顔の大部分を占めるマスク
最近では、すっかりそれにも慣れてきて、今は「涼しいマスク探し」を楽しんでいます でもね、私がこのコロナの時代になるまで、「マスクが好きではない」という理由は、人にとってとても大切と思える「表情」が見えなくなるから、でした。
「目は口ほどにものを言う」と言われるほど、確かに目や視線、眼差し、目力等々、たくさんを表現するものです。しかし、口元は、目の何倍も表情を伝えてくれますよね、そう思われませんか?
何も言葉には出さなくとも、口角がキュッと上がるだけで「ああ、この人は喜んでくれている」とか「和んだんだな」などと感じられますからね
ところが、マスクで口も、口元も、頬の筋肉の動きも見えなくなってしまうと、本当に表情は乏しくなってしまいます・・・
・・・と、そんなことを日頃から感じていたわけですが、一昨日、近くまで出かけた帰りに、国立駅に出来た商業施設「nonowa」の中にオープンしたスターバックスに立ち寄りました
スタバなら、そんなに遠くまで行かなくても、どこにでもあるでしょ?!ということなのですが、いえいえ、違うのです この国立に6月27日に開店したスタバの、パートナーと呼ばれる働く人達の8割が聴覚に障害のある人達です。
国内では初、世界のスタバでは5番目の「サイニングストア」。ここでのコミュニケーション手段は手話か筆談。注文を聞いてくださるパートナーは、フェイスマスクをされています。残念ながら、私は手話は出来ませんので、順番が来て、カウンターの前に立った時、私は普通に笑顔で「こんにちは」のあいさつをしました(とは言っても、私はマスクをしているので、相手の方には私のこんにちは、は聞こえません)。パートナーの方は、すぐにメニューを出してくださり、「何になさいますか?」と声をかけてくださいました。
私はね、「チャイティーラテのトール。ワンショット追加をして、アイスでお願いします」と注文がしたかったのですが・・・メニューの中に「チャイティーラテ」の文字を見つけられません 私はすっかり焦ってしまいました。
メニューで見つけられなかったので、私はマスクを外し、声に出して注文をしようとしました。きっと、聾者の方々は、人の口の動きを見ることで、言葉を理解される、と聞いてことがあったので。ところが 老化なのでしょうねえ、最近はすぐにいろいろな「名前」等を、肝心な時にど忘れしてしまいます。この時もまさにそうで・・・
後ろの方を待たせては、お店にもご迷惑がかかると思い、そうなればアイスラテで良いことにしようと思い、咄嗟に後ろを振り返ったのですが、幸い、どなたも並んではいませんでした。
パートナーの方は、私の思いを理解してくださったようで、「大丈夫ですよ、ゆっくり選んでください」と言って、本当にあたたかい笑顔を向けてくださり、筆談用のボードを差し出してくれました。
私はそこに「スパイシーなお紅茶です。いつもはホットですが、今日はアイスで」と急いで書きました。すると、あらためてメニューの「紅茶」のところを指差し、「ここにありますか?」と聞いてくださいました。
おっとー、ありましたー 今ではすっかり紅茶の種類も増えたスタバでは、チャイティーラテはその数ある中の一つとなり、ラテやキャラメルマキアートのように、独立した書き方ではなくなっていたため、見つけられなかったわけです
パートナーは「わかりました 良かったー」と、また満面の笑顔。
ここのお店には、いろいろな工夫や楽しみがありました。注文したものが出来上がった時、パートナーの方からのお声がけだけではなく、レシートに書かれた番号がカウンター上に表示されるようになっていたり、その同じ壁には、次々と簡単な手話が紹介されたり・・・ 私はあとで気づいたのですが、入口の Starbucks のサインの下には、指文字の手の形もありました
開放感のあるガラスの壁で、お店の一部からは外が見えるようになっていましたが、外はあいにくの霧雨が降ったり止んだりというお天気 でもね、店内は、パートナーの方達のすばらしい笑顔があちこちで見られ、私はそんな店内の様子をあたたかい気持ちで眺めながら、「冷たいチャイティーラテ、ワンショット追加のトールサイズ!」を美味しくいただきました。
そして、スマホで「ありがとう」「ごちそうさまでした」「おいしかった」の3つの手話の動画を見つけて、頭の中で一生懸命に練習し・・・
カップを捨て、カウンターの中のさっきのパートナーの方を探しました。私の様子を感じられたのか、その方が奥から手を振ってくださいました。私はぎこちなく、何度もやりなおしながら、「ごちそうさまでした、おいしかった、ありがとう」と手話をすると、カウンターの中のパートナー全員が、何度も「ありがとう」の手話をしてくださったのです そう、全員がとってもとっても素敵な笑顔であったことはいうまでもありません。お店を出ても振り返って何度も手を振りました、みなさんがみえなくなるまで。
JRの改札を入ったら、鼻がぐしゅぐしゅ、涙がポロポロ。
一連の出来事、すべてが素敵な時間でした。でもね、人の笑顔が、あそこまで素晴らしいものだ、ということを、私はあらためて実感したのです
マスクの生活。それほど、笑顔もはっきりとは見えません。それでも、笑顔はきっと「気」となってまわりをあたたかく、和ませてくれるものであるに違いない
マスクの生活だからこそ、よけいに「笑顔」を心がけてみませんか?
本当にすばらしかった時間の余韻に浸り、帰宅した後、あらためてお店のサイトを見てみました 私は、決してスターバックスの回し者ではありません、はっはっは でもね、感動は共有したいですもの。
そのサイトの中で見つけた一文 proudly served in sign language あらためて、パートナーのあたたかい笑顔と、あの素晴らしい空間に感謝です