かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 118

2023-09-17 12:17:12 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究13【寒気氾濫】(14年3月)まとめ
      『寒気氾濫』(1997年)48頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:崎尾廣子 司会と記録:鹿取 未放


118 ときに樹は凄まじきかなおうおうと火を吐くごとく紅葉を飛ばす

      (レポート)
 芽ぶき、新緑、夏の緑、紅葉とときに樹はその持つ力を現す。造形の美をきわめつくし樹は紅葉を散らす。その光景に噴火する火山を見ている。「飛ばす」は樹の底力を詠っているのであろう。(崎尾)

           
      (当日発言)
★64頁に「紅葉を振り放てずに苦しめる樹に馬乗りになってやりたり」という歌が
 あってこの歌と逆の表現になっている。紅葉を飛ばす凄まじい樹と作者が一体にな
 っておうおうと泣き叫んでいるような感じ。(藤本)
★力強さ、ダイナミックな感じ、高揚感は感じますが、「おうおうと」というのは泣
 き叫んでいるのではなく雄叫びみたいなものかなあと思いますが。渡辺さんには紅
 葉に独特な思いがあるようですね。乳飲み子の時に母に抱かれて紅葉を見ていた、
 とか、廃棄物処理場で行き場をなくして紅葉が舞ってるというような歌もあったし。
    (鹿取)

*紅葉の歌、正確には次のとおり
どの窓もどの窓も紅葉であるときに赤子のわれは抱かれていたり
           『寒気氾濫』
一生を賭けて紅葉が飛びてゆく廃棄物処理場の秋天

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