茶の葉の声に耳を澄まして    Tea-literacy

数千年にわたる茶と人とのかかわりに思いを馳せ、今、目の前にある茶の声に耳を傾ける
お茶にできること、お茶の可能性とは

トーアン族の創世詩

2009年12月31日 | Weblog
「茶友の会」発行の『新芽 第6号』に
トーアン族の創世詩が紹介されていました。
遠い時間の向こうから
ビョーと風の音が聞こえてくるようです。
どきどきしました。
冒頭の部分を紹介します。
続きは『新芽』をご覧下さるか、
孔先生によるお話しを聞きにいらしてください。
1月11日2時より茶泉です。

『ダグダガゴライビョー』

友よ、兄弟よ
この歌を聴いておくれ
ご飯のときは田植えの辛さを忘れるな
水を飲むときは水源探しの苦労を覚れ
口弦を弾くときは竹を植えた先輩を思い出せ
蘆笙を吹くときは瓢箪を作った両親に感謝せよ
トーアン族の創世の歌は山岳と共に生まれ
トーアン族の歴史は緩やかな大河のようだ
友よ、しっかり聞き取るがいい
兄弟よ、私の歌に耳を澄ませ
一言も聞き落とすことなく
心の奥までしまっておけ

昔々、その昔
混沌たる大地が延々と続き
果てしなくうねる泥海に
道と川がなく
魚介と昆虫がなく
虎がいなければ、鹿もいなく
花と草と木々も生えていなく
雷がごろごろ、強風がびゅうびゅう
荒れ果てた地上には人間の影すらもなかった

昔々、その昔
きらびやかな天上に
あまねく茂りわたる茶の木があり
みどり滴る茶葉が翡翠のように
鬱葱と茶樹を優しく抱きかかえながら
脈々と万物の命を伝えてきた
宇宙を漫遊する小舟よ
茶の魂を乗せて
月日と満点の星と化して
生きとし生けるものを生み出した

・・・・・・・つづく・・・

雲南省のトーアン族は
自分たちの祖先が茶の木であると考えている民族です。
彼らの詩に耳を澄まして
この1年に感謝を捧げたいと思います。
皆様、お付き合い下さりありがとうございました。
来年もまた、どうぞよろしくお願いいたします。

画像は中国昆明風情国際旅行(集団)有権会社より

信(よしみ)

2009年12月27日 | Weblog
NHK「日本と朝鮮半島2000年」第9回は「朝鮮通信使」。
通信とは、
「信(よしみ)を通わす」ということでした。
日本語の「信」には「よしみ」という読みはありませんが、
ウィキにも同様に記されてありました。
「よしみ」は「誼」=親しみ=義。

江戸の頃の朝鮮通信使は、
日本に連れ去られた捕虜を連れ帰るのが目的でしたが、
「義と誠意のある想いを伝える」姿勢で、
日本を旅しながら文化の伝道に貢献したそうです。
朝鮮の儒学・医学・絵画・歴史・武芸・音楽は、
文人のみならず一般市民にも受け入れられ、
使節は手厚くもて成されるようになります。

NHKではこの使節を、
今の韓流ブームと結びつけ、
ヨン様まで登場させました。
何かのきっかけでその国を好きになる人が増えて、
平和につながるのならこんな素晴らしいことはありません。
ヨン様の肩には重いものがどっさりで、
すごく心配ですが、
ムスリムの美しい女性スターが
アメリカのおじさま方の心を捉えるとか、
世界中の小さな小さな昔話が読み継がれるようになって、
世界は理解と忍耐と勇気と夢に満ちあふれるとか、
そういう「通信」は
いいですね。

昨日の韓国文化院での対談も、
全龍福(チョン・ヨンボク)氏と姜基洪(カン・ギホン)院長は、
韓服(ハンボク)を着てお客様の目を楽しませてくれました。
かっこよかったです。
笑いをとるのもお上手で、
なにより始終品が良く美しく、
会場のカジョクの皆様との一座建立に
全神経を通わせているようでした。
漆の話を聞いているわけですが、
なんとなく韓国が好きになります。

茶筅も畳も漆も
中国・韓国にお世話になっています。
茶文化は、日中韓の文化です。
お隣のよしみ、仲良くしましょう。

2009年12月26日 | Weblog
「英語で磁器をchaina、漆器をjapan というように、
 漆は日本を代表する特産物と思われますが、
 平成20年度の国内消費量の98%は
 主に中国からの輸入によるものです。」
全(チョン)先生の冒頭のお言葉です。

