雨の日にはJAZZを聴きながら

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High Five Quintet / Five For Fun

2008年08月11日 21時10分07秒 | JAZZ
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昨日、パシフィコ横浜での専門医試験を終えたあと、せっかくなので帰りに関内のDisk Unionを覗いてきました。

関内のDUは一見すごく広く感じるのですが、すべてのジャンルがワンフロアにいっしょくたんに収められているため、実際にはジャズの売り場などそれほど広くはありません。そのあたりはちょうど池袋店と似ています。ただし、ドンキホーテを連想させるその煩雑で無秩序なディスプレイは、池袋店と決定的に違っています。

入荷した中古盤の多くは地面に直置きされた段ボールにぎっしり詰められ、新譜CDもフリーマーケットの露天のように陳列され、さらに、出窓のほんのわずかのスペースまでも商品を並べるという徹底したスペース活用にただただ驚いてしまうばかりです。ただ、あまりに通路が狭く、終始前傾姿勢での漁盤を強いられるため、ぼくのように腰痛持ちには耐えがたいものがあります。昨日も結局、Orchestre National De Jazz のCD を1枚だけ購入しただけで、そそくさと退散してきてしまいました。

それにしてもあのジャズCDの量の多さって、今に始まったことではないにしろ、いつも溜息がでてしまいます。あれは明らかに供給過剰ではないでしょうか。頼んでもいないのに、次々と新譜は出るし、誰が買うのか分からない超マイナーな旧作の復刻盤もでるし、米国のジャズを追っかけるだけでも体力がいるのに、最近は欧州モノもこれでもかというくらい入ってくるし、国内に目を向けてみても、和ジャズとかいう、ハッキリ言って犬も食わないような駄盤を再発してくるし、更には紙ジャケだ、果てはSHM-CDだと、膨大な量のCDを前に、眩暈を感じることもしばしば。

いったい自分は何を聴きたいのかすら分からなくなり、店内で完全に頭の中が真っ白になってしまうのです。自分の聴きたい音楽を自らの手で探し出し、積極的に選択し購入する、というごくあたりまえのことが、最近ではできなくなりつつあり、向こう側から押し寄せる膨大な情報の波にのまれ、つい望んでいないCDまでも買わされていることも多いのです。

そんな惰性的漁盤生活をただただ送っていましたが、やっと“待ちに待った”作品が登場しました。これは久しぶりに心底欲しいと思った作品です。2002年にファブリツィオ・ボッソを中心とするイタリアの精鋭たちが結成した High Five Quintet の4年ぶりの新作が遂にリリースされたのです。いや~、ホント、待たされました。前作『 Jazz Desire 』で一気にブレイクした彼らですが、以来、メンバー各人の活動が忙しくなり、バンドとしての活動が困難であったのでしょう。

さて、この待望の新作ですが、古巣V.V.J.を離れ、初のBlue Note からのリリースとなります。Blue Note からの発売と聞くと、万人受けする良質のジャズであることは保障されても、なんとなく荒々しさを奪われ、去勢されてしまったサウンドに変わっちゃうのではないかと心配してしまうのですが、まあ、なんとかHigh Five Quintet らしさは保持できたようです。

メンバーはファブリツィオ・ボッソ ( tp ) 、ダニエレ・スカナピエコ ( ts ) をはじめ、ベンバーは不動の5人です。楽曲は、メンバーのオリジナルが7曲のほかに、シダー・ウォルトンのマイナー・ラテン・ナンバー ≪ Ojos De Rojo ≫ やマッコイ・タイナーの≪ Inception ≫ などを取り上げています。個人的にはスカナピエコのオリジナルが1曲だけなのが少々寂しく思いますが、今回は5人のメンバーが平等にそれぞれ1曲から2曲づつ持ち寄って作った作品のようです。

リー・モーガン風のジャズ・ロックなタイトル曲M-1≪ Five For Fun ≫。作曲者不明の美メロ・バラード M-6 ≪ Estudio Misterioso ≫。マッコイ作曲の高速ハード・バップM-7 ≪ Inception ≫。それからシダー・ウォルトンのM-2 ≪ Ojos De Rojo ≫ など、これらの曲は、07年暮れにマリオ・ビオンディのバックバンドで彼らが来日 (前項あり) した際にも演奏されていました。本作の録音は08年の1月ですから、マリオ・ビオンディのツアーで散々演奏した曲を、その直後に録音しただけあって、どれもソロがよくこなれていて素晴らしです。特に、ボッソのソロなど、ライブで聴いたソロより、断然CDでのソロのほうが歌っています。

この機会に旧作2作品も聴き直してみました。あくまで個人的な感想ですが、旧作と比べて今回の新作は、それぞれのメンバーのオリジナル曲が弱い印象を受けました。皮肉にも一番盛り上がったのはマッコイの≪ Inception ≫であり、一番心に沁みたのが作曲者不明のバラード≪ Estudio Misterioso ≫でした。ボッソは今まで以上に饒舌によく歌っています。キュートな色気も相変わらずで、要所要所で信じがたい馬鹿テク・フレーズを披露し、技術的にはまだまだ進化の過程にあるのでは、と思ったりしまいた。ほんと、この人は凄いです。

最後にジャケットについて触れておきます。3人の子供が川に飛び込む一瞬をとらえた綺麗な写真が使われていますが、全くジャズとは無関係なジャケット・デザインですよね。High Five のCDでなかったらあまり所有したいと思わないデザインです。この写真はなんだろうと思い、リーフレットのクレジットを見ましたら“ Cover Photo : Corbis ”とありました。な~んだ、コービス社から仕入れた写真をそのまま貼りつけただけなんですね。リード・マイルスやフランシス・ウルフがこんなBlue Note のジャケットを見たら、ガッカリするでしょうね。