毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「『日本スゴイ!』自画自賛の行きつく先」No.1836

2016-12-27 22:55:15 | 日本事情

ここ、山東省のはずれ、菏澤にいても聞こえてくるくらいですから、

「ニッポン・すごい」の声は日本国内ではどれほどの大音響なんでしょうね。

今どき、なぜこの自画自賛がブームになっているのでしょう。

そして、このブームが自然発生的なものかというと、どうもそうではないようです。


あの2011年3月当時、江西省南昌にいた私はしばらくの間、

「日本はすごいよ。大丈夫、日本はきっと大丈夫だよ。」

という周囲の中国人の方々の言葉に藁にもすがるような気持ちで頷いていたものです。

そのとき、私はこの言葉を必要とするくらい心底へこたれていました。

スーパーで「富士」と書いてあるりんごを見ては泣き、

日本の方の空を見ても勝手に涙が頬を伝うくらいでした。

もう、日本はダメかもしれないと50%以上本気で思っていたのです。

日本国内の人々も、海外からの

「日本人はすごい、あんな大事故の後で取り乱さずきちんと並んでいる。」

「日本人の秩序正しさには敬服するしかない。」

「配給の弁当の後できちんと〝ありがとうございます”という日本人っていったい…」

といった称賛を聞きつつ、自分の心の絶望と不安に抗いながら、

(私たちは大丈夫、今は歯を食いしばって頑張るしかない)

と言い聞かせてきたのではないでしょうか。


今、東北大震災、福島原発事故の復興は未だ道半ばとは言え、

日本中がある程度の冷静さを取り戻し、先のことを見据えて・・・・・・、と思ったら

なんと、いまだに「日本スゴイ」コールが止まず、

しかも、その声は「海外からの称賛」という形を取りながら、

実は自国のメディアの生産物であるというじゃありませんか。

なぜ、そのような作り物の、つまり宣伝みたいなことをして、

自画自賛する必要があるのでしょうか。


とまあ、こんなことを書く気になったのも下の早川タダノリさんの本を

読みたくてたまらなくなったからです。

この本は日本が満州事変当時から1945年の敗戦を迎えるまで

どれほど日本民族の優越性を称揚する言葉が国中にあふれかえっていたか、

早川タダノリさんが当時の雑誌やチラシなどの膨大な資料を収集して

提示したものだそうです。

確かに、表紙も当時の絵で、これを見ただけでも

富士山をバックに、日の丸、セーラー服に鉄兜の丸いこどもたちが

きっと「日本スゴイ!」とか叫んでいる図では、と思われますよね。

   

早川タダノリさんは1974年生まれ。

おお、若いのにこういう日本人もいるのか、ニッポン、チャチャチャにならないで

作者の意図する、戦時下の日本と今の日本の共通性について、

考えてみたいものです。

早川さんは、どうしてこういう取り組みをしているのか聞かれて、こう答えています。

「恥を知れ、ということですね。

これまで恥ずかしいことをたくさんスルーしてきたよね、っていうことです。

戦争にしろ、原発にしろ、醜いものが世の中にあふれてきたけれど、

ニッポンよい国ってまたこういうのをやりたいんですか、恥ずかしくないんですか、

ということです」

http://gqjapan.jp/life/business/20140225/tadanori-hayakawa/page/3


下は早川タダノリさんの他の本。これも見たいです。

    

            

 

〈付録:東京新聞・こちら特法部〉


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5 コメント

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いつか来た道…にならぬように (雀(から))
2016-12-28 08:01:12
気をつけねばなりませんね!
小出先生の仰ってた事が脳裏に甦ります。
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真珠湾と南京 (mr.black)
2016-12-28 11:08:37
安倍総理の真珠湾訪問がテレビや新聞に大きく取り上げられていますが、一方で中国外務省報道官は「真珠湾に行くだけで第二次大戦の歴史を完全に清算できると思うのは独りよがりな考えにすぎない」とのコメントを出しています。私も同感で中国侵略の象徴とも言える南京で大戦の反省と不戦の誓いを述べて初めて日本の過去が清算されるのだと思います。安倍総理、勇気を出して実行してみませんか。
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本当に怖いです (ブルーはーと)
2016-12-29 00:40:33
雀(から)さん、
日本の為政者のやることなすこと、全部少数者の利益のために庶民の命を切り捨てることばかりなのに、メディアが総ヨイショして、それを庶民が鵜呑みにしている図は、背筋に冷たいものが走りますね。……戦争だけはいやです。
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真珠湾と南京 (ブルーはーと)
2016-12-29 00:54:02
mr.blackさん
真珠湾でのアベ首相の慰霊演説、「米CBSテレビは現地からの中継で『両首脳は共に、詩的で感動的なスピーチで和解を強調した』などと報じ云々」を読むだけで、下手過ぎる芝居の脚本を見せつけられる苦痛に頭痛がしてきます。
(何が「和解の力」だ、この恐怖の口先男!そんなに戦争犠牲者を悼むなら、集団的自衛権行使容認したり、武器輸出解禁したり、南スーダンに自衛隊員を平気で派遣するんじゃないよ!)……私の心の呟きです。
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くだらない‥ (asd)
2018-04-09 09:00:08
少し前の記事へのコメントになりますが‥
何故今日本凄いなのか?
一番しっくりくるのは長く続いた自虐史感の反動でしょうね。

日本国内に留まらず海外に行っても、食堂で隣り合わせた人に、その国で感動したこと等を伝えると、気をよくしてお酒を振舞ってくれたりします。
自分の所属するコミュニティが他者に認められる事に喜びを見出すのは、日本人に限った話ではなくて、人間の普遍的な感情なんですよね。

では海外と比べて日本人はその承認欲求が突出しているのか?もしそうならその根本原因は何なのか?という問いを立てて客観的なデータを基に検証するならまだしも、戦時中と表面的な事象の共通点をあげて、怖いだの恥ずかしいだのという感情論に終始しているのは論考としては取るに足らないものです。
内田樹氏なんかもそうですが、「日本人は海外の目を意識しすぎで恥ずかしい」という人は、当人もまた同じくらい海外の目に対して自意識過剰になっている自覚が無いのが痛々しいですね。
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