全氏は今、岩手二戸市で漆芸の活動をされていますが、
国内の漆1586kgの70%がここ岩手で生産されているのだそうです。
現在、漆の樹液を採る掻き手は岩手でも10人たらず、
2位の茨城では2人というのが現状。
後継者不足は深刻な問題です。

100円ショップに漆器もどきなお椀が並ぶようになり、
本物の漆器は高いし、
食器洗浄機や乾燥機に使えなくて扱いにくいからと、
本物の漆の需要が減っています。
赤と黒の漆器は人気はあるけれど
本物でなくて良いというわけなのです。
でも、漆には見た目の美しさ以外に
素晴らし効能があります。
水を浄化したり、体内の毒を消したり、
最近では電磁波を吸収することもわかってきました。

こうした効能や美しさから、
長きにわたって育てられてきた漆の文化。
漆の語源は「麗し」または「潤し」。
樹木なのに木偏でなくてさんずいです。
木を見て木を知り木を利用してきた歴史には
人の智恵を感じます。

北海道の遺跡からは、
実に9000年前の漆器が出土しています。
縄文時代には朱塗りだけだったものが、
弥生時代には黒が登場。
朱は精製したものに辰砂で色づけし、
黒は生成の過程で鉄を加えます。
懐石のお椀をそれまでの朱から黒に変えたのは
利休さんでしたが、
漆黒は弥生人の発見だったのですね。


『茶の湯と易と陰陽五行』その2

2009年12月25日 | Weblog
茶湯手帳のカレンダーの歴注などは
何のためにあるのか
どう使うのか
そんな疑問から
歴注をおさらいし
易をおさらいしていますが、
茶道の点前には、
この易がわかると
その手続きの意味がクリアになる、
そんな部分が多くあります。

たとえば10月の「中置」。
通常5月から10月までは
勝手寄りに風炉を据えますが
10月は道具畳の中心に風炉を置きます。
その理由は、
秋が深まり肌寒くなってきた季節、
炉への移行を前に
火を少しお客様の方に近づけて
暖かさを寄せるためと
一般的には説明されています。

でも、
ここにも易の考えが根底にあります。
純陰の10月から
一陽来復と成る11月へ向かう「土用」を
中置は表しているのです。
五行棚という大きめの棚を中央に据え
そこに風炉を納めるので、
通常は水指を据えるものとして認識している棚の中に
木火土金水が現れるのです。

半板の寸法の天板と
炉の寸法の地板の間には
節のある竹が3本ありますが
客付きに二節の竹
勝手付きに三節の竹
奥に一節の竹ときまっていて
これは
客は陰であるから陰の数である偶数
主は陽であるから陽の数である奇数の節
というように
『易経』にあるルールが適用されているのです。

ややこしい・・・
何でそんな昔の意味もないルールを細々と・・・
と思ってしまえば
茶の湯は暇人のお遊びのようですが、
ただ一服の茶を点てるのに
古代の人の宇宙観や人生観に想いを馳せる、
そんな仕掛けがさりげなく込められているなんて
四畳半に銀河が広がるようではありませんか。
    


十二直(じゅうにちょく)

2009年12月24日 | Weblog
歴注の中でメジャーなものに
六曜、七曜のほかに
十二直という日々の占いがあります。
北斗七星に注目したもので、
日本最古の暦、具注暦にも記載されています。

北斗七星の柄杓の柄の部分の三つの星を
斗柄(とへい)と呼びますが、
古代中国では、
これが北極星を中心に
一日一回転することを利用して、
その回転を十二等分して、
子(ね)を真北に置く十二支の図に合わせ
時刻・日・季節を判別したといいます。

冬至の頃には
斗柄が真北(子)に向かうので、
この月(旧暦11月)を子を建(おざ)す月として建とし、
以後、(旧暦12月)を丑を建す月で除
   (旧暦 1月)を寅を建す月で満
   (旧暦 2月)を卯を建す月で平
   (旧暦 3月)を辰を建す月で定
   (旧暦 4月)を巳を建す月で執
   (旧暦 5月)を午を建す月で破
   (旧暦 6月)を羊を建す月で危
   (旧暦 7月)を申を建す月で成
   (旧暦 8月)を酉を建す月で納
   (旧暦 9月)を戌を建す月で開
   (旧暦10月)を亥を建す月で閉
といった吉凶の解釈がつくことになります。

古代の人々は
北斗七星と北極星に神秘を感じ、
なにかメッセージを受け取ろうとして
天を仰いできたのでしょう。

竹で作った柄杓は
まさに北斗七星。
一服のお茶を点てる動作が
希有壮大なものに思えてきました!


七曜日

2009年12月23日 | Weblog
「consider」という英語は
「熟考する」という意味ですが
その語源は
ラテン語のconsiderareで
「星をよく観察する」。
占星術者は人の誕生の際に
星(sider)をよく観察して
その人の未来を占ったといいます。

また、disaster(災害・禍い)も
dis + astrum (ラテン語で星)、
つまり、「悪い星」とか
「星から離れる」いう意味。
さらにさらに、
「インフルエンザ(influenza)」という言葉は
英語の「influence(影響)」に対応するイタリア語ですが、
この言葉が流行性感冒を意味するのは、
流行り病は星によって引き起こされる
と考えた時代の名残り。
「流れ込む」というラテン語の「influentia」が語源で
星の影響が流れ込んで人に影響を与える
という解釈だそうです。

このように古代バビロニアの天体観測が
ヨーロッパから東へ伝わり
インドで生まれ中国で『宿曜経』となって、
その二十八星の数え方を
空海がお茶と共に日本に持ち帰った(806年)
と伝えられています。
平安初頭に朝廷が発行した歴には
ちゃんと「曜日」の記載があり、
「占いに使われていた」のだそうです。

今、私たちは、
七つにたたまれたカレンダーに慣れていて、
(明治時代のグレゴリオ暦導入時より)
17日ねという代わりに次の木曜日ね
なんて便利に使っていますが、
そもそもそれは
吉凶を元にたたんであるのでした。

日曜日:虚、昴、星、房
月曜日:危、蓽、張、心
火曜日:室、觜、翼、尾
水曜日:壁、参、軫、箕
木曜日:奎、井、角、斗
金曜日:婁、鬼、亢、牛
土曜日:胃、柳、氐、女

たとえば土曜日の「女」は水瓶座の星で、
「武器を造り、髪をすく他は一切凶」
と書いてあります。 (『こよみ読み解き事典』)
こ、こりゃたいへ~ん。

アナレンマ

2009年12月22日 | Weblog
今日は冬至です
これから陽が増していきます
太陽は1年を通じて
8の字を描いているのだそうです
画像は「惑星テラ見聞録」さんから
拝借いたしました
1年間、毎日、同時刻に
太陽の位置を記録すると
このような8の字があらわれて
それを
アナレンマ(analemma)というそうです
今日の太陽は
8の字の下辺に位置しています
他にも素敵な太陽の画像が
たくさんありました

部屋に入る日をおいかけても
この8の字はわかるそうです。
一年中毎日同じ時間に
何か固定された物の影を点で追っていけば
この8の字が描かれるのです。
何気なくこの8の字を発見したら
ちょっとときめいてしまいますね。

利休さんは
陽の動きを意識して
茶室の床を北に向けました。
茶事を通して、
一日の光のうつろいが
四畳半に居ながら感じられるように、
初座は陰であるように、そして、
後座の席入りをした時には
日がさして陽が際立つように。

山居とは
こういうことでしょうか。
時計ない時代の人は
私たちよりよっぽど天を意識していたでしょうが、
もっとかかわりを感じようとか、
もっと「ここ」を鳥瞰しようとか、
そんな「彼方」と通じる仕掛けも込められていたかもです。
仏教もキリスト教も、
そして道教も
茶室の中にはあるのかもしれません。

『茶の湯と易と陰陽五行』

2009年12月21日 | Weblog
利休という名の由来について、
「名利ともに休す」や
「老古錐の境涯」をもって解釈されている
ということなどを以前記しました。

今日は図書館で、
わー
と声を出して叫びたくなるもう一つの説に
出会ってしまいました。
「利休」という名称を
易の視点から解釈してみるというものです。

利休という号の選定者については
古渓和尚であろうというのが
一般的なようですが、
当時の禅僧は
易学の素養が大変高く、
千宗易につける名を考える際に、
和尚様が易の視点を取り入れたということは
十分考えられるということです。

『易経』を調べるに、
「元(おお)いに亮(とお)る。
 利(ただ)しきに貞(よ)し」とか、
「休(めでた)く復(かえ)る。吉」といった
表現があり、
そこからいろいろ易的に辿るならば
「利休」→「和美」→「わび」となる
と本書には記されてあります。

易って
なんだかなーという気持ちに
少しなってきていたところでしたが、
なんか
宇宙規模で遊んでいる和尚さん・・・。
遙かな時空の中で、
茶室という空間が、
市中の山居というより
宇宙の寓居、
そんな気さえしてきました。


昨日、
ブログ連続500夜おめでとう!
というメールをいただきました。
今かたわらで息子が「ドラゴンクエスト」をやっていますが、
なんだか
この500夜も
「冒険の書」だと感じました。
いつも何かに出会って疑問が生まれて
さらに求めていると、
茶ラララッチャチャラ~
Minakoはレベルが上がった!
知識の実を手に入れた!
という感じです。

これも星のいたづらかなあ?

