アメリカ国債のイールドカーブがフラット化しています。
米国債:イールドカーブがフラット化、製造業拡大で利上げ観測 ブルームバーグ
通常、イールドカーブのフラット化は、景気後退の前兆を示すものですが、製造業の拡大を理由に利上げ観測が、この時点では出ていました。
2年債と10年債の利回り格差は5月13日以降で最もフラット化し、07年以来の最小となった。
リーマン・ショック前ですね。
米ISM製造業景況指数(PMI)は、5月「51.3%」でした。
利上げするほどいい数字とも思えませんが、確かに50は上回っています。
ちなみに米ISM非製造業景況指数(NMI)は、「52.9%」で年間で最低を付けています。
NY連銀製造業景況指数は5月に「マイナス9.02」となり、3か月ぶりにマイナスとなっています。
5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、大幅に悪化 3カ月ぶりマイナス 日経
米ニューヨーク連邦準備銀行が16日発表した5月の製造業景況指数(季節調整済み)はマイナス9.02となり、プラス9.56だった前月から18.58ポイント悪化した。
3カ月ぶりのマイナスで、市場予測(プラス6.2程度)を大きく下回った。
フィラデルフィア連銀製造業景況指数も、予想を大幅に下回り、5月は「マイナス1.8」を付けています。
米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月0.2ポイント低下 日経
米フィラデルフィア連邦準備銀行が19日発表した5月の製造業景況指数はマイナス1.8となり、前月から0.2ポイント低下した。
マイナス圏の数値は2カ月連続で、市場予測(プラス2.7程度)を大きく下回った。
製造業は利上げが正当化できるほど、良い数字には見えません。
こうした状況で5月の米雇用統計ショックが襲いました。
非農業部門雇用者数は、雇用の継続的改善に必要とされる20万人を大幅に下回り、「3万8000人」という酷い数字となりました。
3月と4月も下方修正されています。
激減という感じです。
5月の労働参加率は「62.6%」であり、失業率は「4.7%」となっています。
不完全失業率(U-6)は、「9.7%」で変わらずでした。
半年以上の長期失業率(27週以上)は、「25.1%」であり、先月より「0.6%」低下しています。
ジョン・ウィリアムズ氏が集計している以前の統計手法による失業率は、5月「23%」で上昇しています。
The ShadowStats Alternate Unemployment Rate for May 2016 is 23.0%.
この低調な雇用統計を受けてドルは売られ、円高に振れています。
雇用統計の先行指標と言われる5月の米ADP民間雇用者数は、先月よりも増加し、「17万3000人増」を付けていたために、「3万8000人」という数字に市場はショックを受けたようです。
アナリスト予想では「15万8000人増」でした。
「16万4000人増」という予想もありました。
5月の雇用統計を受けて、6月の利上げ観測が大きく後退しています。
6月に利上げ見送りとなりますと、FEDは半年間も再利上げできなかったことになります。
FRBが雇用統計後に公表している労働市場情勢指数(LMCI)は、凄まじい悪化を見せています。
「マイナス4.8」を付け、先月以降も下方修正されています。
見方は「0」が基準であり、「0」以上ならば改善、「0」以下ならば悪化です。
4月は「マイナス0.9」だったはずですが、「マイナス3.4」に下方修正されています。
今年に入って急激に労働市場が悪化していることになります。
1月 マイナス1.3
2月 マイナス2.4
3月 マイナス3.0
4月 マイナス3.4
5月 マイナス4.8
この悪化傾向を見ますと利上げができる環境ではありません。
日本もギリギリのことをしているように見えます。
民間銀行の国債保有が、ついに100兆円を割りました。
資金担保等で最低でも100兆円は必要だったはずですが、「94兆6750億円」となり、100兆円を割っています。
銀行の国債保有が100兆円割れ、貸し出しに回らず日銀預金に流入か ブルームバーグ
日銀統計によると、都市銀行や地方銀行を含めた民間銀行の4月末の国債保有残高は前月比5兆4820億円、率にして5.5%減の94兆6750億円となった。
大手行などが日銀に預けている当座預金残高は4月末で約276兆円。
当座預金の資金から市場で国債を買い、すぐに日銀に売却し利益を出してまた当座預金に積むという繰り返しが起きているとみている。
「企業はマイナス金利を入れるほど景気が悪いのかと思ってしまい、景気を良くするどころか、どんどん企業経営者の気持ちをシュリンクさせている」
今後も減少していく見通しです。
岩田氏は来年の半ばには国債の売り手は枯渇し、IMFは2017年~2018年には技術的限界が来ると言い、JPモルガンは今年の末に売り手は枯渇し、テーパリングせざるを得なくなると予測していました。
果たして日銀が900兆円もの国債をVaRショックで暴落させたならば、アメリカ経済にどういった影響を与えることになるのか、考えるだけでも恐ろしい事態と言えます。
日本の問題だけでは済まなくなるでしょう。
世界中から怒りを買うことになります。
現状は、安倍総理が言っていたように、リーマン・ショック前夜なのかもしれません。