じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

『新訳 星の王子さま』倉橋由美子訳

2005-08-25 19:33:39 | 本棚
※まだ草稿段階ですが、一刻も早くこの本を、手に取っていただきたくて※

この『新訳 星の王子さま』は、

…原書の雰囲気を余すところなく発揮している訳であり
大変読みやすい文章でありながら、
非常に味わい深い仕上がりになっていることを、

まず初めに、お伝えしておきたく存じます。

”大人のための本”として書かれている「原著」に
非常に忠実に訳されている、一冊です。


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『星の王子さま』は、日本では、童話ないし子供向けの書物として
扱われてきた感じがある。
優しく美しい、善意に溢れた、御伽噺のような、
内藤さんの訳。

それはそれで悪くはないのだ。
あの時代なら、この訳しか出なかっただろう。
アンデルセンの物語が全て、原書のどきつさを抜かれて
日本に紹介されているように。


でも、それでも私は、物足りなかった。
何かがオブラートに包まれてしまっているような、違和感。
子供向けに書き直されてしまった、「さみしさ」
…そんなものを、子供時代に読んだとき感じた覚えがある。

「もっとはっきり書いてくれてもいいのに。
  子供は童話だけを求めているんじゃない」

同じ時期に読んだ、「夜間飛行」の方がよっぽどいい。
そう思っていた。ずっと。


大学に入ってから、第二外国語として仏語を選んだ。
仏語でトライしたい作品があったからだ。
それらを読むために、「内容がわかりやすいから
、辞書を引きながらなら読めるだろう」
と踏んで借りた、原著。


子供時代に感じたのとは全然違う世界が、
そこには広がっていた。
子供のこころだけを持った自分との決別。それがテーマ。
なんて素敵な本なんだ、と改めて見直した。



今回、倉橋由美子訳が出て、早速入手した。

彼女自身の幅広い知性と、半端じゃない文学的知識という裏地が
『星の王子さま』のために惜しみなく発揮されており、
(そして仏語を日本語へ訳する能力の高さもだ)

原著に忠実な(文化的背景までも含めた意味で)一冊となっている。

最後に、倉橋自身による後書きから、一言だけ。

『王子さまと、彼の星に咲く一輪の薔薇の関係は、
 実は現実の、"男と女の関係”そのものである』

新訳 星の王子さま

宝島社

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