京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

理学部附属植物園「沿革」―その1。(植物生態研究施設、1970)

2007年11月04日 00時31分32秒 | Weblog
概要―1970」(発行:京都大学理学部附属植物生態研究施設)というパンフレットの中に、京大植物園の沿革が記載されています。この植物園についての唯一の公式な記述ですので、ご紹介したいと思います。(以下、「概要―1970」の中の〔沿革〕の節(pp:3-4.)より引用抜粋。)

「理学部附属植物園は、1923(大正12)年4月に開設された。植物学教室創設当時の郡場寛教授は、植物園を単に珍しい植物を集めた栽培園ではなく生態学的特色を持ったものにしようとの構想のもとに建設をすすめた。現在地が予定地として選ばれたが、ここは白川の扇状地に位置するために土壌の母材は花崗岩の風化した白川砂であり、種々の困難が生じた。しかし、上の構想に基づいて計画は進められ、大小2つの池が掘られ、その上で小山が作られ、また、岩山、洞穴、砂丘なども計画的に配置されて、異なったいくつかの生活条件が人為的につくられ、生態植物園の基礎がきずかれた。」

「この環境条件を利用して、当初、井上清三郎技能員、三木茂助手らが中心になって、系統分類学上の類縁と、生態学的見地からみた各種の植物集団の育成とを考慮して、国内、国外から集められた植物を配置・育成した。郡場教授退官後は、小泉源一教授、北村四郎教授らによって引き継がれて、日本産植物に加えて中国・琉球産植物が数多く集められ、水槽には新家浪雄教授らによって貴重な水生植物(藻類・羊歯類うぃ含めて)が集められて、小さいながらも特色を持った生態植物園として整備充実されてきた。室戸台風をはじめとする台風によって数回にわたって相当の被害を受けたことや、面積が狭小なための困難もあったが、本植物園は植物学の教育と研究を継続的に遂行するのに重用されてきた。さらに、動物生態学、動物発生学、昆虫学、森林生物学、造園学、生薬学、木材科学などの理学部、農学部、薬学部、工学部にわたる各分野の教育と研究にも広く利用され、他大学、民間研究所などにおける研究の材料供給にも大きな役割をはたしてきた。」

「本植物園に関連してなされた研究業績は従来植物学教室から発表されたが、植物生態研究施設に移管されるまでの最近15年間に、58編に達する。それらの中でも水田の微細気象にかんする研究は世界最初のものである。」

「1925年から1943年の間に、植物園北側の一帯が少しずつ農学部の管理に移され、1934年に東南隅に官舎が建てられた。1953年、1960年に湯川秀樹教授のノーベル賞受賞記念の基礎物理学研究所が西北隅に建てられ、1963年からこの南側に数理解析研究所建物が新営された。これらのため植物園の有効面積はかなり減少した。」