執事・メイド・従僕・使用人について。あらゆる作品が対象。出版元の詳細は記事中の作品名をクリック。amazonに行けます。
執事たちの足音
『プリーストリー氏の問題』 銀スプーンに話しかける執事
本日の召使 : バーカー(執事)
(『プリーストリー氏の問題』A・B・コックス著 小林晋訳 晶文社 2004年 原題:Mr. Priestley's Problem)
以前でましたジーヴス…のページでコメントを頂いたくろにゃんこ樣から
「興味深い執事が出てきますよ」と教えてもらいました。
それがこの『プリーストリー氏の問題』に登場、
執事のバーカーです。
『プリーストリー氏の問題』![](http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=shitujitachin-22&l=ur2&o=9)
バーカーがお仕えする主人は、
独身男性用フラットで泰平楽に暮すプリーストリー氏。
友人が言います。
ぬくぬくとマンネリ生活にひたります。
執事の日常生活は主人しだい
マンネリな日常を送る主人に仕える召使いは、
楽しみは少ないでしょうね。
(召使い泣かせの“ご主人の気まぐれ”が無いぶん、仕事はラクでしょうが)
主人が旅行好きなら、主人の付添いで従僕は各地を見てまわることもできる。
主人が社交家なら、パーティーに呼ばれた屋敷の召使いたちと交流することもできる。
(前にご紹介したThe Butler's Guide のなかで、
著者スタンリー・エイジャー氏は、二代目レバン卿の従僕の仕事を選んだのは、
“屋敷のあるコーンウォール地方に行ったことが無かったのと、
主人のレバン卿自身が「旅行をする」と言ったから”と述べています。)
つまり、主人が活動的な人物なら、召使いは仕事をしながら見聞を広げられる機会を得られるのです。
反対にプリーストリー氏のように、
「本と陶器と嗅ぎタバコ入れのコレクション」が趣味で、
「外にいるよりも自宅にいる方がはるかに居心地が良い」
と、地味ぃ~に隠居生活をキメこんでいる主人のもとでは、
召使いの日常も、しぜん変化に乏しくなろうというものです。
プリーストリー氏はもちろん、女性にモテない。というか接触の機会がない。
安楽だが、刺激も華もない生活…。
しかし、ある日突然、ご主人さまが若い女性を伴って帰宅してきたら?
しかもその美人さんを指して、
「ぼくの従妹で、秘書としてしばらく泊まることになる」
ばればれのゴマカシを言われたら?
さらに赤面して、手錠の掛かった片手をおずおずと見せ、
「片方はなんとかはずしたが、もう片方がどうしてもはずれない。
これを……その……はずすための道具を持ってきてくれないか?」
と頼まれたら?
晴天のヘキレキとも言える主人の言動を目の前に、
執事としては、誰にこの驚きをぶつけたら良いのでしょう?
バーカーがとった行動は――
茶器に話しかけることでした。
言いたいことは、茶器に向かって
「この人物を動揺させる物は何もなかった」
いつも、何があっても、無感動なバーカー。
驚きの表情どころか、笑みすら浮かべたことはない。
「なんと言ってもバーカーは自分の軽蔑に特別な価値を置いていた。」
ちょっとイジワルなんですね、この人。
主人のプリーストリー氏に対しても、
無表情で答えながら、投げかける質問には、そこはかとなく侮蔑の色が。
しかしさすがのバーカーも、
主人の片方だけはずされた手錠を目にした時は、我慢できなかった。
「だ、だ、旦…」としゃがれ声をもらすと、部屋をとび出した。
空のミルク差しに向かっては「とんでもない色男ときたもんだ!」と
主人に対する新たな見解を告げ、
たまたま磨いていた銀のスプーンに向かっては
「やれやれ、なんてこった!」「お盛んなこった!」と感想を打ち明けるのです。
ここらへんの彼の姿は、
先ほどまでのイジワルな感じが薄れ、
人間らしいだけでなく、かなり愛らしい。
茶器に話しかける執事。
このありそうでなさそうな執事の人物像。
A・B・コックス(バークリー)氏のオリジナルなのでしょうか? それとも…。
それでは、バーカーの「召使評価」。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c5/e3c1bfcc1d7484cd1b283469ad6ad0a0.jpg)
あらっ、
低い点数でまとまっちゃって。
まあ、長所ばかりの執事というのも、ツマリマセン。
欠点の多い執事のほうが、面白みがあります。
もっと『プリーストリー氏の問題』について知りたい!
