かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 342(スイス)

2019-09-23 18:14:12 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子旅の歌47(2012年1月実施)
   【アルプスの兎】『太鼓の空間』(2008年刊)170頁~
     参加者:N・I、K・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、T・S、
     曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:藤本満須子 司会とまとめ:鹿取 未放
    
342 スイスの夜の楽しき酔ひにまじらんと飲めば肩ふれて国境もなし

       (レポート)
 クールの旧市街の通りの両側には百貨店、スーパー、ブティック、カフェなどが並んで賑やかだという。そのどこかのカフェであろう。旅ならではの開放感を味わいながら楽しんでいる人々のテーブルに作者は近づいて行って共に楽しんでいる。旅での知らない人間同士の触れあい、民族の紛争も国境もここでは関係ないんだと。結句「国境もなし」と大胆に詠いこの一首を引き締めている。風景を詠いながらもその裏に作者の思想が伺える一首であろうか。     (藤本)


      (当日意見)
★こういうの風景とはいわないんじゃない。(鹿取)
★「も」のこういう使い方は今は許されているのか?(T・S)
★個人と個人の垣根のほかに、国と国との垣根さえないという意味で「も」は使われているので問
 題ない。動きがあり、自分とのかかわりがあって読ませている。(鈴木)
★「酔ひにまじらん」に躍動感があり、簡単そうで出てこない言葉。(N・I) 
★「国境もなし」は、以前議論した永世中立の国だということと関わらせて読むべきだと思う。ま 
  た、レポーターは「近づいて行って」と書いているが、自分から近づいていったかどうかはこの
 歌では分からない。自分も楽しい酔いに加わりたいと思って飲み始めたのだろう。そうしている
 うちに小さなグループはおのずと解体されて、酒場全体が国境を超えたひとつのまとまりとなっ
 ていったのではないか。永世中立の国スイスだから「国境もなし」の断定が効いた歌だと思う。
   (鹿取)

   
コメント
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