京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

ウラジロハコヤナギの根株展示の解説。(京都府立植物園植物生態園)

2007年10月30日 19時31分31秒 | Weblog
倒れたウラジロハコヤナギの根株には、以下のような解説文が添えられていた。一種の「生態展示」ということなのだろう。:

「2005年秋、突如として長年に渡りこの場所を占拠していたウラジロハコヤナギの大木が、葉を繁らせたまま倒壊してしまいました。根株の腐朽による傷みが直接的原因でしたが、その前後に少雨や病原菌の侵入による害などの間接的原因によるものと思われます。

結果、鬱蒼としていた周辺部は明るくなり、今後、新たな下層植生の変化が見られることと思います。ウラジロハコヤナギもそのまま枯死したわけでなく、周辺部分に多数の根茎からの萌芽枝が多数発生して次代交代をしようとしています。

自然の大きな営みを感じさせてくれます。自然の摂理を来援された方々にも見てもらうため、根ヶ布を倒れたままの状態で展示しておきます。

京都府立植物園 樹木係」

植物生態園の説明。(京都府立植物園)

2007年10月30日 18時20分47秒 | Weblog
京都府立植物園にも、「植物生態園」がある。こちらは、1968年に造成(京都府は1868年に開庁)された。面積1.5haとある。京大植物園とどっこいどっこいの広さである。この看板の説明によると、基本的には「日本各地の山野に自生する植物や古来より栽培されてきた園芸植物などを生態的にできるだけ自然に近い状態で植栽」した見本園だという。

「フィールド」と「研究者」の関係論。(湯本、2004「フィールドワークの第一歩は植物園から」)

2007年10月29日 12時36分41秒 | Weblog
「フィールド」と「研究者」の関係について触れながら、湯本貴和さん(総合地球環境学研究所教授)が、「フィールドワークの第一歩は植物園からー京都大学植物園」(エコソフィア13(2004年):pp.22-27.)の中で、京大植物園活用へ向けて提言されています。約3年前の提案ですが、湯本さんの指摘する状況は、あまり変わっていないようです。

「よきフィールドがよき教育の場であり、よき研究者を育てるのは当然といえるが、逆によき研究者がよきフィールドを育てるのも事実である。屋久島の照葉樹林は、長期のニホンザル純野生群の調査を可能にするだけのよいフィールドであったが、最近はそれにもまして研究者が観察し続けている長期のデータ自体がフィールドに決定的な付加価値をもたらし、さらなる研究を誘引しているのである。

なにも屋久島のような特権的な原生自然だけではない。大学構内であろうとも同様である。北海道大学構内では、坂上昭一先生のグループが10年おきにハナバチ相の調査を行ってきた(残念にも1999年には果たせなかったが)。これは都市近郊の緑地の生物多様性の変遷を如実に示すとともに、それをベースとした新たな研究を促すものであろう。

京大植物園ではこれまで多くの研究がなされてきていることから、少なくとも特定分野に関してのフィールドとしての優良性については証明済みである。しかし、新たな研究を誘引するほど、研究成果が公開されているとは思えない。たとえば、前述の1970年代以降、京大植物園では毎木調査は行われてこなかったし、昆虫相やキノコ相の継続的なデータも示されてはいない。

京大植物園では、これまでやられてきた研究調査を学部の実習も含めて可能な限り公開し、植物園自体のもつ価値と既存の調査に伴う付加価値を明らかにした上で、もっとも有効な活用方法を考えていくべきであろう。」