<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

河村たかし名古屋市長の南京事件発言を駐在員の立場から考える

2012-03-02 | 中国社会学

河村たかし名古屋市長の南京事件(南京大虐殺)に関する発言が大きく取り上げられている。

同事件に関しては、伝聞に基づくものが多く含まれているため、以前から事件そのものの存否、その規模などを疑問視する勢力が日本国内に根強く存在するのは周知の事実だ。
こうした議論が水面下でくすぶっていたとは言え、日常生活においてこれほど大々的に取り上げられたのは久しぶりのことで、改めて政治家の発言が与える影響力を感じずにはいられない。

「南京事件を肯定するのか、否定するのか」という問題は、ここでは不問としたい。
なぜなら、これは日中双方の歴史認識や政府間の理解共有に委ねられるべきものであり、筆者のような一市民が「賛成、反対」を論じたところで、根拠も曖昧だし、社会的に何の意味も持たないからだ。

ここで取り上げたいのは、「なぜこのタイミングで、名古屋市長という公職に就く人間がこのような発言をしたのか?」という点。

折りしも本年は日中国交正常化40周年という記念の年。
日本側の諸団体がこれを機に様々な催しを計画している最中だけに、今回の発言がこうした動きに完全に水をさす形になったことは否定しようがない。
特に、南京市の反応は相当強く、交流の無期限停止や今月予定されていた「南京ジャパンウィーク」の中止といった形で影響が顕在化する格好となっている。


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当地中国では「なぜあの場所ですぐに抗議しなかったのか?」と南京市側の態度をヤリ玉に挙げる論評も出てきたことで、中国政府も態度を硬化させざるを得ないという事情も背景にあるようだ。

何故これほどまでに大きく取り上げられているのか・・・?
これは日本人には理解しにくい「中国社会の仕組み」が影響していると筆者は考える。

日本において、名古屋市長は名古屋市民によって選出された地方自治体の長であって、実態として国家機関とは独立した組織の長ということになる。

しかしながら、中国は共産党一党が支配する国なので、地方政府の長はみな共産党幹部であり、大都市や省政府の長はいずれ中央政府に戻っていく高級幹部ばかり。
こうした政治風土に馴れている国民に対して、日本の事情をいくら説明したところで理解できるはずがない。
つまり、一市長の発言とは言え、日本政府も絡んだ発言ではないか・・・?と自然に思ってしまう人が少なくないのだ。

これは、日本人が容易に中国の政治システムを理解できないのとイコールの関係であるが。。。


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重要なことは、こうした個々人ではどうしようもない事情の中、それを分かった上で河村市長が南京事件について、あの場で言及したのかどうか、という点だと筆者は考える。
ご承知のとおり、名古屋市は日本を代表する大都市であり、国際的な知名度も高い。
河村市長ご本人が国会議員を務めた経験を有していることは、中国政府も当然認識している。

調べてみると、ご本人は以前から当問題に強い意識を有していたようだが、これは一政治家の活動としては許されるかも知れないが、いやしくも名古屋市長という公職に就く人間の言動としては、不適切だったと言わざるを得ないのではないか。

また、仮にご本人が強い意欲をお持ちだとしても、何もこのような言動を中国関係者の前でする必要はなく、もっと地道な活動を通じて歴史観を変えていく活動をすればよかっただけではないだろうか?

すでに前述のような影響も顕在化しているが、中国に駐在している日本人は増加の一途を辿っている。
もしこの問題がさらに大きく取り上げられ、中国在住の日本人に危害が及ぶような事態になったら、河村市長ご本人はどのように対処するつもりなのだろうか?
日本に住んでいる皆さんは「そんな大きな問題になるはずがない」とタカをくくっているかもしれないが、数年前に上海総領事館が集団抗議にさらされたのを思い出して欲しい。
海外では、何が起こっても不思議はないのである。また、公職に就く人間の発言の影響力は極めて大きいのだ。

少なく見積もっても、既に前述のような交流事業が頓挫したことで、経済的、精神的に打撃を受けた関係者が多数いることは紛れも無い事実だ。こうした皆さんには何の責任もないわけで、まずはこうした方々にお詫びすることが市長ご本人の行動の第一歩ではないだろうか?

日本人は、とかく中国をはじめとする諸外国の政治を批判したがるが、自国の政治の失点については「日本の政治はどうしようもないから仕方ない」で済ませようとする傾向が極めて強い。
このようなことは、当然ながら他国の人々には受入れられないことを、今さらながらではあるが、みんなが再認識すべきだろう。


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