かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 198(中国)

2019-03-23 15:37:38 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌26(2010年3月実施)
    【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)164頁~
     参加者:N・I、Y・I、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放


198 富士よ富士しだいに小さく日本は沈みゆき濃きスモッグに満つ

       (レポート)
 今、馬場先生ご一行は、敦煌に向けての飛行機の中に居られる。先生は今、飛行機の窓から、遠ざかり行く富士山を眺めておられる。その姿が小さくなって遠ざかるのを、日本の現状と考え合わせられて、下界はスモッグに覆われた日本の現状に思いを馳せられて、その現状を嘆いておられる。(T・H)


      (当日意見)
★T・Hさんは「敦煌に向けての飛行機の中に居られる」とお書きですが、その窓から富
 士山が見えるのは変だと思います。現在もあるかどうか知らないのですが、2000年
 以前に、日本から敦煌への直行便ってあったのでしょうか?普通、敦煌に行くには中国
 の都市から国内便の小さな飛行機に乗り換えて行くので、ここは「中国に向けて」でな
 いとおかしいと思います。(藤本)


     (まとめ)
 前歌【風早(かざはや)の三保の松原に飛天ゐて烏魯木斉(うるむち)に帰る羽衣請へり】を受けての作だから、烏魯木斉に帰る飛天とこれから行こうとする自分たちを意識の上で重ねているのであろう。「富士よ富士」と呼びかけるとき日本を離れる飛天の寂しさも投影させているのだろう。スモッグに満ちた日本が小さく沈むように遠ざかってゆく。「スモッグに満つ」に象徴される日本の現状は自然破壊や環境汚染の問題だけではなく、汚染を生み出す政治状況の不透明性までを含んでいるのだろう。「沈みゆき」にそんな祖国日本に対する悲しみと哀惜が滲む。
     (鹿取)


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