●〔89〕鳴海章・桐野夏生・野沢尚・三浦明博・赤井三尋『乱歩賞作家 黒の謎』講談社 2004 (2006.11.14読了)
○内容紹介
・鳴海章『花男』―特殊な経緯で結ばれ普通の家庭を作った男を惑わす、妻と自分の「心に潜む謎」。
・桐野夏生『グレーテスト・ロマンス』―絶望から逃れるため、獄中の男は妄想を紡ぎ続ける。やがて、妄想の女から一通の手紙が届き―。
・野沢尚『ひたひたと』―少女時代に受けた心の傷から逃れられない女。その傷を与えた少年が当時のままの姿で現れた。
・三浦明博『声』―竿も持たずに釣り場に現れた男が尾行してきた…。バンブーロッドが取り持つ男の友情。
・赤井三尋『秋の日のヴィオロンの溜息』―来日中のアインシュタイン博士のバイオリンがすり替えられた。ケースはそのままなのに、なぜ。
市民図書館で借りました。お目当ては赤井三尋。『翳りゆく夏』、『死してなお君は』とは全く傾向が違う、文明開化探偵絵巻(時代は昭和ですが)といった趣の作品でした。当時の風俗描写を楽しみながら読むことができました。最後に登場人物の後日談が出てくるのですが(瀧井孝作、稲垣守克など)、実在、虚構の人物を取り混ぜて描くところは赤井三尋の十八番ですね。
その他の作品も、それなりに面白く読めましたが、全然ミステリーという感じではありませんでした。