かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 68

2023-07-03 14:47:19 | 短歌の鑑賞
  2023年版渡辺松男研究⑨(13年10月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)33頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター 鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


68 銀ねずの鱗をはがしあうごとくビルのうちにいてぶつかりあえり

          (レポート)
 ぶつかりあうことの形容として、「銀ねずの鱗をはがしあうごとく」という比喩が登場する。魚同士が激しく闘争しぶつかりあって、体表の鱗を傷つけあう様が浮かんでくる。ひりひりとした銀ねず色の痛みが感じられる。ぶつかりあっているのは、ビルの中で働く作者の属する組織の面面だろうか。無機質の閉ざされたビルの中で日がな暮らしていると、水槽の魚たちのように息苦しくなり、ささいなことで衝突する。ここで「ぶつかりあう」は、もっぱら仕事を通しての、人と人との軋轢のことだろう。


       (後日意見)
★鱗が剥がれたらやっぱり魚は痛いのでしょうね。職場でのぴりぴりした軋轢のたとえ
 を銀ねずの鱗という薄くて光るものにたくして、苦しいけれど、なにかちょっと昇華
 された感じもする。(鹿取)

 

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