茶の葉の声に耳を澄まして    Tea-literacy

数千年にわたる茶と人とのかかわりに思いを馳せ、今、目の前にある茶の声に耳を傾ける
お茶にできること、お茶の可能性とは

茶室見学

2009年11月30日 | Weblog
茶道文化検定のアンケートに
どのような企画があれば参加したいですか?
とあって
マークシートなので
とりあえず
「茶室や茶庭などの現地見学会」を
塗りつぶしてきました

でも
本当に
茶道文化振興財団さんにお願いができるなら
「お茶室でゆっくりする会」を設けていただきたいです
お茶室見学会というのは
大抵
先生のあとをぞろぞろとついて歩いて
本に書いてあるような説明を聞いて
本に載ってた写真の造りを確認して
お許しが出れば写真を撮ってという
ちょっと忙しいツアーです

そこでのお茶会は無理にしても
お茶を一服してみたい
それも無理なら
ただ座すだけでもいいのにな
露地を静かに歩いて
画像のような腰掛け待合で
お迎えを待ってみたいです
ただ座ったときの席と
これから始まる茶事を待って座っているのと
露地の緑も水の音も
全然違うのでしょうね

歌を忘れたカナリアも
象牙の船に銀の槐
月夜の海に浮かべれば
忘れた歌を思い出すように
市中にあって
門をくぐれば
ほんの数時間で
歌を思い出せるくらい
お茶事にはおもてなしの心が
そこここに鏤められていて
その全部を感じるのに
庭と茶室があるのだから
見学ツアーというのは
やっぱり
ちょっと不十分のように思います

先日伺った松永記念館のように
立派なお茶室を貸し出して下さる施設に
あらためて感謝すると共に
丁寧に大切に利用して
いつまでも
たくさんの歌を思い出させてくれる
空間であり続けて欲しいと思いました


画像は『太陽庭と家シリーズIV」』あった
藪内家の腰掛け待合

こねりがき

2009年11月29日 | Weblog
茶道文化検定の2級を受けてきました
ガーン
全部真面目な問題でした

テストというのは
普段気のつかないことを思い知らされて
本当にありがたいものです
今回
はまってしまった問題は
「こねりがき」とは何ですか
というものです
『利休百会記』にある記録で
秀吉を招いた茶会で
昼食のあとに出しているのですが
さてそれは
渋柿か干し柿か串柿か
枝についたまま熟した柿か
というものです

柿だな
くらいにしか思わずに見ていた会記でしたが
こう質問されると
情景がいろいろに浮かんできました
干し柿のスライスしたのが
からすみのように並んでいたのかしら
それとも
干し柿を丸ごと秋の風情と共にいただいたのかしら
でもこねりがきと言えば
木練り柿
木で熟した柿だけれど
さてどのようにお出ししたのかしら

試験会場の一橋大学は
窓の向こうに晩秋の色が濃く
柿の木があれば
きっと木練柿が一つ二つ残っていて
木守りとなっているような風情でした

赤い葉を見つめながら
小さな茶室で
大のおじさんたちが
どうやって柿を食べていたのかと
あれこれ思いが飛びました
今だったら
やわらかくなった柿を
もうもぐことができないから
やっぱり枝ごと切って
きれいに洗ってお皿に載せたら
スプーンを添えて出すかしら

おじさんたちは
いえ
これは1590年の8月ですから
利休さんが亡くなる数ヶ月前のこと
おじいさんたちは
お抹茶を飲みながら
どんな風に柿をたべていたのでしょう
そして何を話していたのでしょう

そんなことに気がいってしまったから
試験のできが悪かったかもお

一保堂「春日」

2009年11月28日 | Weblog
デパ地下見つけてしまいました。
「東京限定のお抹茶」
京都の一保堂さんです。
東京限定ってどういう意味?と
吸い寄せられていきました。

「東京の人の嗜好に合わせてブレンドした
 東京でだけで販売しているお抹茶です。
 軽くてさわやかなお抹茶です。
 京都の本店にもありません。」
とのことです。

箱パックで
20g1365円は
一保堂さんのお薄のなかでは
なかなかよいお値段でしたが、
是非試してみたい!と
買ってしまった東京の消費者です。

「一保堂」さんの屋号の由来がHPにありました。
 およそ160年前、
 山階宮から賜った「茶、一つを保つ」ように、
 という「一保堂」の屋号。
 この言葉には、
 「よい茶葉のみを商い続けるように」
 という願いが込められているのでしょう。
 目まぐるしく変化する時代の流れの中、
 「変えなければいけないもの」と
 「変えてはいけないもの」を見定めていくことは
 とても重要です。
 一保堂にとっての
 「変えてはいけないもの」、
 その最重要項目はもちろん、お茶の品質です。

