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命のカウントダウン(健康余命3605日)

トレッキング、カメラ、陶芸、スキー、釣り、カヌー、遊びなら何でも大好き。仕事も好き、時間がない!

ホスピスは施設ではなくて思想です

2022-03-02 22:25:22 | 在宅医療
私は、普通の日常生活が大切なのだと思っています。
その日常生活を守るために訪問診療を行っています。
入院すると、日常生活が破壊されますから。

短期で済めば、入院生活も大きな問題ではありませんが、長期になると、入院生活は日常生活とはなじみが悪くて・・・色々と問題が生じてきます。
要するに、入院生活と言うのは獄中生活と同じなのです。
入院すると入院歴が付きます。
入獄すると前科が付きます。
そのほか、大した違は無いと私は思っています。

病状の安定した慢性疾患では、鍵のかからない入院生活よりも、自宅(借り家でもアパートでも自分のテリトリーなら自宅です)で過ごされる方が病態は安定することが多いです。特にがんの末期などは・・・・

がんの末期には「ホスピスへの入所」がベストだと思われている方が多いですが・・・・施設ホスピスよりも、自宅でのホスピス療養がベストである事の方が余程多いです。

ホスピスとは、施設の事ではありません。ソフト、思想なんです。

ホスピスとは、死が迫っている患者とその家族の苦痛を最小限にすることを主な目的とするケアのプログラムであり、またその概念を意味します。 米国では、ホスピスは、居住場所で重病患者を支援するために広く利用されている唯一の総合的プログラムです。 ホスピスプログラムは症状の軽減を優先し、診断検査や延命治療をほとんど行いません。

患者さんとそのご家族のご要望を最大限に取り入れる事が苦痛の最小化につながると思い、その実現を目指していくのがホスピス活動です。決してホスピスと言う名の施設に閉じ込める事が目的ではありません。誤解なきようお願いいたします。



何故、良医の命が無残にも奪われてしまうのか?

2022-01-28 23:22:25 | 在宅医療
ふじみ野市での医師人質立てこもり事件は最悪の結末を迎えてしまいました。
弔問に訪れた医師らがトラブルに舞いこまれて人質になった と聞いた時、私は在宅医療がらみだなと直感しました。そして、巻き込まれた先生は、とても良い先生のだろうとも感じました。と、同時に悪い予感もありました。

在宅医療がらみだろうと感じたのは、皆様も感じられているかもしれませんが、普通はの場合、たとえ主治医だったとしても、弔問になど行きません。病院の勤務医の場合、99.9% 行きません。患者さんとの距離が、そこまで近くないですから。
一般的な開業医の場合でも99%行かないでしょう。
それが在宅医師の場合は、結構行かれる方も多いと思います。私の様に基本行かない人もいますが、基本行く方もおられるので、全体では30%くらいでしょうか。行く時期はまちまちですけれでもね。
言い換えれば、病院の担当医と患者の距離が1㎞だとしたら、開業医と患者の距離は100m位、そして、在宅医と患者の距離は1m程度です。患者さんの生活の場、ご自宅に訪問していくのですから。精神科医も、心の中に入っていくので、先生にもよるとは思いますが、患者さんに寄り添われる先生と患者の距離は、通常よりも相当に近いと感じます。

それでも、普通は弔問には行かないのが多数派だと思います。ご家族が来院され残金を支払いに来られたり、風邪をひいて診察に来られたりして、その時に挨拶を交わすくらいの距離であることが普通だと思います。

私も25年以上在宅医療にかかわって来ていますが、先ほども言ったように弔問には基本的には行きません。診療体系上、弔問は設定されていないので、報酬がありません。報酬が無いという事は、「あんた、何をしに来たの?」と勘ぐられる可能性もあるという事です。
弔問に行くというのは、余程、患者さんとの距離が近い良医ではないのかなと、私は感じたのです。
私の直感は結構当たるのですが、どうもこれも当たっていた様です。そして、事件に対する悪い予感も当たってしまいました。

 極めつけの良医が惨殺される事件が連発してしまいました。多分ですが、お二人とも高飛車につっけんどんに患者さんを見下すような態度でおられたら、絶対に惨殺されることは無かったと思われます。何という理不尽。

 どうすれば、患者さんとの距離が近い極めつけの良医を殺人事件から遠ざける事が出来るのか、私は全く良案を見いだせないでいます。

 私の身近にも、患者さんとの距離が近いであろう良医が何人もいます。彼らは根っから患者さんの為になることに喜びを感じておられますので、私が遊びに誘っても、なかなか乗って来ません。遊びよりも仕事の方が楽しいのでしょうねえ。でも、そんな先生がターゲットになるのですよ!!
K×4先生、M先生、F先生はじめ、まじめな在宅医の先生方、私とブリ釣りにでも行きましょうや!!

