かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 229

2024-03-29 16:06:59 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究28(15年6月実施)
   【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁~
   参加者:S・I、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:曽我 亮子 司会と記録:鹿取 未放


229 星微光いまだ届かぬものもあり待ちきれざればわれら抱きあう

        (レポート)
 遠い宇宙から来るかすかな星の光は中々届かないものもあるように、恋人との仲もまだ良い雰囲気が醸されたとは言い難い。けれどとても待ちきれなくて私達は抱き合ってしまった。(曽我)


      (当日意見)
★「待ちきれざれば」は曽我さんと違って、お互い求め合っているから待ちきれないの
 だと解釈しました。だから「良い雰囲気が醸されたとは言い難い」も違う意見です。
   (鹿取)
★鹿取さんと同じ事を言っているんだけど、書き方が悪かったかな。(曽我)
★待ちきれずに抱きあう恋人同士に星微光が取り合わせられているところが面白いです
 が、他の方いかがでしょう?(鹿取)
★詠い起こして結句に行くまでにどう繋ぐかというのがあるのですが、これはうまく繋
 いでいると思います。星の微光が届かないというのと待ちきれないのがうまく合って
 いると思います。(慧子)
★うまく繋がっている理由を説明してくれますか?(鹿取)
★抱きあいたいのですね。だけど、それに何を付けるかというと日常のちまちましたも
 のでなくて宇宙を持ってこられた。待ちきれないこころの中が届かない星微光でよう
 く見える。とても上手いつなぎ方だ。(慧子)
★届かない星の光を待つ気分が、早く抱きあいたいという思いと似通っているというこ
 と?星の光を待つ茫洋とした気分と、抱擁を待ちきれない切迫感とは少し遠い気がす
 るのですが。(鹿取)
★まだ夕方で周囲が明るいので星の光が届かない。もっと暗くなれば星は輝き出す。二
 人で星を見ようと思うけれど、その時間を待っていられない。それで抱きあっちゃ
 う。(鈴木)
★スケールの大きなものと身近な恋人同士の対比が面白い。星というのは爆発して何万
 光年とか届くまでかかるけれど、そういうことを暗示しているのかなあと。(S・I)

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