茶の葉の声に耳を澄まして    Tea-literacy

数千年にわたる茶と人とのかかわりに思いを馳せ、今、目の前にある茶の声に耳を傾ける
お茶にできること、お茶の可能性とは

羅漢寺(中津市)

2009年04月30日 | Weblog
耶馬渓に来ました
羅漢寺の総本山を訪ねました
このお寺の開山は約1300年前
645年にインドの僧、法道(ほうどう)仙人が渡来した際
ここの地形が釈迦聖跡の耆闍崛山(ぎしゃくつせん)に良く似ているとして
奉持された金銅仏一体を残したことに遡ります

羅漢寺と呼ばれるようになったのは
1337年に臨済宗祖の円龕昭覚(えんがんしょうかく)が
十六羅漢の画像を描いて洞窟のなかに掲げてからのことです
さらに中国から逆流建順(ぎゃくりゅうけんじゅん)が訪れ
五百羅漢像を安置したり
室町期に普覚禅師(ふかくぜんじ)が千体地蔵を刻んだりで
羅漢寺には3770体の石仏が並んでいるそうです

しかし戦国期に大友宗麟の邪宗焼き打ちで伽藍を焼失
1600年に鉄村玄さく(てつそんげんさく)が入山し曹洞宗に改宗し
細川忠興の援助を受けて羅漢寺は復興されたそうです

キリシタン大名大友宗麟は
寺社仏閣をどんどん焼き払っていたようですが
山伏からはお茶をもらっていましたよね・・・
茶人であったから
茶園経営をしている山伏の寺に手を出さなかった
なんてこともあるのでしょうか
というか
政治のためにたくさんの人を殺す人が
茶人であったりキリシタンであったりするのですから
あまりきっちり考えても仕様がないのでした

細川忠興の援助と聞いて
この広い羅漢寺の山に茶畑はないか聞いてみました
茶室はあるけど茶畑は知らないというお答えでしたが
リフトを降りたところに
ういういと新芽が揺れるお茶の木を発見
この山には絶対もっとあるはず!と確信しました

本当はインドの法道仙人がお茶を持ってこなかったかな
なんてワクワクしていたのですが
史料は全く無かりけりでした

求菩提(くぼて)山

2009年04月29日 | Weblog
九州には修験の山が六ヶ所あります
豊前の求菩提山はその一つです
国道から逸れて人気のない道を走って来たのに
登山口は見事な山石楠花(やましゃくなげ)と登山客で賑わい
少しも寂しいことはありませんでした
でも今日は山には入らず手前の資料館を見学
入ってすぐのコーナーは「修験と薬草」
陳皮、甘草、霊芝、とりかぶと、けしなどが展示されていました

どーしてお茶がないのだろう?と学芸員の方に尋ねてみると
お茶は別格ということで
確かに、奥に別のコーナーがあり
細川忠興や大友宗麟からの
献上されたお茶に対する礼状などが展示されていました
この山は朝夕に霧が立ちこめる土地柄で
かなり良質な抹茶がつくられていたようです

栄西が茶の木を植えたという脊振山も
「脊振千坊」と呼ばれる山伏の活動拠点
茶は薬樹として修験道院にいち早く伝播しました
史料によると
この辺りには34の山伏経営の茶園があり
今でもそのいくつかが茶農家さんとして続き
「求菩提茶」を生産しておられます
山伏といえども食べねばなりません
お茶づくりは大きな収入源だったわけです

画像は19世紀中ごろの『茶高控帳』です
34の茶畑での一年間の茶の生産量が
989荷半と記されています
茶1荷がどれくらいなのかわかっていないそうですが
当時の小倉藩は
茶1荷につき米一升8合の割合で税をかけていたようです

どのような形で山伏が茶を配っていたのか
それがわかる史料はないとのこと
ああ、山伏系茶園を訪ね歩いて
聞き取り調査がしたい!