いつもいつも
変えなければいけないものは何か、
変えてはいけないものは何か、
ということに
心が向いているというのは、
常に
誠があるから。
素敵な屋号だったのですね。
「春日」の試み、楽しみです。

そういえば、
お客様が自分でお茶を淹れるという喫茶を
いち早く始めてらしたお茶屋さんです。
お濃茶のあとにお湯をたして
お薄にしてどうぞといわれた時は、
これ、お稽古でやりたかったこと!と
うれしかった日を思い出しました。

『お茶の謎を探る』

2009年11月25日 | Weblog
栄西が
帰朝の際に茶の実を持ち帰って
背振山に植えた
という説に
農学博士の立場から
検証の旅に出られたお話や
あちこちの茶樹を求めて歩かれた記録を
ただただ羨ましく拝読いたしました

当時の状況にそって
浙江省の茶の実を20持ち帰り播いたところ
3つが発芽した
という事実確認
クラスター分析によれば
四国九州のヤマチャと浙江省のチャには
DNA的に違いがみられないので
渡来説派というご説明に加えて
平家の落人がお茶を広めたというお話は
大変興味深いものでした

平家が落ちていく時代
京の貴族の間では
喫茶の効能がわかっていたであろうから
いろいろな種を持って
九州四国の地に流れていった平家の落人は
当然お茶も持っていたと考えられるので
チャは
京から九州四国に根付いたというご説です

確かに
熊本県の五家荘
宮崎県の椎葉
徳島県の祖谷
といったヤマチャの地には
平家の落人伝説があります

中国から日本に伝わったチャは
京の都でその薬効が認められ
仏教の修行僧による伝播とは別ルートで
源平の歴史の波に揺られながら
ひっそりと
深い山で育っていた

深い山にあるので
日本に古来から自生するものと思われがちですが
本来の自然な土地である一次林地帯には
なく
人の手が入ったことのある山に見られることから
植えた人がいるということになるそうです
青葉の笛や琵琶の音と共に
お茶を喫していたこともあったのでしょうか


『お茶の謎を探る』
橋本実
悠飛社
2002年4月発行

百事大吉(ひゃくじだいきち)

2009年11月24日 | Weblog
お煎茶の雅題は、
解説を聞いても
真に受けていいのかと思ってしまうほど
「音」の遊びがあります。

百合の「百」、
柿の音読みがジだから「事」、
柑橘類の「橘」→「吉」。
く、くるしい・・・。
それでも、
この子達で「百事大吉」を表しています。
「すべてのことが良いように!」
そんなメッセージを込めた盛りものです。

吉は、
蜜柑でもでもよいのです。
大きなブンタンがデーンと座れば、
まさに超大吉!
床に飾られたブンタンというのは、
本当にかわいく頼もしく
絶対いいことある!という気分にしてくれます。

柿は、
「ジ」つなかりで「事」として使われていますが、
これまたおめでたい果物。
昔から
「柿が赤くなると医者が青くなる」
といわれているとおり、
ビタミンやミネラルが豊富。
栄養価の高い果物です。

また、
中国では古くから、
柿は七つの徳を備えた果物とされています。
 一には木の寿命長し、
 二には樹蔭多し、
 三には鳥が巣を作らず、
 四には蟲が付かず、
 五には紅葉賞翫すべし、
 六には立派なる果実が生り、
 七には其の落葉が殊の外大きい。

そんな目で柿を見つめると
なかなかいい顔に見えてきます。
スーパーに行ったら、
吉をいっぱい呼んでくれそうな蜜柑、
恩恵をたくさんもたらしてくれそうな顔した柿、
そんな目で選んでみて下さい。
たくさん並んでいる果物達に
今まで感じたこともないような愛情を
感じるようになりますよ。

美しい姿

2009年11月22日 | Weblog
日本和装さんの講座では、
きれいにお着物をお召しになったお母さま方が
きちんとジュータンのお部屋に正座をされて、
1時間半にわたるお茶の話を聞いてくださいました。

お茶はそもそも薬だったという話に、
痩せたくていっぱい飲み過ぎて
具合が悪くなりましたという体験談がでては
カフェインの話にとんだり、
双方向でとても気持ちのよい時間でした。

お抹茶のお道具の扱いや
小さなお煎茶のお道具の扱いに、
ただお茶を淹れることが、
ちょっとした所作ひとつで
なんて素敵なのだろうと、
ご一緒に手を動かしながら楽しんでくださいました。