と思った方はくろにゃんこの読書日記へどうぞ。
ネタばれなしで、小説の雰囲気が伝わってきます。
文章上手い。引き込まれます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/91/ee6bdfac134c9f1ea0f70e43e25efd71.gif)
ブログランキング ブログ村に登録中!
この記事が面白い・興味深いと思った方は、ここをクリックしてください!
(『プリーストリー氏の問題』A・B・コックス著 小林晋訳 晶文社 2004年 原題:Mr. Priestley's Problem)
以前でましたジーヴス…のページでコメントを頂いたくろにゃんこ樣から
「興味深い執事が出てきますよ」と教えてもらいました。
それがこの『プリーストリー氏の問題』に登場、
執事のバーカーです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/13/d7358a6a4f81702f87c6f72aacdddf1f.jpg)
バーカーがお仕えする主人は、
独身男性用フラットで泰平楽に暮すプリーストリー氏。
友人が言います。
「36歳だというのに、60歳みたいに型にはまって、若さというものが微塵も感じられない! どうしてうんざりするようなマンネリ生活から抜け出さないんだ? 飛び回れ! 世間を見ろ! 冒険するんだ!」そんな慨嘆もプリーストリー氏にはどこ吹く風。
ぬくぬくとマンネリ生活にひたります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/e0/d521b5058e0dfbf75897683f2b383cbf.png)
マンネリな日常を送る主人に仕える召使いは、
楽しみは少ないでしょうね。
(召使い泣かせの“ご主人の気まぐれ”が無いぶん、仕事はラクでしょうが)
主人が旅行好きなら、主人の付添いで従僕は各地を見てまわることもできる。
主人が社交家なら、パーティーに呼ばれた屋敷の召使いたちと交流することもできる。
(前にご紹介したThe Butler's Guide のなかで、
著者スタンリー・エイジャー氏は、二代目レバン卿の従僕の仕事を選んだのは、
“屋敷のあるコーンウォール地方に行ったことが無かったのと、
主人のレバン卿自身が「旅行をする」と言ったから”と述べています。)
つまり、主人が活動的な人物なら、召使いは仕事をしながら見聞を広げられる機会を得られるのです。
反対にプリーストリー氏のように、
「本と陶器と嗅ぎタバコ入れのコレクション」が趣味で、
「外にいるよりも自宅にいる方がはるかに居心地が良い」
と、地味ぃ~に隠居生活をキメこんでいる主人のもとでは、
召使いの日常も、しぜん変化に乏しくなろうというものです。
プリーストリー氏はもちろん、女性にモテない。というか接触の機会がない。
安楽だが、刺激も華もない生活…。
しかし、ある日突然、ご主人さまが若い女性を伴って帰宅してきたら?
しかもその美人さんを指して、
「ぼくの従妹で、秘書としてしばらく泊まることになる」
ばればれのゴマカシを言われたら?
さらに赤面して、手錠の掛かった片手をおずおずと見せ、
「片方はなんとかはずしたが、もう片方がどうしてもはずれない。
これを……その……はずすための道具を持ってきてくれないか?」
と頼まれたら?
晴天のヘキレキとも言える主人の言動を目の前に、
執事としては、誰にこの驚きをぶつけたら良いのでしょう?