熱湯玉露

2009年04月28日 | Weblog
九州にやってきました
小倉のデパ地下には
お茶のかほりが立っていました~
並んでいるのは八女と知覧
東京と変わりません

星野のお茶はあと数日だそうです
お歳暮の季節にだけだすという
星野の特定の茶園の蔵出し茶があるそうですが
50グラムで二千円!
立派な茶缶に入って万単位のそのお茶が
アッという間に売れてしまうそうです
「何が違うのですか?」
「土です。化学肥料を使わない土地は違います。
 本当においしいですよ」
お店の方が本当に美味しそうに話されるんです

お茶の説明もいろいろ丁寧にして下さいました
一段と緑の濃いお茶をさして
「これは熱湯玉露です」
おお!以前から気になっていた「熱湯玉露」
いったいどういう玉露なのだろう?
紅茶のように熱湯で淹れることに意味があるのかと
いろいろに考えていたのですが
説明を伺ってわかったことは
「熱湯玉露=かぶせ茶」ということ

熱湯で淹れた方が良いかぶせ茶とは?
と、ドキドキしてきたのに~
「ふつうの玉露のように40度までお湯を冷ます必要はなくて
 まあ70度ぐらいでよいということです」
という意味だとか
え~それはちょっと誤解してしまいます~
熱湯で淹れちゃいますよねえ

二週間ほど覆いをしたお茶だそうで
冠茶(かんむりちゃ)と呼んでおられました
星野村はお茶の名前に凝ってますね
すすり茶も星野村だけは「しずく茶」という
美しい名前をつけています
お茶の名前いろいろですね

白い泡

2009年04月27日 | Weblog
九州でのお茶の勉強会で使うお茶を
いろいろ集めては点てています
陸羽の『茶経』にあるように
本当に白い泡が点つのが不思議♪

「団茶」の状態を
可能な限り文献から拾って
お茶やさんと相談して・・・
あちこち歩いて
削ってあぶって蒸して挽いて・・・
でも、最後は「想像力」ですね

集めたお茶を見つめても
点てる方法を吟味しても
あまりおいしそう~という感じではないのですが
これがどうして
なかなかいけます
不思議なくらい甘い
もしかしたら今使っている抹茶よりも
あま~い

私にとって
いままで飲茶の街だった中華街は
急に怪しいお茶屋さんのある街に変わりました
今まであまり気付かなかったところに
小さな小さなお茶屋さんがあって
「わっ、これ!」
ずーと探していた緑茶の団茶がありました
竹筒茶とかもありました

また別のお店では
「あの~陸羽の茶経にある・・・」と
変な質問をする私に
「あ、インストラクターの方ですよね!
 川根で抹茶点てていただいた・・・」
などど、劇的な再会もあったりして

とにかく
急速に中華街が面白くなってしまったここ数日です
奥の方からいろいろなものが出てきて
わくわくです
中国行きたい中国行きたいと思っていましたが
中国行ったら言葉通じませんから
横浜中華街が私には最適でした

そして
お茶の話をしてくれる
その嬉しそうな顔に
とっても嬉しくなりました
この笑顔をいただいて
私も頑張ろう!


くだらない

2009年04月26日 | Weblog
今夜の
NHK『日本と朝鮮半島2000年「古代人々は海峡を越えた」』は
とても興味深いものでした

日本の仏教は百済仏教である
唐が百済を滅ぼす以前に
日本は立法の面でもモノづくりの面でも
百済から多くの影響を受けてきて
百済が滅びて後はなお
たくさんの百済の知識人が日本に移り住み
今日の日本文化の基を築くのに
大いなる影響をもたらしたというものでした

百済から来たものでなければ
大したものではない、何の価値もない
というところから
「くだらない」という言葉が生まれたと
以前、韓国の歴史漫画を読んだ時に
書いてあったのを思い出しました
今、ネットで調べたところ
そうした「百済ない」説と
仏教に9つの「ダラ」という教えがあるが
それが一つもない状態を「くダラない」といった
という説がありました(語源由来辞典)

番組は広開土王と倭国との関係にも
深く触れていましたが
この広開土王とは
高句麗の王
『大王四神記』でヨン様が演じていた王です
ドラマでは当時の王の管轄下に
広大な茶畑がありました
神官がそれを摘んで薬草としていました

これが事実であるなら
茶の栽培の技術も茶の薬効の知識も
5世紀の朝鮮半島で
すでに確立されていたことになります
陸羽が『茶経』を表すより
ずっと以前のことになります

釜山大学や釜山女子大学では
日韓の茶の研究がなされています
茶道に関しても
古代のファランドの茶礼が再現されるまでに
研究がすすんでいます
いろいろな事実が以前より自由に発表されるようになってきて
考古学的にはまだ立証できなくても
いろいろな説が立ち上がりつつあり
とても興味深いところです

