茶の葉の声に耳を澄まして    Tea-literacy

数千年にわたる茶と人とのかかわりに思いを馳せ、今、目の前にある茶の声に耳を傾ける
お茶にできること、お茶の可能性とは

涼炉

2009年05月02日 | Weblog
別府の温泉街にある旅館の広間で、
お煎茶の道具を開いていると、
仲居さんたちがやってきては、
「あら~懐かしい~」と
かわるがわる顔を出されました。
そうしてお道具を手にしては、
ちょっとお手前のまねをしたり、
お花を分けてくださったり、
小さな剣山など探してきてくださったり、
あれやこれやと手前座づくりを一緒に楽しまれていました。

佐賀の方や博多の方や
皆さんお若い頃にお煎茶を習っていたといいます。
「なんて流派だったか・・・」
細かいことは忘れてしまったけれど、
それでも涼炉にボウフラを置く手は、
茶人です。
「この小さい炉に炭を入れるのが大好きだった」

今、私たちは電気の涼炉を使いますが、
仲居さんたちの頃は、
炭が当たりまえ。
小さな炉扇(ろせん)でパタパタと仰ぐのは、
私も大好きな部分です。

食事の時も、
仲居さんたちが煎茶の話でときめいています。
「いや~見に行けばよかったわ」
まるで女子高生のように、
私のところにやってきては、
昔話をしてくださいました。

茶道はね、
ちょっと花嫁修業みたいな感じだったけど、
煎茶はね、みんなやってたわ。
どこの家にも涼炉はあったし、
煎茶は日常のものだった。

さすが売茶翁の地!
佐賀に行ったら道ですれ違う人がみんな挨拶するので
驚きましたと言うと、
挨拶はだれにでもするのがあたりまえ、
お茶とは関係ないけん、と
さらっと笑われてしまいました。

「昔使っていたお道具はどうしてしまったかしら?」
って、え~~
九州中の蔵を探索したい気分です。