かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 194

2024-01-31 14:02:30 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究23
    【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
    参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
        S・Iと鈴木良明は紙上参加
    レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            

194 生産を見にいかんかなふんぜんと真夜のセメント工場の白煙

     (レポート)
 作者は仕事でこのセメント工場の視察に行ったのだろうか。中国のユニクロの工場の労働時間の問題が報道されていたが、それを思わせる。「憤然」と見にゆくのだ。
  (真帆)
 

     (紙上意見)
 バブルの前「モーレツ」ということばが流行った。生産性を高めたら、豊かな暮らしが待っている。そう人々は信じてひたすらに働いた、その頃の様子だろうか。基幹産業であるセメント工場は真夜中でも稼働していたのであろう。ふんぜんと白煙をあげている様子はいかにも頑張っているようで、涙ぐましい。(S・I)


「ふんぜん」は、「憤然」「奮然」「紛然」のいずれだろうか。(鈴木)


     (当日意見)
★「ふんぜん」は自分の感情でもあり、白煙の様子でもあると思いました。(真帆)
★今日のセメントは質が悪いです。だから鉄骨が錆びやすいのです。バブルの頃か、そ
 れが大問題になりました。かつてのセメントは山砂で品質が良かった。粗悪なセメン
 トだから憤然としているのではないか。(うてな)
★私は「いかんかな」と言っているので自発的に行くのだと思う。セメント工場はいろ
 いろ問題を抱えているかもしれないけれど、生産を見に行くと言っているから、ここ
 では物を作るということの面白さに興味を持っていると思いました。また、ブルーカ
 ラーの弟の件でもいいましたが、農業とかトラックの運転手とか汗を流して働いてい
 る人に対して、常にリスペクトがあります。ここはそれで、セメント工場を応援する
 気分だと思います。作者は文明批評の歌もたくさんつくっていますけれど。(鹿取)



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