栄西の『喫茶養生記』をはるかに遡って
奈良時代にすでに茶の薬効が伝わっていたことが
わかってきたことを思えば
今後の研究が楽しみです

画像は滋賀県百済寺の聖徳太子

遅れ芽摘み

2009年04月25日 | Weblog
足柄の茶園に
遅れ芽の摘み取りに行ってきました

と言っても
今日は朝から冷たい雨
天気予報を見ては茶園見学は中止かなとがっくりしていましたが
参加予定者がみんな雨でも行きたい!というので
決行とあいなりました
小田原駅に8時
一時間も二時間もかけて集まってくる顔
みんな、お茶が好きなんですね~

通常、雨の日に茶摘みはしません
雨を受けた茶をそのまま蒸しの工程に勧めると
蒸しにばらつきが出てしまい
味にも影響が出ますし
見た目にも欠点として映ってしまいます
ですから今日摘んだお茶は
各自の夕餉に新芽のてんぷらになったり
秘かな実験に使ったり・・・♪

細くて暗くてくねくねした道
茶畑へ向かう道はどこもそうです
ごんごん揺られていると
ぱっと視界が開けて
青い空と緑の茶畑~
車を降りるとふかふかの土
雨具を着て長靴をはいていざ茶畑へ!

ここは13日に被覆をして20日に初摘みをしたという
「さえみどり」の茶園です
神奈川県で最初の茶摘みでした
60名ほどの人が出て100kgの茶を摘み
15kgの荒茶ができたそうです
今年は覆いをしてから好天が続き
なかなかの出来だと喜んでいました

覆い下の中でもびしょびしょに濡れながら
いろいろ質問をしたりせっせと摘んだり
さぶくてさぶくて震えながら
でも手はとまらない・・・
今日のように風の強い日があると
せっかく良い状態で育っても
茶が「風すれ」でダメになってしまう
というお話などを聞きながら
ぷちぷち一芯三葉を摘みました
被覆して13日の茶というのを
この手でしっかりと感じることができました

いっちばん忙しい時期に
本当にありがとうございました









水温む

2009年04月24日 | Weblog
和菓子屋さんに
「水温む」と名のついたお菓子が並んでいました
3月の季題かと思っていましたが

山の人と海の人とでは
水温むという感覚にも時差があるかもしれません
岩場に小指の爪ほどのヤドカリが現れ
覗き込むと
カニも巻貝もすべてが小さくて
ほんの洗面器ほどの潮だまりに
数え切れないほどたくさんの小さな命を見つけるのは
そう、いつも今頃でした
まだ冷たいけれど
水が親しく感じられる頃です

山の水というと
キャンプに行った朝
水の匂いを感じたのを思い出します
まだ岩は冷たく川の水は白く
夏でも顔も洗えないほど冷たい水でした
山で生活をしていないと
凍れる冬がゆるんで
水が温むという感覚は
なかなか体得することができません

焚火の前で
ただ火を見て一時間も二時間も過ごしたり
大きな岩に身を預けて
一日中水の音の中にいたり
子供が小さい時はそんな経験もあったのに
気がつけばもうしばらくそんな時間を過ごしていなかったようです
山に入って清水を汲んでお茶を淹れる
新緑の頃になったら
今年は是非そんな贅沢をしてみたいです

『老子』の
「上善は水のごとし。
 水は善く万物を利して争はず、衆人の悪む所に処る。」を思いました
(最高の善は水のようなものでなければならない。
 水は万物を助け育てて自己を主張せず、
 だれもが嫌うような低い方へと流れてそこにおさまる)
『荘子』の
「水の道に従い、私を為さず」を思いました

山で過ごし、水を思い、水に学んできた先人達
水は今よりも近いものだったかもしれませんが
昔も、水を見ない人は見なかったでしょう

部屋の中でも
水の流れを思って茶を淹れるなら
うん
水の音が聞こえてくるような気がします

あじな茶道部

2009年04月23日 | Weblog
高校の茶道部にて

「先生・・・バイト先で抹茶のクリームの商品が増えたんだけど
 お客さんに抹茶と緑茶は違うのかと聞かれて
 わからなかった」

そ、それはね~

「へ~、そういうことか
 さっき図書室で本を調べてたら
 日本茶も紅茶もウーロン茶も同じ木でできるって書いてあったよ
 超びっくり!どうやってつくるんだろう」

そ、それはね~

「へ~、おもしろそ~~~
 茶畑行きてーし、茶摘みしてーし」

え、え~~~~~ほんとお?

