄く、急激に動けば息が苦しい。その空気の薄さにアルプスへ来たことを実感している。またこの標高だからかなり寒いらしい。作者の旅は夏だったようだが、それでも氷点下である。ちなみに「ユングフラウヨッホ」の公式ウエブサイト(英語)によると、本日11月7日の予報は摂氏-17°である。(鹿取)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

馬場あき子の外国詠 330(スイス)

2019-09-11 20:00:30 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠45(2011年11月実施)
   【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)164頁
    参加者:K・I、N・I、泉可奈、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放


330 上り上りつひに立つなるつるつるの氷河胎内の薄蒼き闇

      (まとめ)(2016年11月改訂)
 329番歌(人間が考へることとつぴでもなくて氷河の胎内にゐる)でも見たように、ユングフラウ鉄道の終点は、高度3454メートルのユングフラウヨッホ(ユングフラウの「肩」の意)駅。麓から9.3キロを50分ほどで到達するそうだ。始発のクライネ・シャイデック駅からの標高差は1393mで「上り上り」とあるが傾斜はきつく、日本の鉄道の最大の急勾配のさらに3倍ほどのきつい勾配もあるという。この駅は山の中に穿たれたトンネルの中にあるが、その先には329番歌で見た「氷の宮殿」があり、そこを歩いている場面かもしれない。ネットの旅行記の写真をいろいろ眺めているのだが、なるほどトンネル状の「氷の宮殿」は床も天井も左右も全て氷である。天井は低く写真だとせいぜい2メートルくらいに見える。全体に窮屈な印象で、それが胎内の感覚に繋がるのかもしれない。全て氷だからつるつるとよく滑る。「つひに」と「つるつる」の「つ」の音が響き合って、氷の危うさが感覚的に伝わってくる。ネットの写真類もこの氷のトンネルはうすあおく写っている。その薄蒼さを「闇」に冠したところが「胎内」にふさわしい。(鹿取)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする