長電話

~自費出版のススメ~

長澤まさみの演技と評価

2009-06-21 | アート
宮崎あおい、蒼井優、上野樹里、長澤まさみ、柴咲コウなど若い女優が仕事を選びながら実力をつけています。男の子の幼い虚栄心に満ちた人気テレビタレントの無自覚な嘘の演技に比べると(やつらは星条旗に逆らわなければカネになると思ったFOXテレビのようだ)、テレビより映画という媒体を選択しがちな彼女たちのコクのある、プロダクションに頼らない存在は、文芸的であり、海外でも評価されてもおかしくない安定感があります。

おそらく上記のなかで最もアイドル的で演技としては最も評価の低い長澤まさみの初期の映画「深呼吸の必要」という映画が好きです。群像劇なので、作品の中の彼女の比重は小さく、映画ならではのロングショットで捉えた映像は、ジャージを着た気の弱い地味な少女として長澤を説明します。この扱いは名作「セーラー服と機関銃」で当時アイドルだった薬師丸ひろ子を制作意図に反し、いっさい薬師丸のアップのない作品をつくり、ヒットさせた相米慎二の演出を彷佛とさせ(そういえば、長澤は「セーラー服と機関銃」のテレビリメイクの主演でした)、主張する彼女のルックスを抑制的に捉えてみせました。

また、TBSのドラマ「僕の妹」でも彼女が兄であるオダギリジョーに迷惑をかける度「ごめんなさい」と謝るのですが、その実感も反省もない態度を示す演技にも感心しました。

個人的には「おせん」で旗を振っていた蒼井優、青山真二の「ユリイカ」で自閉的な少女をさからわず演じた宮崎あおいに惹かれますが、「ラストフレンズ」で上野に喰われたこともあり、女優としての評価の低い長澤まさみに対して、昔から異常に業界に人気のある(タイプとして近い)小泉今日子なんかよりずっと素材に徹することをわきまえた彼女の知性も、有り難いものです。