「せっかく、茶道部なんだし、
 もっといろいろお茶のこと知りたいよね」

え~~~、え~~~~、え~~~~まじい?

う、うれしい!!


「先生、今日、実習で鯵のマリネつくったんだ。
 何十匹もさばいたから、手、ぬるぬるでさー、
 だから、さっき、棗、倒しちゃったんだ、へへ」

え、え~~~

「でさ、すんごくおいしいから食べてね♪
 先生、お酒好き?これで飲むとうまいよ。
 先生ってさ、日本酒でしょ。焼酎とか。
 ビールって感じじゃないな。
 カクテルも全然違う」

ビールは苦手だけど、カクテルは好きだもん・・・
着物来ていると、やはり、日本酒や焼酎なイメージなのでしょうか
おもしろい
で、今、日本酒で美味しい鯵のマリネをいただいています
ありがとうね

学校茶道だからって
遠慮していたなあ
しみじみ・・・
というか
私、頭、かたかった
お茶のこと、もっともっと伝えられるよう努力しよう!と思いました

茶摘みも、製茶も、お茶のお料理も
あれもこれもやりましょう!

みんな、本当にありがとう
待ってんしゃい、どーんとやったるきに
 

お茶の講座

2009年04月22日 | Weblog
先日の「すすり茶」の講座でのご感想を紹介します。
大好評です。
どこへでも飛んでいきますので、
是非、何かのお集まりに呼んでください♪

3種の違うお茶を飲んだみたい。
こんなに簡単で美味しく飲めるなんて驚いた。
温度で味が違ったのが面白かった。
お茶の葉がとってもおいしかった。
茶葉をおいしく食べられ、美味しいお茶がいただけて面白かった。
これからのお茶の飲み方として広めたらよいと思う。
茶葉も食べてしまう(ごみがでない)ことが広める上で大事だと思う。
お茶の新しい味(甘み)を体験し感動しました。
栄養価についても具体的な説明があり、有意義だった。
お急須を使わないでよいし、自分流で楽しめてよかった。
お茶を楽しむゆとり(心と時間)が持てない人にはどうアピールするか。
お茶の葉がおいしく食べられ栄養もしっかりとれ
ゴミも減ってとてもいいなと感じました。
すすり茶のようなお茶の楽しみ方があるのを今回初めて知りました。
もっといろいろなところで紹介されるといいと思います。
初めての経験で、お茶の美味しさを知りました。
今までもったいない飲み方をしていた感がありました。
お茶の葉を食べるというのが初めてだったので、とても新鮮で楽しかったです。
美味しくいただきました。
とても楽しく、おいしかったので、いろいろなところで紹介されて
多くの人にすすり茶のことを知ってもらえたらいいなと思いました。
若い人でも絶対興味を持つと思います。
一種類のお茶でたくさんの種類をいただいた気分です。
ゆっくりお茶をいただき楽しい時間が持てとてもよかった。
日本茶のいただき方が新たに見つかった気分です。
急須を使わなくても手軽に美味しくお茶を楽しめ、
一人に一客ずつあって専用に楽しめ、最後の茶葉まで食べられ、
お茶の栄養をすべて取り入れられ、とても魅力的でした。
こういう講座を受けられて大変よかったです。
お茶の楽しみ方や、奥深さを味わえて楽しい時間が過ごせました。
いろいろな場所で、体験できる機会が増えるといいなと思います。
お話しながら気軽にできそうで楽しかったです。
お茶の本当のうまみを感じることができ、感動でした。
お茶が大好きですが、お茶の特性について知らなかったので勉強になりました。
熱いお茶が好きでしたが、これからは旨みを味わうために
ゆったりとした気持ちでぬるめの温度でも飲んでみようと思います。
自宅でもしてみたいです。
ゆったりとした時間を持ち、落ち着いてお茶をいただけて身も心も和みました。
お茶をこんなにごちそうと思ったことはなかったです。
お茶を日常でいただく日本人にもっと知ってもらいたいです。
お茶の葉っぱがきれいでした。
講座でお茶の販売もしてほしい。

