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Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

譲渡担保を巡るエトセトラ(13)

2021年11月21日 06時30分30秒 | Weblog
 Yは、本訴においては譲渡担保契約の締結を否認しつつ、反訴において「貸金2000万円を返せ」と請求しているわけだが、私はこれでは不十分と考えた。
 そこで、XY間で取り交わされたほぼ唯一の書面である「覚書」(そこに「譲渡担保」という文言は一切存在しない)を根拠として、本件契約は「民法上の組合契約類似の契約」であり、それゆえ「利益=売却代金から貸金の元金・利息・損害金と必要経費を控除した残額は、出資割合(本件では1/2と主張)に応じて分配される」という予備的主張を行った。
 これだと、譲渡担保と認定された場合に比べ、Yが支払うべき金額が半分に抑えられるという目論見である。
 だが、判決はこの予備的主張をも斥けて「譲渡担保」と認定したため、Yは、売却代金から貸金の元金・利息・損害金及び必要経費を控除した残額をXに清算金として支払わなければならないこととなった。
 さて、実際のところ、宅地として造成される原野・雑種地等については、抵当権ではなく譲渡担保権がかなり利用されているようだ。
 その理由は必ずしも明らかではないが、やはり、端的に債務者=造成業者の「占有」を排除・無効化することや、「私的実行」(債権者平等原則や破産等包括執行手続の回避)を狙ったものと思われる。
 というのも、本件がそうであったように、造成業者が返済をしないまま工事をボイコットして追加融資を迫ったり、土地上に重機を置くなどして執行を妨害したりすることが予想されるからである。
 もとの土地は荒地であって、これに付加価値が加わるかどうかは、ひとえに造成業者の労務いかんにかかっている。
 これを熟知している造成業者は、この土地をネタにして出来るだけ多くの資金をスポンサーから引き出そうとする。
 「もっと工事費用を貸して下さい。そうすればこの土地は5倍の値段で売れますよ。貸してくれないなら工事をやめますが、そうなるとこの土地は二束三文でしか売れないでしょう。それでもいいんですか?」と居直るわけである。
 こうした事態が予想されるため、スポンサーは、抵当権ではなく譲渡担保権の設定を受けておいて、いざとなれば、造成業者の占有を裁判手続きを経ること無く排除して他の造成業者に入れ替える、あるいは、そのままの状態で他の同業者等に売却して資金を回収する、などという手段を準備しておくわけである。
 つまり、強力な「占有」を、これまた強力な「譲渡担保」の力で覆そうとするわけである。