かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の240

2020-02-09 18:47:18 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の31(2020年1月実施)
     Ⅳ〈夕日〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P156~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放

240 今日われは口から鳥を飛ばせしともうすこしで家族に告げそうになる

           (レポート)
 今日作者は、口から鳥を飛ばしたのだと、もうすこしで家族に告げそうになった
という。口から鳥を飛ばすとは、どういう事なのだろうか。マジックの一場面のようである。それとも何かの比喩なのだろうか。ここがまず解釈に苦しむ点である。そして、口から鳥を飛ばせたことを、もうすこしで家族に告げそうになったという。家族にしても、口から鳥を飛ばせたなんて告げられたらびっくりもするし、作者の心情を思いやって不安にもなるだろう。家族のそのような反応をおもんばかったゆえの「もうすこしで家族に告げそうになる」なのだろう。(岡東)


               (紙上参加)
 ステキ。
「すごいよ、ぼく、今日ね・・・」とか、こんなことを家族にいったら、「とうとうおかしくなった」などと思われるだろうから、ぎりぎりのところでこらえたけど、それほどにうれしかったんですね。ありえないようなことだけれど、あるかもしれないと思わせてくれて、読む方もうれしくなる歌。(菅原)

               (当日意見)  
★非常識なことを思わず言ってみたくなる事って理屈ではなくありますよね。でも
 言っちゃあいけないと思うとよけいに言いたくなる。「もう少しで」の口語がう 
 まい。作者の切実な実感がこもっている。親しい関係でこういうことってあるな 
 っと。(A・K)
★夢で妊娠をしてパンの子を産む歌がありましたね。この人は命を増やしたい人。
 女性性というか。だから、それを小鳥を飛ばしたというメルヘンチックな言い方
 で言ってみた。(慧子)
★なるほどねえ。モーセが海を割ったとかすごい奇跡じゃなくて、楽しいちょっ 
 としたこと。家族をびっくりさせない為にそれを言うのは我慢した。(鹿取)
★口から鳥を飛ばすってどういう気分なんですか?(A・K)
★前後の歌の続きからいうと、解放とかそういう感じでしょうか。でも私は書いて
 あるとおりに読みたいので、ここも本当に口から鳥を飛ばしたのだと思ってます
 けど。マジックだと面白さが半減するような。(鹿取)
★「飛ばせし」は文法上は「飛ばしし」ではないですか。(慧子)
★そうか、過去の「き」は連用形接続だから「飛ばしし」が正しいですね。(鹿取)



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