京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

1970年代のビジョン:生物学と農学の一つの接点としての生態研究施設。(畠山、1970)

2007年11月05日 01時51分53秒 | Weblog
「概要―1970」(上は表紙、発行:京都大学理学部附属植物生態研究施設)の冒頭で、当時の施設長である故・畠山伊佐男教授が植物園を含めた「植物生態研究施設」の当時のビジョンを、以下のように語っておられます。(以下、同パンフレット:p.2.「はじめに」より抜粋引用。)

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【はじめに】

「科研費総合B『生物科学の境界領域に関する諸問題の調査と研究』主催による“生物学と農学との境界領域の諸問題―とくに生態学と生物環境調節を中心に―”に関する懇談会が昨年催された。その際私は当研究施設のビジョンとして次のように述べた。」

「植物の生態学的現象を、何がどこに、どのように生活しているかという観点から研究した時代を経て、現在では環境についての科学と形態・生理学とを基盤として、なぜそのような生活を営むかを問題にする時期に来ている。」

「もちろんその際には“生きている状態”で問題にされるべきで、当研究施設では自然の生育環境が研究室に隣接しているので、野外研究と室内研究が相互に補完しあって、“生活”のより深い理解をすすめるのに理想的である。このような環境生物学の延長線上に、生物環境調節と農学との関係が新しい視点から問われることになるだろう。」

「(中略)上に述べた研究会記録がある程度配布された結果、理学方面のみならず、農学方面でも当研究施設についての認識を新たにされ、研究上の交流が促進されることにもなった。そこで、この種の研究施設は全国唯一のものでもあり、最近のように“自然とは何か”が問われているときに、このような刊行物も意義あるものと企画した次第である。」

1970年5月6日 (植物生態研究)施設長 畠山伊佐男

理学部附属植物園「沿革」―その2。(植物生態研究施設、1970)

2007年11月05日 01時45分27秒 | Weblog
概要―1970」(発行:京都大学理学部附属植物生態研究施設)というパンフレットの中に、京大植物園の沿革が記載されています。植物園についての記載のつづきです。(以下、同パンフレット:p.8.より抜粋引用。面積など数字は当時のもの。)

【植物園】

「現在、有効面積は約16,500平方メートル(約5000坪)あり、木本植物約500種で約3000株、その他草本植物、羊歯植物を加えると約1000種の植物が生息している。上に述べたように、生態植物園を設立するという当初の構想に従って整備・充実されてきたが、さらに中国・琉球産種子植物の他、最近ではネパール・ヒマラヤへの学術調査のもたらした種子植物も加えて貴重な生植物を育成・保存している。」

「入手困難なネパール・ヒマラヤ産種子植物、琉球産種子植物、中国産種子植物、東南アジア産羊歯植物、日本稀産植物、日本産水草については、その生物学的特性を研究するとともに、保存方法、増殖方法についても研究を進めている。植物園が当施設に移管されてからも、従来どおり理学部のみならず農学部、薬学部、工学部などの研究と教育のために利用されるとともに、他大学・民間研究所・諸外国の研究者からの資料提供の依頼はあとをたたない。」