京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

第43回 京大植物園観察会のお知らせ(2006年10月)

2006年09月22日 13時18分22秒 | Weblog
京大植物園を考える会より、10月の植物園観察会のお知らせを頂きました。

> 第43回京大植物園観察会のお知らせ
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> テーマ:『植物園を含む北部キャンパスの地形見学と花折(はなおり)断層』
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> 日時: 2006年10月20日(金)12時05分~12時50分
> 場所: 京都大学理学部附属植物園、および北部キャンパス構内
>    (今出川通より京大農学部表門を入ってすぐ右側)
> 案内人:竹村恵二さん(京都大学理学研究科教授:第四紀変動論、地熱テクトニクス)
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> 主催: 京大植物園を考える会
> 連絡先: kyotoubg@hotmail.com

「近畿地方植物誌」(村田源著、レッドデータブック近畿研究会編、2004年:大阪自然史センター)

2006年09月22日 11時38分14秒 | Weblog
「近畿地方植物誌」(2003、大阪自然史センター:257p.)は、植物学教室元講師の村田源博士により、1953年から50年がかりでつくられた京大標本庫所蔵標本をもとにした、収集標本という「物的証拠」を基にした植物誌です。表紙に描かれているのは、村田博士直筆によるユキワリイチゲのスケッチです。以下に、同書表見返しにある村田博士による説明を引用します。京大植物園のユキワリイチゲは、相楽郡から来たものだったのですね。


ユキワリイチゲ(キンポウゲ科) 別名:ルリイチゲ
Anemone keiskeana T.Ito

日本の固有種。本州の近畿地方以西、四国、九州に分布することが知られています。産地は限られていて、そうどこにでも見られる種ではありませんが、決して深山幽谷にあるものではなく、山麓や川岸の竹薮の中などに群生することがあります。横に這う地下茎は肥厚して淡紫色を帯びることが多く、晩秋にはその先にすでに葉を出しています。

近年宅地造成や堤防の改修、護岸工事などのために生育地が破壊されたり、里山や竹林が放棄されて林床が茂りすぎて日が当たらなくなって消えて行くことが多いようです。京都府や大阪府などではすでに準絶滅危惧種とされています。

葉は3小葉に分かれ、ほぼ三角形で表面は紫褐色の斑紋があり、裏は暗紫色となり、ウラベニソウ、ウラベニイチゲ(イチリンソウにも俗にこの名が使われることがあります)の名はここから出たと考えられます。花は早春に咲き、日が当たると開いて、夜には閉じる性質があります。10数枚花弁のように見えるのはガクで、花弁はありません。メシベも花の中心に沢山ありますが、実が熟することは少ないようです。世界中で日本の近畿地方以西にしかない珍しい植物です。多くの人々にその惨状を理解していただいて、世界に誇るべき銘草の一つであるこの植物を絶滅させてしまわないようにしたいものです。

学名keiskeanaは日本の初期の植物学者伊藤圭介(1803-1901)の名からとったもので、発表者は伊藤篤太郎(1865-1941)博士です。

京都府相楽郡木津町より京大植物園へ移植した株を1948年3月31日に描く。(村田源)