訪問診療の必帯道具が、聴診器、血圧計、パルスオキシメーターと防弾チョッキんなんて、ほんと、冗談じゃないです!!
もっと遊びましょう。遊んで患者さんとの距離を少し保ちましょう。

やさぐれたジジイ在宅医からの提案でございました。


それにしてもです。思った通り、今回、無念にも殺されてしまった鈴木純一医師は、とても思いやりのある、良い先生だったようですね。
そして、昨年末に大阪で放火殺人にあった西澤医師も本当に思いやり厚い良医であったそうです。
どうして、良医ばかりが殺されるのか?
それは、良医と患者の距離が、一般的な医師と患者の距離よりも近いからです。

在宅医師 殺される

2022-01-28 14:28:39 | 在宅医療
 27日午後9時頃、埼玉県ふじみ野市大井武蔵野の民家で、住人の男が猟銃のようなものを発砲し、訪ねてきた医師鈴木純一さん(44)を人質にとって立てこもった。県警は28日午前8時頃、現場の民家に警察官を突入させ、殺人未遂容疑で緊急逮捕した。鈴木医師は胸の付近に銃で撃たれた痕があり、心肺停止状態で救急搬送され、その後、死亡が確認された。鈴木医師に同行していた男性2人も負傷した。  捜査関係者などによると、逮捕されたのは渡辺宏容疑者(66)。
 鈴木医師ら3人は在宅診療を行う医療法人に所属しており、渡辺容疑者の母親の診察を担当していた。母親が亡くなり、3人は弔問していた。その際、トラブルになったとみられる。男性理学療法士(41)は胸部を撃たれて病院に搬送され、もう一人の男性(32)は顔面に催涙スプレーをかけられ、東入間署に避難した。

という事件なのですが、どうやら3人は、犯人に呼び出されたようですね。そして、犯人は、猟銃と催涙スプレーを用意して待ち構えていた。弔問した側は、男3人だから、何とかなるだろうと思われていたのでしょうが、相手は其の上手・・・用意周到ですね。用意周到と言えば、 12月17日午前、大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階の心療内科・精神科の医療機関「西梅田こころとからだのクリニック」で起きた放火事件が思い起こされます。この事件でも谷本盛雄容疑者 は事前に下見をし、防火施設を働かなくなるように試みたり、類似犯の「成功例」を調べたりしていました。犯人は、どちらも60代独身男性です。
そして、殺されたのが40代男性医師であると言うのも共通ですね。
この度犠牲になられた鈴木純一先生も、HPからうかがい知れるのは24時間対応の真摯に在宅医療に取り組まれる姿です。
真面目で一途な医者が、真面目さゆえに上手く断ることが出来ず、モンスター患者やモンスター患者家族の犠牲になられるのはあまりにも非道でありむごいです。今後も詳細な報道が待たれますが・・・・上手な対処方法があったら教えていただきたいものです。

辛い症例

2021-11-20 21:14:44 | 在宅医療
胸部のレントゲン写真
分かる人にしか分からないかもしれませんが、誰にもわかっていただけるように説明したいと思っています。
これ、同じ方の胸部レントゲン写真です。1年以内の写真なのです。
下の方に行くに従い、それまでになかった白っぽい所が増えているのが分かりますよね。
それが、悪性腫瘍部分なのです。この方の場合、原発部位は他にあるので、転移性肺腫瘍って奴です。
一番下の写真が、今から10日くらい前の写真ですから、現在ではもっと白い部分が増えていると思われます。

