土曜の事件の時、伯父への電話を切ったところで、
ばあたんがもそもそ起きて来た。
ほどなく私をつかまえる。
「今の電話、わたし、寝たふりをして聞いていましたよ」
「わたし、そんなに悪いこと、したかしら」
「たまちゃんを困らせようと思って、しているのではないのよ」
「どうして、怒るの?」
しまった、と思った。
「ばあたん。ごめん。ばあたん」
「ばあたんは何も、悪いことなんてしていないよ」
「たまちゃんにだって、いつでも、よくしてくれてるよ」
「よその人の話なの、心配しなくていいのよ」
ずっとずっと、抱きしめて、声かけを続けた。
ばあたんは、私が帰れないよう、ぎゅっと腕を握る。
(あるいは祖父の書斎にいかないように、かもしれない)
変な話で恐縮なのだが、
わたしが用を足す時でさえ、左手はばあたんに掴まれたまま。
不意に、「夫婦の妙」を感じた。
夫のフォローをしなければ。そう、無意識に思って、多分
ばあたんは起き上がってきたのだ。
そして一生懸命になって私に、詫びるのだ。
意固地になっている夫のかわりに…。
結婚63年の夫婦の連携プレイなのかもしれないな。
なんとなく、そう思った。
「おばあちゃん、たまちゃんのことが好きよ。
もし、たまちゃんがいなくなってしまったら、
私、生きていけないわ…」
べそをかく、ばあたん。
再び床に就き、寝息を立てるまでの3時間、
ずっと抱きしめてそばにいた。
いつものように、たくさん頬ずりをして、寝かせた。
それでも。
本当を言うと、誰でも良いのかもしれない。
ばあたんは、今、もう既に、
親しみを感じた女性は誰でも、
「たまちゃん」と呼ぶようになってしまっている。
特にヘルパーさんで、気に入りの人だと、私と全然区別が出来ない。
それでも、こんなときだけ、
「わたし」を「たまちゃん」と認識できるのは、何故なんだろう。
なんかそんな生温いものが原因ではないのは、確かなようだ。
ばあたんがもそもそ起きて来た。
ほどなく私をつかまえる。
「今の電話、わたし、寝たふりをして聞いていましたよ」
「わたし、そんなに悪いこと、したかしら」
「たまちゃんを困らせようと思って、しているのではないのよ」
「どうして、怒るの?」
しまった、と思った。
「ばあたん。ごめん。ばあたん」
「ばあたんは何も、悪いことなんてしていないよ」
「たまちゃんにだって、いつでも、よくしてくれてるよ」
「よその人の話なの、心配しなくていいのよ」
ずっとずっと、抱きしめて、声かけを続けた。
ばあたんは、私が帰れないよう、ぎゅっと腕を握る。
(あるいは祖父の書斎にいかないように、かもしれない)
変な話で恐縮なのだが、
わたしが用を足す時でさえ、左手はばあたんに掴まれたまま。
不意に、「夫婦の妙」を感じた。
夫のフォローをしなければ。そう、無意識に思って、多分
ばあたんは起き上がってきたのだ。
そして一生懸命になって私に、詫びるのだ。
意固地になっている夫のかわりに…。
結婚63年の夫婦の連携プレイなのかもしれないな。
なんとなく、そう思った。
「おばあちゃん、たまちゃんのことが好きよ。
もし、たまちゃんがいなくなってしまったら、
私、生きていけないわ…」
べそをかく、ばあたん。
再び床に就き、寝息を立てるまでの3時間、
ずっと抱きしめてそばにいた。
いつものように、たくさん頬ずりをして、寝かせた。
それでも。
本当を言うと、誰でも良いのかもしれない。
ばあたんは、今、もう既に、
親しみを感じた女性は誰でも、
「たまちゃん」と呼ぶようになってしまっている。
特にヘルパーさんで、気に入りの人だと、私と全然区別が出来ない。
それでも、こんなときだけ、
「わたし」を「たまちゃん」と認識できるのは、何故なんだろう。
なんかそんな生温いものが原因ではないのは、確かなようだ。