執事・メイド・従僕・使用人について。あらゆる作品が対象。出版元の詳細は記事中の作品名をクリック。amazonに行けます。
執事たちの足音
召使語録3 『ドリアン・グレイの肖像』
ファーモア卿は、無為徒食を看板に優雅な貴族生活をおくる老紳士。
ロンドン市内に邸宅をふたつ所有しながらも、手数のかからぬ下宿住まいを好み、
食事もたいていクラブでとることにしている。
やや無骨な人物で、「利己主義者だ」との世間の評判もあるが、
自分を楽しませてくれる人間には気前が良いので、社交界では受けが良い。
気ままな独身生活を享受するかれのそばには、
もちろん従僕がはべっているのですが…
(こっそりコメント・ブログ筆者countsheep99)
ファーモア卿が従僕からどのようにいためつけられたのか、
ワイルドはいっさい具体的な内容は書いていません。
引用文にあるように、ただ「脅かされた」「いためつけられた」とさらっと述べるだけに止めています。
そしてすぐ後の文章に、
「英国あってこそかれのような人物が出来上がったわけであり―」
とつづきます。
従僕と主人の関係において、「心理的主従逆転」は、
普通によく起こることだったのかもしれません。
この文章内容だけで、19世紀の読者は
「ああ、つまり、あーいうことね」と了解して、フッと笑ったのかも…。
ロンドン市内に邸宅をふたつ所有しながらも、手数のかからぬ下宿住まいを好み、
食事もたいていクラブでとることにしている。
やや無骨な人物で、「利己主義者だ」との世間の評判もあるが、
自分を楽しませてくれる人間には気前が良いので、社交界では受けが良い。
気ままな独身生活を享受するかれのそばには、
もちろん従僕がはべっているのですが…
かれの従僕にとってファーモア卿は英雄的存在だったが、皮肉なことにその従僕にかれは脅かされていた。大部分の親類にとってかれが一大脅威であったのも、従僕にいためつけられたかれが、その鋒先を親類に向けたからである。 ―オスカー・ワイルド作『ドリアン・グレイの肖像』より― |
(こっそりコメント・ブログ筆者countsheep99)
ファーモア卿が従僕からどのようにいためつけられたのか、
ワイルドはいっさい具体的な内容は書いていません。
引用文にあるように、ただ「脅かされた」「いためつけられた」とさらっと述べるだけに止めています。
そしてすぐ後の文章に、
「英国あってこそかれのような人物が出来上がったわけであり―」
とつづきます。
従僕と主人の関係において、「心理的主従逆転」は、
普通によく起こることだったのかもしれません。
この文章内容だけで、19世紀の読者は
「ああ、つまり、あーいうことね」と了解して、フッと笑ったのかも…。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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故意ではないと思うんですが、つい、ニヤッとしてしまいました。
「ドリアン・グレイの肖像」は読んだことが無かったんですが、こんな一文があるのなら、一度読むべきですね!
お互いに退廃の匂いを嗅ぎとって、引き合ったのでしょうか。
今回あらためて「ドリアン・グレイの肖像」を読んで思ったのですが、ワイルドは小説内での召使の扱い方が、本当に巧い。
脇役でさえない「端役」の召使に、目立たないように重要な役割を与えています。
これがまた巧いんだ。いやらしくない。無理がない。
具体的なことは、次回のブログにまわします(笑)。
愛すべきボストン町民の健康は、こと医療に関するかぎり、ひとりの年老いた執事兼薬剤師の手にゆだねられていた。この人物の敬虔さと品行のほうが、医師免許証よりよほど強力な推薦状であったのだ。
ニューイングランド黎明期において、医師不足という事情があったようですが、この一文から有能な執事の姿が垣間見えますね。
その続きには
ただ一人の外科医といえば、日ごろの剃刀さばきの腕前をときおりかの高尚なる技である手術においても発揮する人物でだけであった。
とあり、どうも床屋さんとか、剃刀を商業上使用する人物のことを指しているようです。
あと、これは質問なんですが、本文中に「教会の執事たち」という語句があって、教会にも執事がいるのかと疑問に思ったんですが、なにかご存知でしたら教えて下さい。
ええっと、とても面白い情報&質問ですので、ブログ記事にしちゃいました。
コメントで返すだけでは、もったいなくて(笑)。
というわけでして、↓の記事をご覧下さいませ。
「執事件薬剤師」くろにゃんこさんからの情報&質問
http://blog.goo.ne.jp/countsheep99/e/cfc27efbd04854effca0a4973205ac3b