バーカーがとった行動は――
茶器に話しかけることでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/e0/d521b5058e0dfbf75897683f2b383cbf.png)
「この人物を動揺させる物は何もなかった」
いつも、何があっても、無感動なバーカー。
驚きの表情どころか、笑みすら浮かべたことはない。
「なんと言ってもバーカーは自分の軽蔑に特別な価値を置いていた。」
ちょっとイジワルなんですね、この人。
主人のプリーストリー氏に対しても、
無表情で答えながら、投げかける質問には、そこはかとなく侮蔑の色が。
しかしさすがのバーカーも、
主人の片方だけはずされた手錠を目にした時は、我慢できなかった。
「だ、だ、旦…」としゃがれ声をもらすと、部屋をとび出した。
プリーストリー氏は閉まったドアを実に興味深いといった表情で見た。「ねえ、きみ」彼は穏やかな驚きを感じていた。「今、バーカーは笑ったね。やっぱり彼も人間だったんだ」このあともバーカーは、
プリーストリー氏は正しかった。バーカーは人間だった。お茶を淹れてる間、極めて人間的な考えがバーカーの頭の中を駆け巡っていた。しかし、バーカーを驚かせたのはプリーストリー氏もつまるところ人間だったということだ。
「あきれかえったご主人だ!」バーカーはお茶の缶に向かって言った。「この歳になってまるで二歳児みたいなおいたを始めるなんて! まあいい」バーカーはしみじみと思った。「老いてますます血気盛んとも言うからな」
(下線はブログ筆者)
空のミルク差しに向かっては「とんでもない色男ときたもんだ!」と
主人に対する新たな見解を告げ、
たまたま磨いていた銀のスプーンに向かっては
「やれやれ、なんてこった!」「お盛んなこった!」と感想を打ち明けるのです。
ここらへんの彼の姿は、
先ほどまでのイジワルな感じが薄れ、
人間らしいだけでなく、かなり愛らしい。
茶器に話しかける執事。
このありそうでなさそうな執事の人物像。
A・B・コックス(バークリー)氏のオリジナルなのでしょうか? それとも…。
それでは、バーカーの「召使評価」。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c5/e3c1bfcc1d7484cd1b283469ad6ad0a0.jpg)
あらっ、
低い点数でまとまっちゃって。
まあ、長所ばかりの執事というのも、ツマリマセン。
欠点の多い執事のほうが、面白みがあります。
ひかえめ 2- もうすこしで「慇懃無礼」の域に達します。
威厳というより、尊大?
機転 3- かつてプリーストリー氏が葉巻入れに
「これみよがしに鍵をかけるように」なったときは、
「紳士的に」慌て騒がず、こっそり合鍵をつくって「今まで通りの行いを続けたのである。」
うーん……。
召使いにありがちな行為とはいえ……
そこに機転を働かせたか。
献身 2- こっそり「今まで通りの行い」を続けちゃうんだからなーっ!!
主人からの愛情 3- ほんわかプリーストリー氏は、バーカーの堂々とした態度に押され気味。
だから「今まで通りの行い」をされちゃうのよーっ!!
スタイル 2- 「うらなり風の取り澄ました男で」
「ゆで卵みたいにつるりとした顔」
だそうです。
これはもう、好みの問題です。
わたくしは、ちょっと…パス。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/52/c0abda78e5dc59934893adbd7ec23650.gif)
と思った方はくろにゃんこの読書日記へどうぞ。
ネタばれなしで、小説の雰囲気が伝わってきます。
文章上手い。引き込まれます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/91/ee6bdfac134c9f1ea0f70e43e25efd71.gif)
![にほんブログ村 ポータルブログへ](http://www.blogmura.com/img/www80_15.gif)
この記事が面白い・興味深いと思った方は、ここをクリックしてください!
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
« こんなところ... | 従僕の理想的... » |
ブリーストリー氏の生活は物静かだし、たいして手がかからなかったんでしょう。
パーカーは、きっと退屈だったんでしょうね。