肺は、黒く見える部分で呼吸をしていますので、白い部分が増えて、黒い部分が減ると、呼吸が苦しくなります。

だから、この写真の方は、相当に呼吸がしんどい状態なのです。

今できる限りの治療をされてこの結果です。

もう、何も出来ないと宣告されてしまいました。それで、家に帰られて、私が在宅での医療を受け持つことになりました。

ヒトは誰も必ず死を迎えます。ですから、この写真の方が90代なら、私は辛く感じません。冷たいけれど、そんな時が来たのですよと、言ってしまいます。

ですが、この写真の被写体の方は・・・・まだ10代半ばなのです。
ご本人は勿論ですが、ご両親も、周囲の医療関係者も・・・・誰もが辛くてたまりません。

何とかならないのかと思うのですが、何ともならないのが現実です。

私は、逃げ出したいですが、状況はそれを許してくれません。
自分にできる事を成し遂げていくしかないのが辛いです。
ご本人の辛さが伝わって来ます。
在宅酸素療法を開始しました。咳止めを処方しました
でも・・・無力です  何も出来ません。

ALS患者さんの急性呼吸不全 その1

2021-09-10 23:39:14 | 在宅医療
7年以上、ご自宅で療養中のALS患者さん。

この7年間、食事を摂られたことは一度もありません。それどころか、自分で呼吸された事すらありません。

栄養は中心静脈栄養
TPN(Total Parenteral Nutritionトータル パレンテラル ニュートリション)
という方法で、心臓近くにまで挿入されたカテーテルから濃い栄養液が24時間継続的に点滴されています。

呼吸は、気管切開を拒否されたので、鼻マスク、またはフェイスマスクを通じて侵襲的陽圧換気療法NPPV(Non invasive Positive Pressure Ventilation)という方法で人工呼吸を24時間継続されています
意識は・・・・ご家族は、眼周囲の動きで、明確に感じると言われるのですが・・・・私にはほぼほぼ99%感じることが出来ません。1%はご家族の言われる事を聞いたら、そうなのかなと思う時があるからです。

全くの寝たきりで、自分で寝返りを打つことも不能、自発呼吸ゼロ、食事も排泄も自力ではゼロの状態が何年も何年も続いています。
それでなのに、全身状態が長期安定しているのは、ご家族の献身的な介護、訪問看護の医療・介護が適切になされているからだと思います。

皆さまの予想とは真逆なことに、CVカテーテルの入れ替えなどの必要があって入院されると、状態が明確に悪化します!!!自宅では安定している病態が、入院すると悪化します。これは、病院関係者も認めざるを得ないので、認めていただいていると思っています。(入院されても、結局、ご家族が排痰などをされていました)

ご家族を中心とした、ご本人に対するスペシャルな介護体制が在宅医療介護の中で完成させられているからだと思います。

私は毎週月曜日に訪問診療しているのですが、今週の月曜(9月6日)は全く安定しておられました。全身から感じる雰囲気、バイタルサイン、血液検査データろれも全く問題ありませんでした。血液ガス検査(坂根医院は、在宅患者さんの血液ガスをその場で検査しております。相当にマニアックです!)も全く問題ありませんでした。動脈血液中の炭酸ガス濃度:42mmHgと上手く換気できていました。

それが、9日夕になって「酸素飽和度が急に上がらなくなりました」という電話をいただきました。酸素濃縮装置、5L/minまで使える機材を2台設置(10l/minまで可能)してもらっているのですが、6L/minまで上げてもSpO2:90%までしか上昇しませんとの事でした。

可及的速やかに往診しました。呼吸音を聞いてみると、両肺共に著明に呼吸音が減弱しています。すなわち、呼吸する音がほとんど聞こえませんでした。人工呼吸器はきちんと酸素化された空気を送り出しています。
動脈血液ガス採取すると、PaO2:73mmHg (SpO2:87%)、PaCO2は95.6mmHg と、換気が出来ていない状態。そしてPH:7.117と、とんでもないアシドーシスでした。

何が起こっているのか理解が出来ませんでした。分かるのは、上気道レベルでの気道閉塞があるのだろうという推測と低酸素血症、高炭酸ガス血症とそれに伴う著明なアシドーシスです。何が起こったと思われますか?

答えは分からないのですが、分からないまま、現在も在宅のままご健在です。
今後入院されないと思うので、急性呼吸不全の原因は分からないままだと思っています。

現在の治療は、ステロイド(デカドロン9.9㎎を2日連続で静脈注射しました)それと、抗生物質(セフトリアキソン2g+生食20mlを2日連続静脈注射)追加したほかは、以前の治療と変えていません。

呼吸に関しては、ご家族が独特な方法で補助されておりますが、それは次回以降で報告させていただきます。

とりあえず、今日のところは第一報です。
疑問やご意見、ご指導などございましたら、是非お知らせください。
色々な方面のご意見やご指導を得たいと思っております。