毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「目取真 俊『眼の奥の森』を読み終えて」No.2674

2018-09-06 20:50:32 | 文学

   

この夏休みは、中村文則やカズオ・イシグロをせっせと読んでいるうちに

もう中国に戻らなくてはならなくなり、

既に買ってあった目取真俊(めどるま・しゅん)『眼の奥の森』

スーツケースに入れて中国まで運んできました。

目取真俊さんと辺見庸さんの対談集で辺見さんが、

「ホンドも自分ももう、腐れ果ててだめかも知れない。

しかし、目取真さんの作品の言葉には、一縷の希望がある」

といった内容のことを言っていたので、

急ぎ取り寄せたのが『眼の奥の森』でした(フェイスブック友達の推薦書でもあり)。


こちらは大阪と違い、昼間32℃まで気温が上がっても、

朝晩は20℃に下がる快適な気候で読書にはもってこいなのですが、

目取真俊さんのこの小説は胸が張り裂けそうになる辛さを伴い、

すいすいと気楽に読み進むわけにはいきませんでした。

それでも、やはり読まずにはいられない圧倒的な力に導かれて

2日間で読み終わりました。

帯の紹介文は以下のようなものです。

「米軍に占領された沖縄の小さな島で事件は起こった。

 少年は独り、復讐に立ち上がる ―――

 悲しみ、憎悪、羞恥、罪悪感……

 戦争で刻まれた記憶が60年の時を超えて交錯する。」

この帯文を読んで(よし、この小説を読もう!)と思う人は

そんなに多くないかも知れません。

しかし、ふとこの本を手に取って1ページ目を開き、

いったん文を読み始めたら、もう最後まで読むしかない、

この『眼の奥の森』はそんな小説でした。

 

アメリカと日本の権力に暴力的に服従を強いられ、 

煮え湯を飲まされつつ生きてきた沖縄の庶民の心の奥を、 

こんなにも深く伝えてくれる小説と初めて出会えた気がします。


私は読後、自分が今まで目取真俊さんの作品を読んでこなかったことを

本当に悔しく思いました。

又吉直樹さんのような「吉本芸人」といったプラスワンがないと

いくら芥川賞作家でも、ホンドでは話題に取り上げられないのかと

一瞬、勘ぐったりもしましたが、

目取真俊さんが芥川賞以外にも、

川端康成文学賞、九州芸術祭文化賞、木山捷平文学賞、

琉球新報短編小説賞など数々の賞を受賞し、

その小説が映画にまでなっているのを知るに及んで、

(なんだ、自分が知らなかっただけだったんだ……)とガックリしました

 

↓下はちょうど私も参加していた8月9日朝(翁長さん急逝の翌朝)、

キャンプシュワブゲート前で、

カヌーチームの一員として話す目取真俊さんです。

彼は現在、最も執筆に油の乗るはずの五十代であるにもかかわらず、

連日カヌーでの基地建設工事の抗議行動に追われて、

エネルギーを使い果たし、

家に帰るとくたくたで作品を書くことができないと

何かで言ってらっしゃいました。

抗議行動参加者は、みんな自分の本来の仕事を犠牲にして、しかも、手弁当で、

現場に駆けつけている方々ばかりです。

 

目取真 俊さんのブログ

「海鳴りの島から」https://blog.goo.ne.jp/awamori777

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2 コメント

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私も🙋 ()
2018-09-08 08:20:06
読みたいのですけど、出版社を教えて下さいませ🙇
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雀(から)さん (ブルーはーと)
2018-09-08 16:04:11
目取真俊さんの『眼の奥の森』は影書房から出版されています。私もこの一冊だけでは到底やめられませんので、今度冬に日本に帰ったら『魚群記 (目取真俊短篇小説選集1) 』『赤い椰子の葉 (目取真俊短篇小説選集2)』(いずれも影書房)を読もうと思っています。
影書房という出版社を検索すると、他にも興味深い本をたくさん出版していました。
影書房トップページ http://www.kageshobo.com/main/001.html
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