かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の51

2020-07-22 16:06:32 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑥(13年6月) 『寒気氾濫』(1997年)橋として
       参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        司会と記録  鹿取未放
                   

51 測深鉛深空へ垂らしつづけつつ屋上にわれは眠くなりたり

 ★崎尾さんは「深空」を「しんくう」と読まれたけど「みそら」あるいは「ふか
  ぞら」じゃないですか?「真空」と紛らわしいから。(鹿取)
 ★この測深鉛って海なんかに垂らすものですよね。それを空に垂らしている。逆
  に向いているんですよね。この作者は覚醒者だと思う。レポーターは効率優先
  の世と書いていらっしゃるが渡辺さんはそれに距離を置いている。文明を否定
  している訳ではないが距離を置いていると読みました。(慧子)
 ★今の慧子さんの意見を面白く思いました。測深鉛は海や湖に垂らして深さを測
  る道具ですが、ここではそれを空に向けている。渡辺さんはこういう逆方向の
  歌をたくさん作っています。もっとも地球は球体なんだから空に向けて垂らし
  ても理屈ではありなんですが。測深鉛は20メートルくらいが普通だそうです
  から、垂らしつづけるにはとても足りない。だから無限ほども長い測深鉛を垂
  らし続けている。それは永遠ほど長い時間が必要だから眠くもなる訳です。そ
  れでイメージとしては以前やった宰相からの要請を蹴って在野にあって塗中に
  尾を曳く思想家達を思いました。老子のような人たちが釣り糸を垂らす代わり
  に屋根の上で測深鉛を垂らしている。社会と距離を取っている生のありようを
  わりとユーモラスに描いているのかな。それと、ポワンカレの紐のことも連想
  しました。以前ポワンカレの紐の歌を歌会に提出した時言ったけど、仮に宇宙
  に紐を曳いて一周して、その紐が回収できたら宇宙は球体をしているって。も
  ちろん理論上の話で、実際には不可能ですけど。(鹿取)



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