かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 191

2024-01-28 14:35:49 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究23
    【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
    参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
        S・Iと鈴木良明は紙上参加
    レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            

191 赤尾敏と東郷健の政見を聞き漏らさざりし古書店主逝く

      (レポート)
 赤尾敏は反共主義者。はじめ農民組合運動など無政府主義的活動をし、のちに転向し、大日本愛国党を結成した。東郷健は雑民党の代表。ゲイバーを経営したり、ゲイボーイとして働いたり、エイズ啓蒙活動などをしていた。連作の中で、全体をつなぐ役目か。両氏の政権をしっかりと心に留めた古書店主が浮かぶ。(真帆)


      (紙上意見)
 昭和の後期、各々右翼、左翼の違いはあるが、赤尾敏も東郷健も、政治思想というよりは毎回、選挙に立候補して、落選するので有名であった。この古書店主は、組織が嫌いで、一匹狼的な性格の持ち主なのだろう、そのような反骨精神を彼らに重ね、彼らが当選し、政権を握ることを信じていたのかもしれない。古書店主の生前の生き様を巧く捉えた一首(S・I)


 両名は、何度も選挙に立候補しては落選し続けてきた右翼?と同性愛者?。時世や当落に関係なく主張が一貫しているので、それを「聞き漏らさざりし古書店主」も別世界の人であった。    (鈴木)


       (当日意見)
★こういう歌があることが面白いですね。(うてな)
★農業の祖父とか弟の作業着とかに繋がっているので、一連で労働者ということをいい
 たかったのかなと思いました。(真帆)
★赤尾敏と東郷健、その放送を聞いている店主、またそれを見ている作者というふうに
 入れ子細工的な面白さを感じました。(慧子)
★店主に共感していると思います。変わり者に対して。(うてな)
★面白い作りの歌ですよね、赤尾敏と東郷健ではなくその政権放送を聞漏らさなかった
 古書店主の方に焦点を当てている。しかも、その店主が死んだという。死んだ情報は
 普通に手に入るけど、政見放送を聞き漏らさなかったって、〈われ〉にはどうして分
 かるんでしょうね。思想的にも一般の人からはみ出している古書店主かもしれないけ
 れど、政見放送のことを知っているということは〈われ〉はこの人と仲がよくて直接
 店主から話を聞いていたか、〈われ〉が通い詰めて、そういう店主を観察していたの
 かしら。店主に近親感を持っていたか、同類だと嗅ぎ取っていたのか。(鹿取)

    

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