京大植物園TODAY

京都市左京区の京都大学北部キャンパス内にひっそり佇む現代の杜、京都大学理学研究科附属植物園の日々の風景を紹介します。

「三橋節子作品メモ―植物画と人物画―」(梅原猛著作集月報7:第16巻『湖の伝説』)

2006年09月05日 15時20分34秒 | Weblog
京大植物園は、夭折した日本画家、三橋節子さんのフィールドでもありました。哲学者の梅原猛氏が、三橋節子さんの伝記を書かれています(梅原猛著作集第16巻「湖の伝説」:1982年、集英社)が、これに付属の月報7に三橋さんの作品と植物園との関わりが書かれたメモが掲載いますので、現在の植物園の風景との比較のためにもご紹介したいと思います。以下、杉浦弘通構成「三橋節子作品メモ―植物画と人物画―」pp.7-11.より抜粋・引用。

 三橋節子の植物画は、1964年制作の「樹」にはじまる。この絵は京都郊外の田園でもよく見かけるクヌギを、朱色で版画タッチで描いたものであったが、翌65年の「樹Ⅰ」「樹Ⅱ」以降、71年の「池畔」までの作品は多く、京都大学付属植物園の植物を素材としている。

 同植物園は植物の生態研究のために、日本各地と、中国、朝鮮などから種々の草木を移植し、原状のままに生育させている植物園である。ちょうど、父・三橋時雄氏が勤めていた京大農学部の東隣、節子が小学校の頃から親しんできた場所であった。「樹Ⅰ」「樹Ⅱ」に描かれた植物園の樹は、ともに今は枯れてしまってその姿はないが、本州や北海道に広く分布するマメ科の落葉樹、イヌエンジュである。

 次いで66年の「池畔」と「池苑」は、同植物園にある池がテーマにとられている。池の畔には、朝鮮から移植されたコリヤナギがあり、夏になると、周辺に、高さ一mにもなるドクゼリ(オオゼリともいう)が白い花を咲かせ、「池畔」そのままの風景を今もみせる。(続く)