子育てが終わり
時間ができた時、
後の人生をどう送ろうか、
今まで家族のために忙しく過ごして
自分のために何もしてこなかったお母様達が、
自分のためにお金を使い、
何かを求めて集まっていらしている、
そう感じさせる真摯な瞳に、
お茶の知識だけではなく、
お茶の周辺のたくさんの扉をお伝えしたくて
2時間弱ではとても足りない気持ちでした。

お着物をお召しだからということではなくて、
主婦をキチンとされてこられた歴史が
とても美しい姿になっているのだなと
そんなことを感じていました。
24時間×7日間働くお母さん、
土日も夏休みもアフター5もなく過ごした日々の
繰り越し休日が
どうかよりワクワクしたものとなりますよう
お茶を通して楽しみを分かち合えたらと思います。

てんやく茶

2009年11月21日 | Weblog
こちらはカメリアシネンシスのお茶ではなく
いわゆる薬草茶です。
奈良の天香具山天益寺さんのお茶です。
天香久山と言えば
大和三山(香久山・畝傍山・耳成山)の香久山を思いますが、
奈良大宇陀あたりで天香久山と言えば、
天益寺さんのことなのだそうです。
山号です。

「ひんがしの野にかぎろひの立つ見えて
 かへりみすれば月かたぶきぬ」
この有名な人麻呂の歌にある
「かぎろい」というのは、
厳寒期早暁の気象現象で、
どこででも見られるというものでもないのですが、
この大宇陀という地は、
そのかぎろいが観察できることで有名なのだそうです。
万葉の郷です。

大宇陀には、
「小石川植物園」と並ぶ日本最古の薬草園があります。
八代将軍吉宗は、
漢方薬の自給自足を施策としていて、
国内での薬草採集、増殖研究に力をいれていましたが、
この地で南北朝の頃から葛をつくっていた森野家が、
幕吏に随行して近畿一円から北陸地方まで
十数度にのぼる採薬調査にでかけています。
そして今でも250種の薬草を育て続けているというわけで、
大宇陀は歴史ある薬草の地なのです。

その250の分類を見ていたら、
お茶が、
なんと!
10月の項目に分類されてありました。
体を温める陽の番茶ですね?
江戸庶民は、
安いから番茶を煎じて飲んでいたのではなくて、
寒い冬に体を温める飲み物であることを
知っていたのかもしれませんね。

てんやく茶の原材料:
ハトムギ、ハブソウ、カワラケツメイ、
エビスグサ、シソ、バクガ
原産国:日本、中国、インド

いつもキーボードを打つ指が冷た~いのに
今日はあったか
あったまるお茶です。

あったまるお茶

2009年11月20日 | Weblog
緑茶は陰性の飲み物だから
体を冷やしますよ
なんて言われても
お茶大好きな冷え性の私は
どうしたらよいのでしょう

というわけで
マクロビオティックとか
食物の陰陽とか
少し勉強しました

お茶は陰だけど
それは春の畑でとれたものだからで
寒い時期に採れたお茶は陽
つまり
番茶は陽の飲み物で
体を温めてくれるのです

しかも
梅干しを入れたり
お醤油を入れたりすると
もっと陽が極まって
体をうんと温めてくれる
ありがたい飲み物になります

また
発酵するという過程も
陰から陽に転じる方法なので
青茶(烏龍茶)や紅茶や
黒茶(プーアール茶)は
体を温めてくれるそうです
陰の緑茶に
梅干し、お醤油などをいれて
陰を陽に転じることができるそうです

秋冬番茶とか寒茶とか
寒い時には寒い時に採ったお茶がいいなんて
お茶もお野菜ですから
旬がいいのですね
あたりまえのことでした

ということで
第5回「おしゃべりなお茶の時間」のテーマは
あったまるお茶です
番茶、3年番茶、5年番茶ってなに?
梅干しやお醤油をお茶に入れると
どーして温め効果がでてくるの?
プーアール茶の淹れ方いただき方
「幻の碁石茶」も極めます!

日時:12月2日(水)
   A)10:30~12:00
   B)14:00~15:30
場所:横浜山手イギリス館
料金:3500円
申込:予約制→camellia4387@mail.goo.ne.jp

あたたかく冬を乗り切りましょう!
お待ちしております

mixi

2009年11月19日 | Weblog
「そうたの好きなもの:お茶」だってよ
そうた?
懐かしい名前です
息子が小学校の頃
お茶のお稽古に来ていた同級生
10年も前のことです
mixiなるもので同窓生のプロフィールがわかるとかで
うれしい情報を見つけてくれました
そうた君というのは私にお茶の心を教えてくれた小学生です

