かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 359(中欧)

2020-03-02 19:48:45 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
   【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁~
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子       司会とまとめ:鹿取未放

359 パーサーはアップルジュース供したりシベリアはただ灰青の襞

            (まとめ)
 「パーサー」は、「首席の客室係」と辞書に出ている。パーサーみずから客にアップルジュースをサービスしてくれたのだ。雲はもう切れてシベリアが見下ろせたのであろう。しかし高度のせいで細かい景は見えず「灰青の襞」として目に映った。
 一連の歌ではここで初めて人間が登場してほっとするのだが、シベリアが出てくるとやはり抑留されていた日本人兵士達を連想させられる。おいしいアップルジュースを飲みながら、寒さと飢えで死んでいった兵士たちのことが脳裡をかすめたのであろう。「灰青の襞」のかなたに兵士達はうずもれているのである。356番歌(ハバロフスクの上空に見れば秋雪の界あり人として住む鳥は誰れ)で挙げたかつてのシベリア詠(例えば【シベリアの雲中をゆけば死者の魂(たま)つどひ寄るひかりあり静かに怖る】『飛種』など)を見ると、そのことは容易に想像できるだろう。(鹿取)


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