「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

小暮写眞館

2010-09-21 | 
千葉ロッテマリーンズ、ようやく仙台での連敗に終止符ですね。とはいえ、クライマックスシリーズはどうなるものか? で、標題の「小暮写眞館」。いわずと知れた宮部みゆきさんの最新書き下ろし作品です。700ページにものぼる大長編ですが、宮部さんの中では軽めの現代小説に分類されますので、軽く読めます。

宮部さんの作品は基本的に好きなのですが、この作品は正直いうと「?」の評価です。「ステップファザーステップ」を読んだときにも感じたのですが、宮部さんの描く子どもとか高校生とかはあまりにもリアリティがないんですよね。「火車」「理由」や「模倣犯」などの硬派の現代モノでの人物描写とはおおきく異なり、どちらかというとファンタジー世界の登場人物のように描くので、作品にのめりこめない。しかも、この作品は心霊写真やら幽霊やらが彩るので、どうにもこうにも話しに乗り切るのが大変でした。特に主人公の弟「ぴか」や友人の「てんこ」など、ありえんでしょう。突っ込みどころが多すぎて書く気も起きません。

じゃあ、ファンタジーと割り切ればいいじゃないか、と言われそうですが、そうすると最終章は?と相成ります。実はこの小説、延々と続く長文は、この最終章での、高校生の主人公の淡い初恋物語へ収斂していくための、ながーーーい前文のようなものなのです。で、この最終章だけはけっこう読み応えがある。じんわりときました。ああ、青春というか、出会いと別れ。初恋相手の年上女性の背景が明らかになったときの、「なるほど。そういうことか」という感じ。この女性はきちんと存在している感じがするんですよね、ほかの登場人物と違って。宮部さんは子どもを描くより、やはり大人を描くほうがきっちりとしている気がします。もしくは、荒唐無稽が最初から読者に織り込み済みの時代小説やファンタジーですよね。

あ、表紙と裏表紙の美しい写真は、ちゃんと本文と連動しています。これ以上はネタバレになるので書かないですけれど。まあ、とにかく長かったあ。

最新の画像もっと見る