皆様、ありがとうございました♪

いざ茶摘み

2009年04月21日 | Weblog
やっと大分での茶摘みの日程がきまりました
5月3日です
といってもまだ10日以上も先のことですから
お天気次第で超直前まで変更の可能性はありです

今回は
お茶についてその歴史を概観する勉強会付き(2日)
内容は
宋代の団茶を喫す: 固形茶を点ててみます
茶の伝来を知る:  年表と地図を使って説明します
明代の煎茶を喫す: 煎茶道のお点前で釜炒り茶を淹れます
日本茶の現状を知る:  茶業の現状と茶の製造法について説明します
茶摘みに向けての諸注意 ⇒ いざ、茶畑へ!(3日)

別府温泉につかって
お茶と人とのかかわりをなが~いスケールで感じ
緑の風をいっぱい吸いながら
やわらかな新芽を摘む
そんな風に今年の連休を使ってみようかなという方
是非ご一緒に♪
といっても
観光農園ではありませんので
お手伝いという形で茶摘みをさせていただくという
ばりばり労働型のツアーです
お茶を丸ごと知りたい!という方にはばっちりです
詳細はHPにてお知らせいたします

しかし・・・
茶畑を守りたい!というのは本当に大変です
摘採日が直前まできまらない
しかもそれがGW
直前では足も宿も確保できないですし
だいたいお値段が高い
雨が降れば中止ですし
他に楽しいお誘いがいっぱい

農家さん側では
手伝いの人数が決まっているならそれを当てにできますが
わからないなら別に労働力を確保しなければなりません
「来年も来ます!」と目を輝かせても
一年先のGWにまた同じ茶畑に足を向けるのは容易なことではありません
私自身、仕事の調整、お金の工面にもんのすごい努力をしました

駆り立てるものがあるのです
農とはコミットメントだ
摘まにゃ日本の茶にならぬ
そんな思いかな
けして「頑張る!」ではなくて
「さういう人に私はなりたい」
そんな願いです

茶の白

2009年04月20日 | Weblog
抹茶の「緑」について
4月16日に出典が思い出せない内容を記しました
今日は一応出典がしっかりしていることを記しておきます
ちょっと古いですが(昭和56年)
『茶の湯歳時記 春』(平凡社)
細川元総理のお父上の細川護貞氏の記事です

1.「白を貴ぶのは茶の新芽に、うぶ毛があって、
   光線の加減でそれが白く見える。
   だから、その白い新芽をとって茶にすると上等の茶になるので、
   茶では白を貴ぶ。」 
 という内容が『槐記』にある

2.「八女の星野村に白黄色の茶ができ、味は玉露に勝る」
 と、昭和30年5月25日の『西部朝日』には記されてある

3.「茶の色は白を貴ぶ」
 と、中国の『茶録』にそのようにある

3から、細川氏は
宋の時代から白茶が最も上等であるとされていることが
茶とともに日本に伝わったのではないかと述べています

これは、もう中国茶の白茶の話ではないかという気がしてきます
白茶というのは福建省のお茶で
お茶の王様といわれています
中国茶の中で唯一揉捻をしない微発酵のお茶です
揉捻をしないというのは
揉まなくても滋味が溢れくるということです
「白毫銀針」という白茶は
北宋の皇帝徽宋が好んだお茶です
彼は『大観茶論』を著した文人でもありました

また、「安吉白茶」という名前をもつ緑茶もあります
浙江省安吉県のお茶です
樹齢1000年という白茶樹「白茶王」を親とした茶樹の一種で
白いうぶげが多いミル芽を摘んで製茶するため
白茶という名がついています

さて
「白茶が良い」→「白が良い」という概念が伝わってのことか
白いうぶげのあるような新芽でつくった茶が上等ということか

去年、宇治の茶匠の方々に尋ねた時は
また違うご意見がありました
一様ではなかったので
やはりこれが正解という説はないのかもしれません


美酒

2009年04月19日 | Weblog
ガラスのお道具を使っての
酒席のお席にお客様で入りました
ベネチアングラスや江戸切子など
東西の技が仲良く一座を立ち上げていました
5人のお運びさんは五行の色のドレスで
会場に清風を起こしていました

本席は対照的に
しぶい時代劇のような文人茶
小間席でのお点前を
その周りの椅子席で鑑賞するという感じの設えでした

「お点前というのはね手舞いなの」とお家元
たった一口で飲みきってしまうようなお茶を淹れるために
どれだけ真面目に遊べるか
どれだけその一所懸命を一緒に面白がることができるか
主客一体となって「ひと時」を豊かに過ごすための装置
茶の道というのは
for the better human life だわ
とかみしめながらお茶とお酒をいただきました