卒業記念にご家族を招いてお茶会をした時のこと
そうたが点前の時
正客にお父さまが座るから
次客のおばあちゃまには
私がかげ出しをすることになっていました
ところが
茶席なんてわっからねーというお父さんは
後から入ってきて
正客にはおばあちゃまが座られたのです

無事お点前もおわって
そうたが水屋に下がってきました
そうたは鼻の頭に汗をいっぱいかいて私に言います
「先生、おれ、どうしよう。
 ばあちゃんは、お茶が大好きなんだよ、
 だから先生に点ててもらおうと思っていたのに、
 ばあちゃんが正客に座ってるから、もうあせったよ。
 どうしよう。おいしく点てられたかな。
 お父さんだったら味わかんないからいいんだけど。
 ばあちゃんにはおいしいお茶をのませてあげたかったんだよ。
 先生、どうしよう。苦かったかな。だまがあったかな。」

そうたの真摯な瞳に
私は涙があふれてきてホントまいりました
おばあちゃまを思い
一生懸命お茶を点てている彼の姿を思うと
なんといとおしかったか
その姿は
おばあちゃまにもしっかり届いたはず
人生で一番のお茶だったことでしょう

それから
点前座につく度に
そうたのあの日の瞳を思い出すのです
そのそうたがプロフィールに
お茶が好きって書いてあったって
ん~
今日はもう飲まずにはいられない~
mixiありがとう♪

寂(じゃく)

2009年11月18日 | Weblog
今日は大好きな学校茶道の日
3ヶ月の研修を終えてもうサヨナラという
若い先生がお客様でいらっしゃいました
「お茶を点ててみたいんです」
みんなのお点前を
メモをとりながら熱心に見ていた先生
いよいよ点前座に登場です

手が震えています
お棗からお茶が掬えないくらいに
「あ、どうしたんだろう、僕の手・・・」
ご自身が緊張していらっしゃるのは重々承知
それにしても
お茶杓がカタカタカタカタ
「あああ、どうなってんだ、僕の手~~~」

「先生、がんばれ!」
生徒から声がとびました
左利きの先生が右手で柄杓を持つと
「先生、左手でいいよ!」
と愛の言葉がとんで
「じゃ、じゃあ、危ないので左でとらせていただきます」
と先生はブルブル震える左手に右手を添えて
ダブルブルブルなだけだ状態で
お湯を取りました

「先生、茶筅も左でいいんだよ、無理すんな!」
良いタイミングで声援がとびます
「もしかして、あたし?先生のお茶飲むのお?」
などなど
先生の緊張をほぐしてあげようと
みんながとっても優しくて

以前も年配の先生が体験にいらしたとき
「優しくしてもらうとこんなにうれしんだねえ
 反省しちゃうよ」
なんて言ってらしたことがありますが
生徒達にあーだこーだ言われながら
点前座につこうとなさる先生の度量は
とてもご立派なもの
一緒にお菓子を食べてお茶を飲んで
とても良い雰囲気でした

改めて思いました
みんなに見つめられて
点前の稽古をかさねているうちに
知らぬうちに
落ち着きが身についているのですね
「寂」だ
そう思いました

お茶ときもの

2009年11月16日 | Weblog


「きもの美人のお抹茶講座」という
和文化カレッジが始まります
日本和装さんの企画です

第1回 説明会・お茶の基礎知識講座
第2回 最低限のお茶席マナー
第3回 茶会のきもの~季節ごとの装い~を学ぶ
第4回 きものでお茶席、立ち居振る舞いとTPO 
第5回 茶会のきものコーディネートセミナー
第6回 オリジナル茶道具を作ろう(ワークショップ)
第7回 おうちで茶会~テーブルでお点前~
第8回 修了茶会

これが無料だそうです
最後のお茶会は3000円とか

この中のお茶の部分で講義をいたします
着物の先生がたくさんいらっしゃるところへ
和服で伺うのはこわいです
私がこわい・・・と感じるのは
取り合わせが何か間違ってるかしらとか
着付けがへたっぴかしらとか
ちょっとどきどきするからです

多くの方がこうした思いでいるようで
着物を着たいという人はいるにもかかわらず
着物文化が細っていく
そこで
着物マスターを育てようという取り組みが始まり
検定もできました
日本茶インストラクターの世界と同じですね~

日本和装さんは全国ネットで
こうした講座を展開していますが
見事に満席御礼が続いています
「無料」は確かに魅力ですが
着物を着たいという人が
本当たくさんいるということですね

お茶も着物も
みんな知識が足りないということより
ステレオタイプに毒されているという気がします
「こうでなくちゃいけない」を取り除いてあげて
自分のスタイルで
お茶でも着物でも楽しんでいって欲しいと思います