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執事たちの足音
パスパルトゥーの災難。
本日の召使 : パスパルトゥー(侍従) 小説「八十日間世界一周」より
従者・パスパルトゥー誕生のシーンです。
このあと、主人のフィリアス・フォッグ卿のお供で、世界を80日間で一周するハメとなる。
生粋のパリジャン。
「愛嬌のある顔をし、うまいものといい女はいつでも歓迎という男。
気立てがやさしく、世話好きで、そんな顔が友だちの肩のうえにのっかっていたら、
だれでもうれしくなるような、人のいい丸ぽちゃの顔をしていた。」
いままでに様々な職業を転々としてきた。
艶歌師、サーカスの軽業師、体操の教師、パリの消防士…。
その経験から得た身の軽さが、行く先々の土地で発揮されることとなる。
(というか勝手に動いて騒ぎを大きくしたりする。)
彼が仕えるはフィリアス・フォッグ卿。
いわゆる英国紳士(冷静沈着、時間厳守)
…に、おおきく輪をかけたようなお方でして。
「数学的な正確さ」をもつこの紳士は、
屋敷とクラブのあいだの歩数さえキッチリしている。(576歩)
スイスの機械式時計が服きて歩いているようなものだ。
そもそもフォッグ卿がパスパルトゥーを雇ったのは、
前にいた、ただひとりの下男をクビにしたからで、その理由が
「ひげ剃りの湯は華氏の八十六度ときめてあったのに、八十四度のをもってくるという大罪をおかしたから」
あいたたたぁーどえらい主人に当たっちまったぜ、
とゲンナリするでしょう。フツーの召使なら。
パスパルトゥーは違った。
「おれにはうってつけだ! おれに似合いの職場だ。フォッグ氏とおれとはぴったり気持ちがあうだろう!」
歓喜しちゃうんです。
というのも、彼は「落ち着いた家庭の生活を味わいたい」と切に願っていたからです。
生粋のパリジャンでありながら、イギリスに渡って下男の仕事を選んだのは、
それまで浸かっていた放浪生活を断ち切りたかったからだ。
10軒の屋敷につとめた。
どの主人も気まぐれで、道楽者で、旅行してばかりだった。
だが、この几帳面で暮らし向きのおちついたご主人のもとで、
やっと根をおろすことができる…。
はれてフォッグ卿の召使となったのが、1872年10月2日(水)・午前11時29分。
そのフォッグ卿に世界一周の件を告げられ、
茫然自失となるのが同日・午後7時50分。
その間、約8時間20分。
パスパルトゥー、わずかな安楽の時間だった。
(注:文中の「 」内はすべて創元SF文庫「八十日間世界一周」からの引用です)
関連リンク
映画「80日間世界一周」(1957)(allcinema)
パスパルトゥー役の喜劇役者カンティンフラスは原作に近いイメージ。
Cantinflas(WIKIPEDIA)
そのカンティンフラスの詳細。チャプリンのコメントが利いてる。
映画「80days」(2004)(HERALD ONLINE)
パスパルトゥー役にジャッキー・チェン。もちろん主演。もちろんカンフー。
「よろしい。ところで、いま何時かな」 「十一時二十二分です」とパスパルトゥーはチョッキのポケットから大きな銀の時計をだして、答えた。 「おまえの時計はおくれているぞ」とフォッグ氏がいった。 「失礼ですが、そんなはずはありません」 「いや、四分おくれている。だが、それはどうでもいい。四分のおくれを確認しておけばいいのだ。では、いまから、つまり一八七二年十月二日水曜日の午前十一時二十九分から、おまえはわたしの使用人となったのだ」 「八十日間世界一周」ジュール・ヴェルヌ作 田辺貞之助訳 創元SF文庫より。 (太字は筆者。) |
従者・パスパルトゥー誕生のシーンです。
このあと、主人のフィリアス・フォッグ卿のお供で、世界を80日間で一周するハメとなる。
生粋のパリジャン。
「愛嬌のある顔をし、うまいものといい女はいつでも歓迎という男。
気立てがやさしく、世話好きで、そんな顔が友だちの肩のうえにのっかっていたら、
だれでもうれしくなるような、人のいい丸ぽちゃの顔をしていた。」
いままでに様々な職業を転々としてきた。
艶歌師、サーカスの軽業師、体操の教師、パリの消防士…。
その経験から得た身の軽さが、行く先々の土地で発揮されることとなる。
(というか勝手に動いて騒ぎを大きくしたりする。)
彼が仕えるはフィリアス・フォッグ卿。
いわゆる英国紳士(冷静沈着、時間厳守)
…に、おおきく輪をかけたようなお方でして。
「数学的な正確さ」をもつこの紳士は、
屋敷とクラブのあいだの歩数さえキッチリしている。(576歩)
スイスの機械式時計が服きて歩いているようなものだ。
そもそもフォッグ卿がパスパルトゥーを雇ったのは、
前にいた、ただひとりの下男をクビにしたからで、その理由が
「ひげ剃りの湯は華氏の八十六度ときめてあったのに、八十四度のをもってくるという大罪をおかしたから」
あいたたたぁーどえらい主人に当たっちまったぜ、
とゲンナリするでしょう。フツーの召使なら。
パスパルトゥーは違った。
「おれにはうってつけだ! おれに似合いの職場だ。フォッグ氏とおれとはぴったり気持ちがあうだろう!」
歓喜しちゃうんです。
というのも、彼は「落ち着いた家庭の生活を味わいたい」と切に願っていたからです。
生粋のパリジャンでありながら、イギリスに渡って下男の仕事を選んだのは、
それまで浸かっていた放浪生活を断ち切りたかったからだ。
10軒の屋敷につとめた。
どの主人も気まぐれで、道楽者で、旅行してばかりだった。
だが、この几帳面で暮らし向きのおちついたご主人のもとで、
やっと根をおろすことができる…。
はれてフォッグ卿の召使となったのが、1872年10月2日(水)・午前11時29分。
そのフォッグ卿に世界一周の件を告げられ、
茫然自失となるのが同日・午後7時50分。
その間、約8時間20分。
パスパルトゥー、わずかな安楽の時間だった。
(注:文中の「 」内はすべて創元SF文庫「八十日間世界一周」からの引用です)
関連リンク
映画「80日間世界一周」(1957)(allcinema)
パスパルトゥー役の喜劇役者カンティンフラスは原作に近いイメージ。
Cantinflas(WIKIPEDIA)
そのカンティンフラスの詳細。チャプリンのコメントが利いてる。
映画「80days」(2004)(HERALD ONLINE)
パスパルトゥー役にジャッキー・チェン。もちろん主演。もちろんカンフー。
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