じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

大好きな、叔母のこと

2005-08-04 14:18:05 | 介護の周辺
「たまちゃん、好きなだけ食べていいのよ
 …お乳を飲むのが下手な子供みたいよ、あんた。
 大丈夫よ。好きなだけ、欲しいといって」
いつも、そういって、笑っていてくれた叔母。

週に一回、彼女が通っていてくれた頃、よくそういっては
美味しいお菓子を二人で食べたものでした。

今、彼女は病の床に伏しています。
更年期障害によるうつ病が長引いています。


彼女と先ほど、電話しました。

「たまちゃんに、兄に、うらまれていると思うとつらい。
 でも、わたし、多分餓死するから赦してね。
 たまちゃん、うれしいでしょう?
 恨みが晴れるのですもの」

明らかに、うつ病でよく見られる(他の精神疾患の可能性も否定しないけれど)
訂正がきかない「認知のゆがみ」がみられます。


言葉だけを見てしまうと、怒るべき内容だけれど
違うのです。これは、病気のなせるわざで…
自分を責めているから、こんな言葉が出るのです。


だから、叔母のその言葉では全然動じはしないけれど、

ただ、ひたすら
「自分を責める、分厚い水の塊の中に詰め込まれて
その中で苦しんでいる」彼女を思うと、
胸が痛くて、辛いです。

ゆっくりでいい。介護に戻ってこれなくたっていい。
とにかく、養生して、よくなって欲しい。


だって彼女は

親の言うことを厳守して心を閉ざしていた、
怯えた7歳の子供だった、わたしに、

「大丈夫よ、好きなだけ食べていいのよ」

と、クリームソーダを、笑顔で与えてくれた人なのです。
幼少期に、鮮やかに残る、ハイライトのような思い出をくれた、
そんな人なのです。

どうか、彼女の苦しみが、彼女のペースで、
取り除かれていきますように…