毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「宮澤賢治の自己犠牲と百田尚樹の自己犠牲強要との違い」No.1974

2017-06-16 22:34:35 | 文学

どうしてあの平和主義者の権化のような宮沢賢治が、

兵役につきたがってお父さんに懇願し、無理やり志願したのか、

不思議に思ったことはありませんか。

  

賢治の家は金貸し業を営み、たいへんお金持ちだったのですが、

賢治は貧乏な庶民の上前をはねるその仕事が恥ずかしくてたまらず、

彼が店の番をすると困っている人にタダでお金を貸して(つまり、あげて)、

親に叱られたりしたそうです。

子どもの頃より彼の心には原罪意識があり、

それが不運な人、不幸な人への捨て身の自己犠牲心に繫がったと言われます。

賢治が言った言葉、

「世界中全ての人々が幸せにならない限り、自分の幸せもない」

は100%心からのものでしょう。


賢治の兵役志願は、その捨て身の自己犠牲心に基づくものだと思えば、

ああそうなのかとナットクできます。

後に賢治は法華経を信仰して、

超国粋主義・国家主義教団の国柱会に入信し、

それは37年の生涯を終えるまで変わらなかったと言います。

全ての人が幸せになることを捨て身で願っていた賢治が、

大東亜戦争推進の国柱会にのめり込んだ結果、

満州事変を「皇化恩沢の拡大」として讃えることになりました。

「ああ、マジエル様、どうか憎むことのできない敵を殺さないでいいように

早くこの世がなりますように、そのためならば、私の身体などは、

何べん引き裂かれてもかまいません。」(『からすの北斗七星』)

と祈りつつ。

もし、賢治が甲種合格となって戦争末期まで生き延びていたら、

特攻隊にでも何でも真っ先に志願したに相違ありません。

   [宮沢 賢治]の烏の北斗七星

私は賢治の純粋で、同時に危うい自己犠牲精神を思うとき、

同時に百田尚樹も頭に思い浮かぶのです

『永遠の0』は特攻隊員が死んで愛する者を守る話だったし、

『風の中のマリア』のミツバチも特攻隊でした。

女王蜂を守るためにこそ、自分の生命は存在しているのだと納得し、

最後の戦いに潔く飛んでいきます。

 

百田尚樹自身はどうか。

彼は自己犠牲の美を説き、体制を守る兵隊たれとアピールします。

自己犠牲を他人に強いるのです。

しかし、日頃の百田の言辞を見れば、

彼自身が特攻隊員になるとは決して言わないでしょう。

テロリストになるとか言っていますけどね(口だけです)

百田には、アニメ世代の一傾向としての思考の底浅さを見る思いがします

  

自己犠牲の精神はときに間違い、戦争という人殺しを肯定します。

他人も自分も同じ値打ちがあると思うことが大切ではないでしょうか。

 


コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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ありがとうございます。 (雀(から) )
2017-06-17 10:12:04
賢治さんの分もありがとうございます🙇
賢治さんも、桜桃忌が間もなくの太宰治も、金持ちで搾取する立場に後ろめたさを感じていたことは共通していますね?👼
太宰治も「選ばれて居ることの恍惚と不安」という原罪意識に常に苛まれて居たのでは?と時々思います😒
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生き延びてほしかったです (ブルーはーと)
2017-06-17 18:04:50
雀(から)さん
賢治にしても太宰治にしても、
もっと幅のあるスパンで人間たちを見つめられるくらい長生きしてほしかったなあ、と思います。
二人ともまだまだ子どもだったんじゃないでしょうか。特に賢治には、戦後の社会を見て挫折を経験してもらいたかったです。彼の非社会的、独善的な自己犠牲の精神が、きっと、他人の生と自分の生が呼応し合い、繋がり合い、たくましく広がるまでに成長し得たはずだと思うんです。
太宰さんは申し訳ないんですけど、到底読む気がせずにこの年まできてしまいました(ノ´∀`*)
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私も(^^)v (雀(から))
2017-06-17 22:54:12
子供なのかもしれません👼 宮沢賢治の 感じ方が 自分の感性と あまりにも似ているので 感動してた だけなのかもしれません😁

太宰治は 大半の人が 魅せられた 青春時代には 私も 嫌いでした その頃は冒険物語が 好きで 太宰の感性に女々しいものを感じて 嫌いでした
ただ叔母たちが 買っていた本を 読み、 文学少女だった親友の 影響もあって ( すぐ影響されやすいので) 主だったものを 読み、 太宰は 作家というよりは 詩人に近い と思いました
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実は私も… (ブルーはーと)
2017-06-18 11:07:20
雀(から)さん、
実は私も宮澤賢治の感性に(ぎょっ、同じ?!)と思ったことがあります。自己犠牲については高校生のとき『罪と罰』を読んで、(私もソーニャのように生きるんだ!)と約10年間(笑)思い続けました。
それで、思うんですが、私も子どもです。
賢治は私です。私が成長すれば私の中の賢治も成長するのでしょう。これからも、宮澤賢治の本を読めば読むほど、深い宝物を与えてくれる気がします。
ありがたい本です。
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