帰ってきて「姿」という字調べてみました
「リラックスした時の女性の様々なすがた」(漢語林)
というのがもとの意味なのだそうです
今日はたくさんの美しい「姿」を拝見しました
40年も50年も生きてくれば
辛いこと悲しいことの一つや二つや三つや四つ
人生いろいろあるわけであります
そんな喜怒哀楽ぜーんぶが
茶に付き茶とともに過ごしてきた年月の間で
熟成されて
それぞれの「姿」になって
茶の味になって
座の雰囲気をたちあげていたようです

お茶会後の打ち上げは
皆さんいいお顔で
ほーんと楽しくてうれしくて
お酒がますますおいしく
お酒に始まりお酒に終わったお茶会
ああ今日も良い一日でした

皇室献上茶

2009年04月17日 | Weblog
今日、静岡県富士宮市で
おごそか~な茶摘みが行われました。
今年皇室に献上するお茶が摘まれ、
手揉みで仕上げられました。

皇室献上茶は、
毎年静岡県か埼玉県が受け持っています。
県が各市町村に(名乗りを上げた市町村)に依頼し、
選ばれた数名の農家がその年の指定茶園となり、
その畑で摘まれた新芽で
手もみ保存会の人達が仕上げて献上するのです。

今年の献上茶指定茶園に選ばれたのは、
静岡県富士宮市黒田の佐野さんと
大岩の鈴木さんの茶園。
富士宮市の茶園が献上茶指定を受けるのは
初めてのことだそうです。

ハウスの茶園で茶娘姿の女性が摘み取った茶葉は約30キロ。
それを蒸篭(せいろ)で蒸して、
10台の焙炉(ほいろ)で手揉み保存会の人が仕上げていきます。
その中から厳選された800グラムの新茶が
天皇、皇后両陛下と皇太子ご夫妻に届けられるそうです。

静岡県から皇室へのお茶を献上する歴史は古く、
大正14年に遡ります。
戦前には茶業連合会議所の事業として実施されていました。
県の手揉み保存会が結成されたのは昭和34年のことです。

画像は、
去年川根で私めが手もみ茶名人にご指導を受けた時のようす。
「こう!」
と、気合の入った手さばきは
まるで手品のようでした。
「こう!」
真似できるのは言葉だけでした~。




茶の緑

2009年04月16日 | Weblog
学校茶道の時
生徒がつくったヨモギ団子をいただきました
「さっき校庭で摘んだよもぎだよ」
春の草の元気がいっぱい籠っているような
さわやかな草色でした

このヨモギの緑を抹茶に応用した話を思い出しました
抹茶の製法には
摘んだ葉を蒸して、すぐに冷却して
そして乾かしていくという工程があります
蒸すのは酸化を止めるため
冷却するのは鮮やかな緑を留めるためです

でも江戸のころ、湯気の出ている茶の葉を
急速に冷却するのは今ほど簡単なことではありません
団扇でさっさか仰ぐわけです
今よりは緩やかな冷却でつくられた抹茶は
今よりは緑が薄かった
今よりは白っぽいお茶だったようです

でも鮮やかな緑というのは
人の目を引きます
どうにかもっと鮮やかな抹茶ができないか
いろいろと工夫をする中で
よもぎにヒントを得て、茹でて水にとると
通常よりも緑の濃いきれいな抹茶ができたのです
でも
今度は旨みが抜けているわけです
では
団扇であおいだ抹茶と水に浸した抹茶を混ぜたらどうか
緑のより濃いよもぎの粉を抹茶に混ぜたらどうか
どんどんエスカレートしていきます
今、クロロフィルを添加している抹茶があるのと同様ですね

緑の濃い抹茶は黒楽によく映え
見た目には美しい茶ができたわけですが
お味がどーも
それで、茶は白に限るということになり
今、抹茶の銘に「~の白」が好まれている
という説もあると何かで読んだのですが
出展が確認できませんでした
でもそういうことは
あったであろうと思いますが
よしずで遮光して
葉緑素を増やすという方法がすでにあったので
丁寧に作られたお茶は十分きれいな色をしていたに違いありません