奈良ばい谷戸の野道で綺麗に色付いていた「ホラシノブ(洞忍)」。ホングウシダ科ホラシノブ属のシダ植物で本州以南の山野に生育している。常緑性だが冬には紅葉するものもある。当地では大塚なかおね公園の林内で1株だけあるのを確認していたが、ここには10株以上ある。今まで何回も通っていた野道だが、この紅葉のお陰で気付くことができた。
ナス科ナス属「ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)」。日本全土の山野に普通に生えるつる性多年草で当地では道端などで時々見掛けるが、刈られることが多くなかなか定位置で見られない。ここは堀之内寺沢里山公園の田んぼ脇で見つけたもので、記録のために撮っておいた。
キョウチクトウ科(←ガカイモ科)ガガイモ属の「ガガイモ(羅摩)」。夏に花はあちこちの藪に繁茂しているのを見るが、結実率が低くまた刈られるような場所に生えているので、その果実にはなかなかお目に掛かれない。植物観察を始めてから16年以上になるが、これまでにガガイモの果実を見たのは5~6回しかない。それに果実を見つけてもその後刈られてしまって、種子を見たのは2年前の一度だけ。今回久し振りに種子を見ることができた。
高尾山“いろはの森コース”に生育している「イヌブナ(犬ぶな※)」。ブナ科ブナ属の落葉高木で、写真は“ひこばえ(蘖)”の様子。主幹はまだ元気だがその寿命はそれほど長くなく、根元からは次世代の若木が成長していく。ブナの寿命は200年程度とされているがイヌブナは更に短いと考えられている。しかしイヌブナはこの”ひこばえ”によって、同じ場所で1,000年も生命を続けることができるという。
※ぶなの漢字は木へんに無。
由木中央小学校横から北に抜ける堀之内地区の道端で見つけた「ノササゲ(野大角豆)」。マメ科ノササゲ属のつる性多年草で花期は8~9月。豆果は長さ3~4センチで果皮は紫色になり莢が裂開しても種子は残っている。
奥高尾“一丁平北巻き道”で見られる「クサボタン(草牡丹)」。キンポウゲ科センニンソウ属の落葉低木で、葉がボタンに似ているために名付けられいる。同属のボタンヅルと名前の由来は同じだが、本種はつる性ではない。花期は9~10月で雌雄異株。写真は雌株で下部には痩果が多く見られるが、上部には粃(しいな)と思われる冠毛だけのものが見られた。
ブナ科ブナ属の「イヌブナ(犬ぶな※)」。秋にブナの果実を見つけたが、イヌブナは何本かの樹の下を探したが見つからなかった。これが最後として落ち葉を掻き分け10分ほど探して出てきたのが写真の殻斗。結局堅果は見つからなかった。イヌブナの殻斗はブナよりもやや小振りで、ここには堅果が2つ付く。次は花を観察しよう。
※ぶなの漢字は木へんに無。
真冬の風物詩は「シモバシラ(霜柱)」の氷柱。シソ科シモバシラ属の多年草で、地上部は枯れているが根が活動していて茎の維管束や導管などの毛細管現象で水分が押し上げられ、地上部で氷点下の外気に触れて凍る。シソ科植物ではシモバシラのほか、セキヤノアキチョウジやサルビア・ガラニチカなどでも同じような氷柱が見られる。これは奥高尾“もみじ台北巻き道”のもの。
高尾山薬王院奥之院の最上部に“富士浅間社(ふじせんげんしゃ)”がある。これは戦国時代に北条氏康が高尾山に富士浅間大菩薩を勧請したもので、残念ながらこの位置からは富士山は拝めない。
高尾山薬王院公式ホームページには
『伝承によれば、山頂を過ぎてもみじ台、一丁平に至る手前南側に“富士見台”と呼ばれる小さな頂があり、かつてここにひとつの御堂が構えられ、拝殿の奥の扉が開かれるとご神体の富士山が一幅の絵のように拝されたという。今でも奥之院から山頂に向かう道筋を“富士道”と言い慣わしている。昔はこの道筋を白装束の富士道者の一行がチリン、チリンと腰の鈴を鳴らしながら賑やかに行き交うのが夏の風物詩であった。
“北条記”によれば、富士浅間社の高尾山勧請に伴い、富士吉田の禰宜達が悉く武州八王子に移ったとあるが、この禰宜達が高尾山修験先達集団と渾然となって高尾山参詣と富士詣でとを広めていったと推察される。
江戸時代となって関東の修験道勢力は、幕府の強大な力を背景に日光男体山を主な行場とする天台宗本山派の二荒山(ふたらさん)修験に収斂されていく中で、高尾山修験道が関東地方には珍しく孤高を保ち、真言宗智山派修験の旗幟を守ってきた要因として、富士山修験道の勢力を無視することはできない。』とある。
薬王院から“冨士道”を通って山頂に向かう間、富士山の姿は全く見えないのになぜ“富士道”と呼ぶのか疑問だったが、この道が山頂を過ぎ一丁平方面まで続いていたのだということで理解できた。
奥高尾“一丁平北巻き道”で見つけた「ツルリンドウ(蔓竜胆)」。リンドウ科ツルリンドウ属のつる性多年草で花期は9~10月。リンドウの果実は蒴果になるがツルリンドウの果実は液果になる。写真は虫が喰ったのか穴が開いていて、中に長さ1.5~2ミリの種子が数個残っていた。