六曜

2009年12月18日 | Weblog
六曜というのは、
大方のカレンダーや手帳に載っている
先勝・友引・先負・
仏滅・大安・赤口の六つの星のことです。

私の育った社中では
お茶会の日取りを決めるのに
大安を選んだり仏滅を避けるということを
気にしたことがありませんでした。
「みんなが都合の良い日曜日」
これだけが決め手でしたから
その日は仏滅であったかもしれません。
お客様の中には
あらあらと思われた方もいらしたのでしょうか。

『現代こよみ読み解き事典』で
六曜を調べてみました。
先勝:せんかち(せんしょう、さきかち)
  先んずれば勝つ。急ぐこと吉。午前は吉で午後は悪し。
友引:ともびき(ゆういん)
  凶事に友を引く。葬式は慎むべし.朝晩は吉で正午は凶。
先負:せんまけ(せんぶ、せんぷ、さきまけ)
  先んずれば負ける。平成であるべし。勝負事は避けるべし。
仏滅:ぶつめつ
  すべてが虚しい物滅の日。
  釈迦も滅亡するような最凶の日。仏様の命日とは関係ない。
大安:たいあん(だいあん)
  万事において成功せざることなき泰安日。
赤口:しゃっく(じゃっく、じゃっこう、しゃっこう、せきぐち)
  火や血を連想させる要注意日。祝い事には大凶。

以上のような意味を持つことになっていますが、
実は根拠がありません。
中国の六壬時課(りくじんじか)という時刻の占いが
鎌倉時代に伝わったものの、
名称・順序・解釈が日本独自に変容し、
日本では日を占うものとなりました。
暦にきちんと記載されたことは無かったのです。

それが、
明治になって太陽暦が実施され
六曜が禁止されると、
逆に急に流行し始めたそうです。
六曜は今でも旧暦に添って巡っていますから、
庶民の官暦に対するささやかな抵抗
とも考えられるとありました。

つまり、
六曜は迷信の最たるものなわけですが、
それでも大いに市民権を得ています。
とっても不思議で面白いです。
やはり仏滅にお茶会はダメでしょうか。

茶湯手帳

2009年12月17日 | Weblog
今年は淡交社さんの茶道手帳を
使っていましたが、
来年のものは、
京都の宮帯出版社さんの
茶湯手帳にしてみました。
厚くて空白部分がほとんどなく、
1㎝の厚さの半分は資料です。
茶の湯を嗜む者が、
えーとー
と思ったときに必要なデータが
載っているわけですが、
パラパラと見ても
あまり利用しそうにない気がしたので、
よし!
電車の中ででも目を慣らそうと、
向学心を奮い起こして購入に踏み切りました。


各月には月の異名や茶花、
各日には六曜、干支、九星、旧暦や
二十四節気、歴注、雑節、月の朔望、
そして茶湯関連行事や記念日があります。

資料の方は、
今年の干支の説明、前回の干支(60年前)の出来事、
暦解説、勅題一覧。
1214年栄西禅師の『喫茶養生記』から始まる茶湯史略年表、
珠光から始まる茶湯道統略系図、家元系譜(86家)、
茶人花押一覧(500種以上)、
千家十職系譜、同歴代落款(250種以上)、
釜師系譜、古筆鑑定家系譜、香道家元系譜、
人間国宝一覧、
大徳寺さんの地図、住職、住持一覧(525人)、住持花押、
萬福寺歴代住持一覧、
主要禅寺歴代館長一覧、
表・裏千家歴代参禅僧一覧、
茶湯関係美術館博物館一覧、
年忌表、忌服日数、
年来早見表、年齢の異称・賀寿一覧、
結婚記念日、年号索引、
日本と中国の年代対照表
(韓国も入れて欲しかったな)、
曲尺メートル換算表
があります。

これくらいはわかってないと、ということですね。
なのに、どー使うのかもわからない部分が
たくさんありますです。
道は遠い。